[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第157回―「メカノケミカル合成の方法論開発」Tomislav Friščić教授

[スポンサーリンク]

第157回の海外化学者インタビューは、トミスラフ・フリシュチッチ博士です。イギリスのケンブリッジ大学 博士研究員からカナダのマギル大学 助教授のポストを獲得したばかりで(訳注:現在は正教授職)、化学反応を行う新しい方法を研究しています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

化学実験が美しかったからです。祖母は有機化学の教授で、旧ユーゴスラビアではそのような教材が珍しかった時代に、とても重要な教科書や翻訳書を作成していました。そのため、化学に対する愛情は早くから芽生えていたのではないかと思います。しかし、小学校で初めて受けた化学の講義で、ヨウ素の美しい紫色の煙を見たことは、私にとって一生忘れられない思い出となりました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

プログラマーにきっとなるでしょう。PCで小さなユーティリティプログラムを書こうとして、時々、逆効果になることがあります。料理人になるのもいいかもしれませんね。合成化学に限りなく近いものがありますからね。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

化学変換がどのように機能し、またどのように改善できるかに非常に興味があります。現在、私たちは、地殻内の鉱物資源を構成するような硬い物質を有用な物質に変換するための、新しくクリーンな方法の開発に取り組んでいます。主な目標は、温和な条件で、できるだけ少ないエネルギーと最も安価な出発物質を使って変換することです。

Q.あなたがもし、歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

難しい選択ですが、ベンジャミン・フランクリンにすると思います。科学から政治・外交まで、多彩な才能と関心を持つ人との食事は、きっと面白いものになるでしょう。悪くとも、チェスで盛り上がれるでしょうし。しかし、新元素の発見をテーマにした、キュリー夫人との静かなディナーも魅力的ですね。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

先週のことです。医薬品成分として知られるサリチル酸ビスマスの合成のために開発した新たな分取法の再現性を確認していました。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

おそらく『不思議の国のアリス』にすると思いますが、こういう状況なら『ガリバー旅行記』の方がふさわしいかもしれません。

[amazonjs asin=”4042118038″ locale=”JP” title=”不思議の国のアリス (角川文庫)”][amazonjs asin=”B015GMOHFK” locale=”JP” title=”ガリバー旅行記 (角川文庫)”]

アルバムはJethro Tullの『Aqualung』がいいでしょうか。でも、Uriah Heepの『Look at yourself』もこっそり持っていきたいですね。

[amazonjs asin=”B00VKS9OW6″ locale=”JP” title=”Aqualung”][amazonjs asin=”B0002ADY10″ locale=”JP” title=”Look At Yourself”]

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

大阪大学(訳注:現在はニューヨーク大学アブダビ校)のPanče Naumovです。彼は固体化学の若手研究者で、固体反応のメカニズムに関する非常に面白い研究を行っています。最近発表された鶏冠石の原子ホッピングに関する論文はとても興味深いものでした。

原文:Reactions – Tomislav Friščić

※このインタビューは2011年5月26日に公開されました。

関連書籍

[amazonjs asin=”3527331689″ locale=”JP” title=”Mechanochemistry: Principles, Methods and Applications”][amazonjs asin=”B07HJD7ZJV” locale=”JP” title=”Co-crystals: Preparation, Characterization and Applications (ISSN Book 24) (English Edition)”]
Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第46回―「分子レベルの情報操作を目指す」Howard Colq…
  2. 第79回―「高分子材料と流体の理論モデリング」Anna Bala…
  3. 第11回 触媒から生命へー金井求教授
  4. 第一回 福山透教授ー天然物を自由自在につくる
  5. 第48回「分子の光応答に基づく新現象・新機能の創出」森本 正和 …
  6. 第55回―「イオン性液体と化学反応」Tom Welton教授
  7. 第32回「生きている動物内で生理活性分子を合成して治療する」田中…
  8. 第一回 人工分子マシンの合成に挑む-David Leigh教授-…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 新型コロナウイルスの化学への影響
  2. ダイハツなど、福島第一原発廃炉に向けハニカム型水素安全触媒を開発 自動車用を応用
  3. 金大発『新薬』世界デビュー
  4. 浅野・県立大教授が化学技術賞
  5. 膨潤が引き起こす架橋高分子のメカノクロミズム
  6. 電子雲三次元ガラス彫刻NEBULAが凄い!
  7. 2013年就活体験記(1)
  8. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑫: XP-PEN Deco01の巻
  9. 有機合成化学協会誌2023年11月号:英文特別号
  10. 研究者の活躍の場は「研究職」だけなのだろうか?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年7月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー