第167回の海外化学者インタビューは、ジョン・スペヴァセック博士です。Aspen Research社に所属し(訳注:現所属はWake Technical Community College)、主に紫外線を用いたチオール-エン重合の研究を行っています。それではインタビューをどうぞ。
Q. あなたが化学者になった理由は?
小学生の頃は、大人になったらマッドサイエンティストになって、毎日のように研究室を爆破して、悪巧みをするのを楽しみにしていました。化学者にはなりましたが、それ以外の夢はやや縮小しています(ごく小さな火事がいくつかあったぐらいで、まだ爆発はさせていません)。
Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?
プロの自転車レース選手になります。ツール・ド・フランスの選手ではなく、パリ~ルーベやフレッシュ・ワロンヌなどの、ワン・デイ・レースの選手です。自転車に乗っていると、いつでも若さを感じます。
Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?
私たちは、非石油由来の化学物質や材料を製品により多く取り入れることを考えています。石油化学製品は、世間で言われている悲観的な予測よりもはるかに長く存続するでしょうが、ますます高価になっていきます。そうなれば、代替品が経済的にも見合いやすくなります。経済性が伴わなければ大規模生産は行われません。また、微生物や藻類などの新素材を利用することで、石油資源からは製造困難かつ高価なモノマーを利用できるようになることも楽しみです。
Q.あなたがもし、歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?
ベンジャミン・フランクリンは、科学、政府、外交など多くの分野に関わっていたので、素晴らしい相手だと思います。さらに、化学者のエミール・フィッシャーが糖の立体化学を正しく理解していた一方、電子が流れる方向を間違って捉えていたことについて非難もできますね。
Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?
会社は技術者をさほど雇っていないので、私は常に研究室にいます。それを不満に思うことはありません。研究室にいることは、私に若さを感じさせるもう一つの活動です。私は、最終的なポリマーの特性を変えるために、モノマーと光重合開始剤のさまざまな組み合わせを常に試しています。最近の取り組みは、バイオ由来の材料を単なるフィラーや補強剤としてではなく、化学的な原料として使用することです。課題は、材料が純粋ではなく、複数の反応部位があることです。適切な反応条件を見つけることは、ラベル付きのボトルに入った化学物質を使うときよりはるかに困難です。
Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。
本を選ぶのは難しいです。再読したいと思うものは非常に少ないですし、未読の本に手を出すのは避けたいです。シェイクスピアの戯曲集が無難で、『テンペスト』が一番ふさわしいのではないでしょうか?
アルバムは、より簡単に選べます。ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」をジャン=イヴ・ティボーデが録音したものにします。妻に紹介されるまで知らなかったクラシック音楽です。
[amazonjs asin=”B07W6C962L” locale=”JP” title=”ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、パガニーニの主題による狂詩曲”]Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。
バージニア大学のロバート・ブライアント教授です。彼は1980~81年にかけて、ミネソタ大学1年生の化学の授業を担当していました。彼の支援があって私はうまく生き残り、楽しいキャリアを送ることができたのですから、彼がどんな答えを出してくるか興味があります。
※このインタビューは2011年8月4日に公開されました。