[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第141回―「天然と人工の高分子を融合させる」Sébastien Perrier教授

[スポンサーリンク]

第141回の海外化学者インタビューはセバスチャン・ペリエ教授です。シドニー大学化学科(訳注:現在はワーウィック大学化学科)に所属し、制御型/リビングフリーラジカル重合を用いて、高度に制御された事前決定可能な構造を持つ高分子の合成と特性評価を行い、新規材料の設計や既存材料の改良に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

幼い頃から科学と数学のあらゆる側面に魅了されてきました。化学を選んだ理由は、生命の構成要素や身の周りの世界を理解できる基礎科学だからです。専門とする研究は高分子材料・高分子化学で、物理学と生物学の知識も必要とします。この分野の学際的性質と、追究する機会をくれた共同研究をとても楽しんでいます。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

十中八九、歴史家になると思います!暇な時は、世界の様々な歴史的時代を学び、我々がどこから来てどこに居るのかの理解を楽しんでいます。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

イギリスのリーズ大学からシドニー大学に移って以来、ポリマー合成からソフトマターへと、より広い分野への研究を発展させてきました。私のチームは現在、合成高分子とペプチドやセルロースなどの天然分子を組み合わせてナノ構造材料を設計するための新しい方法論を開発しています。行っていることは2つあります。天然分子の特性を利用した機能性材料の開発(例えば、ペプチド配列の自己集合体に基づく構造化高分子ナノ材料の開発をしました)と、天然の再生可能材料を合成ポリマーと共役させ、特性向上を目指すことです(例えば最近、セルロースと比べて改善特性を示すセルロースポリマー誘導体を開発しました)。

Q.あなたがもし 歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

原初の科学者たちが、化学、物理学、生物学、地質学、哲学などを組み合わせて、数学や科学のあらゆる側面を研究していたことに、いつも感銘を受けています。

特に際立った科学の著名人は、エンジニアであり芸術家でもあったレオナルド・ダ・ヴィンチです。現代社会について彼が観察したことを何時間でも聞いてみたいです。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

最後の実験はポリアミドの合成でした。自分の講義では、化学実験を沢山行うようにしていますが、学生の皆さんに実際何が起こっているのかを知ってもらうためにやっています。研究面では、最後に研究室で働いたのはサイズ排除クロマトグラフィーの修理でした!

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

ズルをしてiPodを持って行ってもいいですか?もしアルバム一枚だけを持っていけるなら、U2の『The Joshua Tree』にします。個人的意見ですが、過去最高のアルバムです。

[amazonjs asin=”B06XH1ZJHT” locale=”JP” title=”THE JOSHUA TREE”]

読書はとても楽しいので、一冊だけ持っていくというのは難しい選択だと思います。最近読んだのは、ビル・ブライソンの『A Short History of Nearly Everything』です。この本は、科学と歴史という私にとって2つの情熱を融合させており、シンプルかつユーモラス、大変に得るものが多いです(学部の授業で実際に使っています!)。良質な文学から何かしら選ぶなら、オスカー・ワイルドの全集にするでしょう。

[amazonjs asin=”076790818X” locale=”JP” title=”A Short History of Nearly Everything”]

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

これは難しい質問ですね!いくつか思いつくのですが、一般論を言うなら、定年退職間近の研究者や、新任の研究者など、キャリアの様々なステージにいる方々の話を混ぜて聞くのがいいと思います。

 

原文:Reactions – Sébastien Perrier

※このインタビューは2010年2月19日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第25回「ペプチドを化学ツールとして細胞を操りたい」 二木史朗 …
  2. 第29回 適応システムの創製を目指したペプチドナノ化学 ― R…
  3. 第36回 生体を模倣する化学― Simon Webb教授
  4. 第123回―「遺伝暗号を拡張して新しいタンパク質を作る」Nick…
  5. 第18回「化学の職人」を目指すー京都大学 笹森貴裕准教授
  6. 第64回―「ホウ素を含むポルフィリン・コロール錯体の研究」Pen…
  7. 第四回 期待したいものを創りだすー村橋哲郎教授
  8. 第165回―「光電変換へ応用可能な金属錯体の開発」Ed Cons…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 富士フイルム和光純薬がケムステVプレミアレクチャーに協賛しました
  2. Spin-component-scaled second-order Møller–Plesset perturbation theory (SCS-MP2)
  3. 【5月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催】 有機金属化合物 オルガチックスによる「密着性向上効果の発現(プライマー)」
  4. 有機反応を俯瞰する ーヘテロ環合成: C—C 結合で切る
  5. カルボン酸を触媒のみでアルコールに還元
  6. シンプルなα,β-不飽和カルベン種を生成するレニウム触媒系
  7. アミドをエステルに変化させる触媒
  8. 最近の有機化学注目論文1
  9. 未来社会創造事業
  10. 化学分野での特許無効審判における 実験データの戦略的な活用方法【終了】

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年4月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

注目情報

最新記事

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

ミトコンドリア内タンパク質を分解する標的タンパク質分解技術「mitoTPD」の開発

第 631 回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 生命科学研究科 修士課程2…

永木愛一郎 Aiichiro Nagaki

永木愛一郎(1973年1月23日-)は、日本の化学者である。現在北海道大学大学院理学研究院化学部…

11/16(土)Zoom開催 【10:30~博士課程×女性のキャリア】 【14:00~富士フイルム・レゾナック 女子学生のためのセミナー】

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。11/16…

KISTEC教育講座『中間水コンセプトによるバイオ・医療材料開発』 ~水・生体環境下で優れた機能を発揮させるための材料・表面・デバイス設計~

 開講期間 令和6年12月10日(火)、11日(水)詳細・お申し込みはこちら2 コースの…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP