[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第155回―「化学結合と反応性を理論化学で理解する」Sason Shaik教授

[スポンサーリンク]

第155回の海外化学者インタビューは、セゾン・シャイク名誉教授です。ヘブライ大学エルサレム校化学科に所属し、結合、構造、化学反応性の一般理論を研究しています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

ある物質が消えて、新しい物質が突然現れる―それは常に「化学の魔法」でした。10代前半の頃、これらは自ら調合できる視覚的変化でした。当時は薬局に行けば、硫黄、過マンガン酸カリウム、塩酸などの化学物質をいくつか購入することができましたし、学校には実験室があり、そこには赤リン、カリウムやナトリウム、亜鉛、硫酸、硝酸、塩酸、硫黄、水銀、炭素剤、水銀の赤酸化物などがありました。高校生になると、サッカーボールを追いかけてきたお隣さんを怖がらせる「やさしい」爆薬、先生をいらつかせるH2S、水素に火をつけるなどのレシピが載っている本を手に入れたんです。ある日、私はKMnO4とHClを混ぜているときに、塩素という気体を「発見」しました。活発な発泡が見られました。思わず鼻を突っ込んで深呼吸をしてしまい、窒息しそうになりました。この「発見」は、化学史を学ぶ学生たちに、シェーレの死の逸話を紹介するタイミングで伝えています。15歳になった私は、好きだった人文・文学と化学の間で悩んでいました。結局、自然科学を選んだのは、化学がとても楽しく好きだったからだと思います。ウェットな写真に夢中になったことで、「化学の魔法」がより素晴らしいものになりました。そして大学では、軌道という創造物を発見し、機械論的化学、構造決定、分光学、そして量子化学に魅了されました。「化学の魔法」を理解できるツールを手に入れたのですから、とても興奮しました。私は徐々に理論家に転向していきました。化学は今や知的にも魅力的なものとなっています。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

作家か詩人でしょう。1に書くこと2に書くこと、とにかく書くことが好きなので・・・。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

酵素や合成金属による結合活性化、脳内化学、新結合の駆動力などの原理について研究しています。二状態反応性や交換促進反応性などの新しい概念を一般化し、化学結合のメンタルマップを変えることができればと思っています。また、文系の方や広く一般の方に化学の講義をしていますが、そのメモが本になればいいなと思っています。今のところ、『レゴゲームとしての化学』というタイトルしかありませんが・・・。

[amazonjs asin=”B01FIWEK4Q” locale=”JP” title=”Chemistry as a Game of Molecular Construction: The Bond-Click Way by Sason Shaik(2016-03-07)”]

Q.あなたがもし、歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

ギルバート・ニュートン・ルイスを選びます。彼の1916年のJACS論文(JCCの化学結合90周年記念号に用意されたエッセイ)を読んで以来、化学に大きな影響を与えたこの人物に大きな感銘を受けています。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

1974年の修士課程でのことです。TeCl4とオレフィンや芳香族との反応でしたが、この時「化学の魔法」が私を翻弄したのです。この冒険がなぜ私を理論家たらしめたのかについては、J. Phys. Chem. A. 112, 12724-12736 (2008)で語っています。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

妻を連れて行ってもいいですか?本をたくさん持っていけないなら、そこへは行きません。そのうちの1冊は、好きな詩人であるDavid Fogelの詩集になることは間違いありません。アルバムも同様です。

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

ロアルド・ホフマンにします。

 

原文:Reactions – Sason Shaik

※このインタビューは2011年5月13日に公開されました。

関連書籍

[amazonjs asin=”1839161698″ locale=”JP” title=”Effects of Electric Fields on Structure and Reactivity: New Horizons in Chemistry (ISSN)”][amazonjs asin=”B07M9CD861″ locale=”JP” title=”The Chemical Bond: Chemical Bonding Across the Periodic Table (English Edition)”]
Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第125回―「非線形光伝播の基礎特性と応用」Kalai Sara…
  2. 第111回―「予防・診断に有効なナノバイオセンサーと太陽電池の開…
  3. 第87回―「NMRで有機化合物の振る舞いを研究する」Daniel…
  4. 第四回 期待したいものを創りだすー村橋哲郎教授
  5. 第57回「製薬会社でVTuber担当?化学者の意外な転身」前川 …
  6. 第64回―「ホウ素を含むポルフィリン・コロール錯体の研究」Pen…
  7. 第167回―「バイオ原料の活用を目指した重合法の開発」John …
  8. 第14回 有機合成「力」でケミカルバイオロジーへ斬り込む - J…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 磁性液体:常温で液体になる磁性体を初発見 東大大学院
  2. 人生、宇宙、命名の答え
  3. アメリカで Ph.D. を取る –奨学金を申請するの巻–
  4. 【6月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催】 題目:有機金属化合物 オルガチックスを用いた架橋剤としての利用(溶剤系)
  5. 第44回ケムステVシンポ「未来を切り拓く半導体材料科学の最前線」を開催します!
  6. 米ファイザー、今期業績予想を上方修正・1株利益1.68ドルに
  7. 高純度フッ化水素酸のあれこれまとめ その2
  8. 元素戦略 Element Strategy
  9. 有機配位子による[3]カテナンの運動性の多状態制御
  10. 化学で何がわかるかーあなたの化学、西暦何年レベル?ー

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年6月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP