シスプラチン(cisplatin)は、金属を含む医薬品の代表例であり、もっとも広く用いられる抗ガン剤の一種です。
- 歴史・用途
1965年にB.Rosenbergらが電場がおよぼす大腸菌の増殖に対する影響を調べている最中、白金電極においてはその増殖が電場なしでも抑制されることを偶然見いだしました。この発見を機に、さまざまな白金化合物が合成・検討され、抗癌剤としてのシスプラチンが見いだされました。
シスプラチンはDNA二重鎖に強く結合し、DNA複製を行えなくしてガン細胞の分裂を抑制、ひいては死滅させます(上図)。この機能には二種の置換基がそれぞれシス配座に位置することが必須であると言われています。トランス幾何異性体は、全く薬理作用を示しません。
シスプラチンは配位子置換のトランス効果を最大限活用した、エレガントな合成法で製造されます。
(ちなみに、Pt(NH3)42+にクロライドイオンを添加する方法を用いれば、同じくトランス効果により、トランス配座の”トランスプラチン”が選択的に得られます。)
- 関連文献
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シスプラチン (有機化学美術館)
シスプラチン (Wikipedia日本)
Cisplatin (Wikipedia)