[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第130回―「無機薄膜成長法を指向した有機金属化学」Lisa McElwee-White教授

[スポンサーリンク]

第130回の海外化学者インタビューはリサ・マックエルウィー=ホワイト教授です。フロリダ大学化学科に所属し、材料科学、触媒、合成方法論の問題に有機金属化学を応用する研究を行っています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

母は自分が科学者になれなかったことを悔やんでか、科学のおもちゃをくれたり、博物館の授業に連れて行ってくれたりしました。実家の地下室にある化学セットで遊ぶのが大好きでした(先生はいませんでした!)。1年生の初めに大学で研究をする機会を得たとたん、夢中になりました。他の分野を専攻しようとは考えませんでした。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

オーケストラで演奏したいですが、音楽家としての自分の技術レベルはそこまで高くないですね。化学の教授職を続けるしかないでしょう。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

グリーンケミストリー式のカルボニル化法、アルコールを直接酸化して燃料電池にするための電解触媒、無機薄膜を化学的に気相成長させるための有機金属前駆体の設計と合成などを行っています。これらはいずれも興味深く重要な課題ですが、現在行っている仕事の中で最も特徴的なものは、メカニズムに基づくCVD前駆体の設計だと思います。我々のアプローチが材料業界に広まり、成膜化学を化学者のように考えてくれる人が増えることを期待しています。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

ロザリンド・フランクリンです。彼女の立場から話を聞きたいので。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

1987年頃だったと思います。学生が使う出発原料としてW(CO)5(THF)のバッチを用意しました。教員として過ごす時間はあまりにも断片的だったため、敏感な有機金属化合物を合成し、材料が分解する前にワークアップを完了できないことを、すぐさま学びました。現代の学生たちは、私が実験している様を想像することさえできません。彼らは、私が物に触れると、ゾッとしてしまいます。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本はテリー・プラチェットの著作、おそらく『Good Omens』を持っていくでしょう。

[amazonjs asin=”B0063HBPH6″ locale=”JP” title=”Good Omens (English Edition)”]

音楽のアルバムはさらに難しい選択になるでしょう。半分はバロック調の音楽が欲しいと思っていて、ヴィヴァルディのInterpreti Venizianiによる演奏録音が一つかもしれません。スプリングスティーンのアルバムを手放せなかったので、もう半分は結局『Born to Run』を手にするかもしれません。

[amazonjs asin=”B00VJ288MU” locale=”JP” title=”BORN TO RUN”]

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

ポール・ウェンダーです。彼が100語以内で質問に答えられるかどうか、知りたくてたまりません。

 

原文:Reactions – Lisa McElwee-White

※このインタビューは2009年8月28日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第61回「セラミックス粉体の合成から評価解析に至るまでのハイスル…
  2. 第62回―「再生医療・ドラッグデリバリーを発展させる高分子化学」…
  3. インタビューリンクー住化廣瀬社長、旭化成藤原社長
  4. 第四回 分子エレクトロニクスへの展開 – AP de…
  5. 第56回「複合ナノ材料の新機能を時間分解分光で拓く」小林洋一 准…
  6. 第169回―「両性分子を用いる有機合成法の開発」Andrei Y…
  7. 第36回「光で羽ばたく分子を活かした新技術の創出」齊藤尚平 准教…
  8. 第35回 生物への応用を志向した新しいナノマテリアル合成― Ma…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 投票!2017年ノーベル化学賞は誰の手に!?
  2. キムワイプをつくった会社 ~キンバリー・クラーク社について~
  3. フリードリヒ・ヴェーラー Friedrich Wohler
  4. 光と水で還元的環化反応をリノベーション
  5. パール・クノール ピロール合成 Paal-Knorr Pyrrole Synthesis
  6. 米化学大手デュポン、EPAと和解か=新生児への汚染めぐり
  7. NMR化学シフト予測機能も!化学徒の便利モバイルアプリ
  8. 高選択的な不斉触媒系を機械学習で予測する
  9. モーテン・メルダル Morten P. Meldal
  10. エドマン分解 Edman Degradation

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年11月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP