第143回の化学者インタビューは、ノンジャン・タオ教授です。アリゾナ州立大学バイオデザイン研究所バイオエレクトロニクス・バイオセンサーセンターに所属しており、電気工学科、物理学科、化学科にも所属していました(訳注:現在は鬼籍に入られています)。研究テーマは、分子エレクトロニクス、化学・バイオセンサーです。それではインタビューをどうぞ。
Q. あなたが化学者になった理由は?
生物物理学のトレーニングを受けていますので、Nature Chemistryのブログにおける典型的な化学者とは言えないかもしれません。化学に惹かれたのは、化学が物理学、生物学、工学の間の接着剤として、分子エレクトロニクスやセンサーなどの学際的研究に決定的に重要な役割を果たしているからです。
Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?
地質学者か宇宙飛行士になりたいと思っています。異なる伝統的な分野間の研究領域を探求することが、同じぐらい刺激的で(やりがいのある)仕事だと感じているので、自分のキャリアについては決断を後悔していません。
Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?
電極間に分子を一つ配置し、その化学的・物理的特性を標識して制御し、デバイスへの応用を模索しています。また、携帯電話に収まるような化学センサーを開発しており、インターネットやメールだけでなく、化学的情報を得ることも可能にしています。このような機能があれば、セキュリティ、環境保護、病気の予防や診断など、現実世界の多くの問題を解決できる可能性が広がると考えています。
Q.あなたがもし 歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?
リチャード・ファインマンが、候補者リストのトップになるでしょう。『ファインマン物理学』は、アメリカで博士号を取得するために重要な物理学の試験に合格すべく、勉強するのに役立ちました。『ご冗談でしょう、ファインマンさん』は、海外行き飛行機内での12時間を非常に楽しく、忘れられないものにしてくれました。彼の「遊びの豊かな講義」は、私の研究にも常にインスピレーションを与えてくれています。
[amazonjs asin=”4000077112″ locale=”JP” title=”ファインマン物理学〈1〉力学”][amazonjs asin=”4006030053″ locale=”JP” title=”ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)”]Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?
先週のことです。壊れたメガネを直すため、3種類の接着剤を試していました。時が経つにつれ、研究室での作業に費やす時間が減り、研究計画書のレビューや執筆に費やす時間が増えてきました。幸いなことに周りには、自分よりも研究室で良い仕事ができる、若くて才能のある人たちがたくさんいます。
Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。
無人島でのサバイバル法や脱出法を教えてくれる本を持っていこうと思います。娯楽本やCDもいいですが、水や食料のためのスペースを確保しないといけませんね。
Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。
博士号の指導教員である、スチュアート・リンゼイです。彼は私に科学への取り組み方を教えてくれました。若い読者なら、彼とのやりとりから得るものが多いと思います。
原文:Reactions – Nongjian (NJ) Tao
※このインタビューは2010年4月16日に公開されました。