[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第147回―「カリックスアレーンを用いる集合体の創製」Tony Coleman教授

[スポンサーリンク]

第147回の海外化学者インタビューは、アンソニー・W・コールマン(通称トニー)教授です。フランスのリヨン第1大学 化学・生化学科のマルチマテリアル・インターフェース研究室に所属し、カリックス[n]アレーンを用いて、ナノカプセル、リポソーム、ナノ粒子、さらには巨視的なフィルムに至るまで、非共有結合集合体を構築する研究を行っています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

早熟といえば早熟ですが、9歳の頃は核物理学者になりたかったです。しかし、イングランド北部のハダースフィールド・ニュー・カレッジに進学したところ、スティーブン・ミッチェルという素晴らしい化学教師と、ナッフィールドの化学コースという2つの幸運に恵まれました。特にナッフィールドでは実験に重点を置いていたので、物理学における数学の重要性を理解した上で、化学に転向することができました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

ワインの輸入業者です! 実はポスドク時代に、ワインの小売と卸売の両方でアルバイトをしていたのですが、どちらも楽しくて、なかなか良かったです。しばらく前にタバコを止めたことで味覚が回復し、ワインがより美味しく感じられるようになりました。とはいえ、真に素晴らしい世界のワインをフランスに持ち込めるというのがもっとも大きな理由ですね。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

現在のメインプロジェクトは、様々なガスや揮発性化合物の捕集と貯蔵を目的とした、カリックス[n]アレーン薄膜の活用に関するものです。カリックス[n]アレーンに応じてさまざまなタイプの特異な挙動が見られ、これにより多くの化合物を区別することができるようになっています。これがどんな応用に繋がるのかというと、爆発物の検知や可燃性・有毒性化合物の漏洩などが考えられますが、プロジェクトを進めていくうちに、天然ガス中の不純物が経済に与える影響についても分かってきました。ガラスなどの製造工程では膨大なエネルギーを使用しますが、そのコストを削減できるのではないかと考えます。

Q.あなたがもし 歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

維新の王、チャールズ2世です。。ウィットに富み、知識が豊富で酒好きだった彼は、王立協会を設立し、英国海軍の改革も成し遂げました。彼と食事をするのはとても楽しそうですが、一番の目的は、彼とジャグジーについて話し合い、その仕組みや可能性を説明することです。宮廷を清潔にする効果もありますが、それ以上に彼がどれだけ楽しんでいるだろうか、考えてみてください。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

2週間ほど前です。私はガス検知作業を一般に行う便利屋です。現在、ガラス器具や配管はすべて試作段階で、設計はすべて私が担当しています。そのため、流体や電子機器のどちらかに問題が発生すると、私の手が汚れます。今回は、現場でどのようにガスを検知するかの情報を得るために、温度可変システムを設置しました。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本は、日本画家・歌川広重の『江戸百景』にします。なぜかというと、私は本を読むのが速いので、文字だけの本はすぐ読み終えてしまうからです。ですから、絵画やドローイングの本がいいですし、広重の日本画作品はとても好きなのです。1日に1枚の絵を鑑賞し、見返すことで新しい発見があります。

[amazonjs asin=”4062205076″ locale=”JP” title=”広重TOKYO 名所江戸百景”]

アルバムについては、ブリジット・セント・ジョンの新しいベスト盤『A Pocketful of Stardust』にします。ブリジットは60年代後半から70年代にかけて活躍したカルト的なフォークシンガーで、4枚しかアルバムを残していませんが、その歌声はいつも私の心に残っています。2010年はBBCのセッションを収録した年であり、これは『Fly High』や『Bumper to Bumper』などの素晴らしい曲が収録されたアルバムなのです。

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

ヘルムート・リングスドルフです。ヘルムートは、分子集合体の分野で多くの人々にインスピレーションを与えています。彼はまた、素晴らしいユーモアのセンスを持った興味深い語り手でもあります。幸運なことに彼とGRCでテーブルを共にしたことがあるのですが、人生を愛し、何よりもワインに関する幅広い知識を持つこの偉大な男と、再び同席したいと思っています。乾杯!

 

原文:Reactions – Tony Coleman

※このインタビューは2010年10月22日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第15回 有機合成化学者からNature誌編集者へ − Andr…
  2. 第59回「希土類科学の楽しさを広めたい」長谷川靖哉 教授
  3. 第14回 有機合成「力」でケミカルバイオロジーへ斬り込む - J…
  4. 第70回―「ペプチドの自己組織化現象を追究する」Aline Mi…
  5. 第一回 福山透教授ー天然物を自由自在につくる
  6. 第13回 化学を楽しみ、創薬に挑み続ける ―Derek Lowe…
  7. 第12回 DNAから人工ナノ構造体を作るーNed Seeman教…
  8. 第126回―「分子アセンブリによって複雑化合物へとアプローチする…

注目情報

ピックアップ記事

  1. トーマス・レクタ Thomas Lectka
  2. チャン転位(Chan Rearrangement)
  3. アルキルラジカルをトリフルオロメチル化する銅錯体
  4. ヨアヒム・ザウアー Joachim Sauer
  5. Cleavage of Carbon-Carbon Single Bonds by Transition Metals
  6. ChemDraw for iPadを先取りレビュー!
  7. ニュースタッフ参加
  8. 科学カレンダー:学会情報に関するお役立ちサイト
  9. 映画「分子の音色」A scientist and a musician
  10. 固有のキラリティーを生むカリックス[4]アレーン合成法の開発

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年5月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

人工光合成の方法で有機合成反応を実現

第653回のスポットライトリサーチは、名古屋大学 学際統合物質科学研究機構 野依特別研究室 (斎藤研…

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー