フラーレン(Fullerene)はグラファイト(黒鉛)・ダイヤモンドに次ぐ第三の炭素同素体の総称です。
用途・歴史
フラーレンは60個以上の炭素原子のみから構成され、これらが強く結合して球状あるいは、チューブ状に閉じたネットワーク構造を形成しています。 特に丁度60個の炭素から成るサッカーボール型分子・フラーレンC60は、その形状が建築家バックミンスター・フラーの設計したドームに似ていることからバックミンスターフラーレン(Buckminsterfullerene)とも呼ばれています。
C60の存在は1970年に大澤映二博士(豊橋技術科学大学教授)により予言され、1985年にクロトー(Harold Kroto)、 スモーリー(Richard Smalley)、カール(Robert Curl)の三氏によって発見されました。フラーレン発見者の三名には1996年のノーベル化学賞が与えられています。
ノーベル賞がらみの逸話はフラーレンの発見においても知られています。エクソン社の研究陣も同時期に彼ら三名と同じような実験を行なっていたのですが、フラーレンの存在に気づかなかったそうです。
フラーレンは歪んだπ共役系をもつため、ベンゼンなどの芳香族化合物よりも反応性に富みます。特に、電子受容能に優れ、最大6電子還元まで受けることが知られています。この性質をふまえた[2+3]双極子付加反応や有機銅試薬による五重付加などが化学修飾法として優れています。特異な性質を持つフラーレンを様々に化学修飾することによって、機能性ナノ材料へ向けた応用研究が現在でも活発に行われています。
関連文献
関連書籍
[amazonjs asin=”4815806691″ locale=”JP” title=”フラーレンとナノチューブの科学”][amazonjs asin=”4781303617″ locale=”JP” title=”ナノカーボンの応用と実用化―フラーレン・ナノチューブ・グラフェンを中心に (新材料・新素材シリーズ)”][amazonjs asin=”4781309372″ locale=”JP” title=”フラーレン誘導体・内包技術の最前線 (新材料・新素材シリーズ)”]関連リンク
- フラーレン・ナノチューブ研究会
- 東京大学理学系研究科化学専攻・中村研究室 フラーレンへの五重求核付加反応を基盤とし、様々なナノマテリアル創製を目指し研究を進めている。
- フラーレン誘導体・命名法 フラーレンの世界
- Fullerene – Wikipedia
- フラーレン – Wikipedia
- Harry Kroto Personal Website フラーレン発見者・クロトー氏のホームページ
- Physical Properties of Carbon 60 フラーレン・カーボンナノチューブのギャラリー
- サッカーボール型分子・バックミンスターフラーレン (有機化学美術館)
- サッカーボール型分子・バックミンスターフラーレン (有機化学美術館)
- 続・フラーレンの話 (有機化学美術館)
- フラーレンの新世界 (有機化学美術館)
- フラーレンの全合成 (有機化学美術館)
- フラーレンと超分子 (有機化学美術館)
- What’s Fullerene? – Vitamin C60 Bioresearch Cooperation