第173回の海外化学者インタビューは、マリナ・クイモヴァ准教授です。インペリアル・カレッジ・ロンドン化学科に所属し、生細胞における色素の光物理学、分光学、蛍光イメージングを研究しています。それではインタビューをどうぞ。
Q. あなたが化学者になった理由は?
学校ではいつも理科に熱中していましたが、化学は長いこと好きではなく、物理や数学の方がずっと好きでした。化学に興味を持ったのは、放課後の化学教室に参加したとき、課外授業の簡単な問題すら解けない自分に気づいたのが最初だったと思います。結局、モスクワ大学で化学を学ぶことを決めたのは、その時の傷ついたプライドと、そのクラスの優秀で刺激的な先生のおかげです。しかし、物理や数学への興味はそのまま、物理化学者になりました。
Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?
人を説得するのは得意なので、弁護士になれるかもしれません。またはセールスウーマンでしょうか!
Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?
「分子ローター」と呼ばれる一連の低分子蛍光体の開発と特性評価を試みています。この分子ローターは、環境の粘性に依存して蛍光(スペクトル・寿命)が著しく変化します。生細胞内でインキュベートした「分子ローター」から検出される蛍光によって、細胞内環境の特性や重要な生物学的プロセスにおける粘性の役割が、より深く理解できると期待しています。
Q.あなたがもし、歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?
リチャード・ファインマンを選ばなければなりませんね。彼は科学界のカリスマであり、物理学の偉大な普及者です。彼の説明は、最も複雑な現象でさえも、面白く日常に関連付けられます。彼がどうやってそれができるようになったのか、知りたいですね。私の実家には「ファインマン物理学」がシェイクスピアの横に置いてあります。小さい頃、父が童謡やグリム童話の代わりに読んでくれていたんじゃないでしょうか?
Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?
数週間前、学生と一緒に、殺細胞をもたらす一重項酸素の量子収率を新たな蛍光色素で測定しようとしました。一重項酸素は検出されなかったので、この色素が毒性を引き起こしている別の活性種を探す必要がありますね!
Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。
1冊だけ選ぶのは難しいですね。本当に1冊だけにするなら、ミハイル・ブルガーコフの『』にします。この本は何度も読みましたから、さらに何度でも読める自信があります。次いで『キャッチ22』、『ライ麦畑でつかまえて』と続きます。
クラシック音楽は大好きですが、ライブで聴くほうが好きなので、CDはThe DoorsかDon McLean(American Pie)にします。
Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。
オーフス大学のピーター・オギルビーにします。こういった質問に対して、優れた独自の回答をしてくれると思います。
※このインタビューは2011年9月15日に公開されました。