[スポンサーリンク]

身のまわりの分子

ノルゾアンタミン /Norzoanthamine

[スポンサーリンク]

norzoanthamine.gif

 

ノルゾアンタミン(norzoanthamine)はイソギンチャクの仲間・スナギンチャク(Zoanthas. sp)から単離されたアルカロイドの一種です。新規機序の骨粗鬆症治療薬(anti-osteoporosis)候補として注目を浴びています。

  •  歴史・用途

 1995年に名古屋大学の上村大輔らによって単離・構造決定されました。

 インターロイキン-6(IL-6)の生成阻害作用を持ち、マウスへの投与試験から骨密度および骨重量の低下を強力に抑制することが分かっています。これは既存の骨粗鬆症治療薬とは全く作用機序が異なります。さらには現在の主流である女性ホルモン投与療法のように重い副作用が全く見られないことが明らかにされています。

 しかし,ノルゾアンタミンは5kgのスナギンチャクからわずか21mg(0.0042%収率)しか得られず、骨粗鬆症治療薬の開発研究の進展のため、化学合成による供給が強く望まれています。この背景にあって、北海道大学の宮下正昭-谷野圭持グループはノルゾアンタミンの完全化学合成(総収率3.5%、工程毎の平均収率92%)に成功しました[1]

 一方、類縁体であるゾアンタミン(zoanthamine)は顕著な鎮痛作用や抗炎症作用を示すことが報告されています。

 

  • 関連文献
[1] Miyashita, M.; Sasaki, M.; Hattori, I.; Sakai, M.; Tanino, K.  Science 2004, 305, 495. DOI:10.1126/science.1098851

 

  • 関連書籍
 
ぎょうせい
折茂 肇(編集)
発売日:2006-05
発送時期:通常3~5週間以内に発送
ランキング:448637
ライフサイエンス出版
発売日:2006-10
発送時期:通常24時間以内に発送
ランキング:45986
  • 関連リンク

有機化学第二研究室 北海道大学宮下-谷野研。

ノルゾアンタミンの全合成 宮下研による紹介記事

Norzoanthamine – Wikipedia

ノルゾアンタミンの全合成 (1) (2) (有機って面白いよね!)

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 亜酸化窒素 Nitrous oxide
  2. セレノネイン selenoneine
  3. Sulfane sulfur が生み出す超硫黄分子
  4. キセノン (xenon; Xe)
  5. フェノールフタレイン ふぇのーるふたれいん phenolphth…
  6. アントシアニン / anthocyanin
  7. メントール /menthol
  8. ククルビットウリル Cucurbituril

注目情報

ピックアップ記事

  1. ResearchGateに対するACSとElsevierによる訴訟で和解が成立
  2. アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―
  3. 研究室でDIY! ~明るい棚を作ろう~
  4. ヒュッケル法(前編)~手計算で分子軌道を求めてみた~
  5. 第49回「キラルブレンステッド酸に魅せられて」秋山隆彦教授
  6. 第55回―「イオン性液体と化学反応」Tom Welton教授
  7. 知られざる法科学技術の世界
  8. 再転職の成功へ: 30代女性研究者が転職ミスマッチを克服した秘訣
  9. 品川硝子製造所跡(近代硝子工業発祥の碑)
  10. サイエンスアゴラ2015総括

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年10月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP