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海外化学者インタビュー

第123回―「遺伝暗号を拡張して新しいタンパク質を作る」Nick Fisk教授

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第123回の海外化学者インタビューは、ジョン・D・(ニック)フィスク教授です。コロラド州立大学 化学・生物工学科(訳注:現在はコロラド大学デンバー校)に所属し、生物学的システムの理解と操作のための新規化学ツールの開発に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

裏庭には森と小川がある古い農家で育ったので、とてもラッキーでした。5歳の子供にとって、生き物がいっぱいの小川に勝るおもちゃはないと思います。ほぼ毎日、水の中で動物を集めたり、ダムや閘門を作ったりしていました。その環境と、それがどのように機能し、どのように変化し、どのように変化させることができるのかを観察せずにはいられなかった経験が、科学の道へと導いてくれたのだと思います。今でも物理学全般に興味があり、化学、生物学、工学の境界分野で研究をしています。究極的には、世界が化学レベルでどのように機能するかに興味があります。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

もし化学者(あるいは他分野の科学者)になっていなかったら、建築家か造園家になっていたでしょう。いつもデザインに興味がありました。自分の仕事は分子やナノ構造のデザインですが、建物や庭を組み立てるのも楽しいですね。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

私の研究室では、化学と生物学を組み合わせて、医療に役立つ材料やバイオテクノロジーを構築することに興味を持っています。そのために、遺伝子コードに新しいアミノ酸を加える研究を行っています。これらの非天然アミノ酸をタンパク質工学と併せて利用することで、ウイルス粒子を先端材料の構成要素として利用できるようにする予定です。私たちの研究が、新しい化学物質を生物学に組み込むための基礎的なレベルでの貢献と、研究や医療に役立つツールを生み出すための実用的なレベルでの貢献につながることを期待しています。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

アイザック・ニュートンです。科学の歴史に興味がありますが、彼はその重要人物です。彼は少し反社会的だったようなので、夕食の相手には向いていないと思います。しかし、彼のような頭脳がどのように働いていたのか、ぜひ見てみたいと思います。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

最後に実験をしていたのは、1年ほど前に非天然アミノ酸を合成していた時です。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

少しズルをして、Scientific American Libraryシリーズをもっていくことにします。シリーズ全体では70冊に満たないので、図書館まるごとにはなりません。他の科学分野について学ぶことを心から楽しんでいるので、「島の研究室」を運営する前に読書の時間がたくさんあるだろうと想像しています。

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

ジェイソン・チンです。 彼がやっている仕事は非常に刺激的で、鋳型ポリマー合成分野では真のパラダイムシフトをもたらすかもしれません。

原文:Reactions – Nick Fisk

※このインタビューは2009年7月10日に公開されました。

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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