[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第97回―「イメージング・センシングに応用可能な炭素材料の開発」Julie MacPherson教授

[スポンサーリンク]

第97回の海外化学者インタビューは、ジュリー・マクファーソン教授です。ワーウィック大学化学科に所属し、新しいイメージング技術とセンシングアプリケーションのための炭素系材料の開発と応用に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

幼い頃から、自分の身の回りにあるものがどのように機能しているのか、なぜ空は青いのか、そんなことにとても興味を持っていました。ですから、学校で科学の勉強をするようになったことは、私にとっても両親にとっても何の驚きもありませんでした。その前には、粗末な電子オルガンを 作ろうとしていた時、寝室のカーペットの表面を熱いハンダで焦がしてしまったので、交換してもらってもいましたね。

科学を中心とした何かをすることになるだろうと思っていましたが、博士号を取得するまでは、実際に自分が学者になるのに十分な能力を持っているとは思っていませんでした。大学では物理と化学のどちらを専攻するかを決めるのに苦労しましたが(どちらも好きだったので)、結局は境界横断研究ができる化学を選びました。にもかかわらず、最近では物理と生物学の両方にかなり手を出していて、本当に自分には合っていると思います。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

自らの性格のもっと芸術的な側面に関わるようなことをしたいと思っています。自分はとても視覚優位な人間であり、創造的な芸術はとてもパワフルで、感情的で、魅力的なものです。想像力をかきたてられた時には、彫刻にも挑戦してみたいと思っていました。ずっと前に非科学的な小説を書き始めましたが、完成させることはできませんでした。文学の道が自分に向いていたかどうかは、絶対にわからないでしょう!

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

いろんな方法があると思います。 自分の主な役割の一つは、次世代の学生に知識と学習意欲を植え付け、創造的な思考の仕方、そして重要な研究の仕方を教える教育者としての役割だと考えています。 もちろん、それと同じくらい重要なのは研究です。研究は非常に重要で、現在の問題に大きな影響を与えます。例えば、私たちの社会を苦しめる病気を治す医薬品の生産、エネルギー危機の代替的な解決策を提供する新素材の発見などです。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

科学者を挙げるべきかと思いますが、一番会いたいと思っているのはオーギュスト・ロダンです。彼の彫刻は本当に素晴らしいもので、人間の形状の中に多くの感情が込められています。芸術については、作品を制作した人を知れば知るほど、作者自身の多くが作品の中に具現化されているがゆえに、より深く理解し、評価できることに気づくことがよくあります。この記述は、たぶんほとんどの科学者にも当てはまると思います。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

実際に実験されているのを見たり、学生と結果について話し合ったりするのがこの仕事の醍醐味なので、ほとんどの日は研究室に入るようにしています。しかし、数年前から(最初から最後まで)自分で実験を行っていません。自分の手を汚すことは厭いませんし、しばしば機器の一部を修理したり、実験の助けになっていることを学生達は分かっているでしょう。学生達にはいつも、気を散らすことなく一つのことに集中できるので、博士号を取得することは、科学的キャリアの中で最高の時間の一つであることを教えています。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本はダンテ・アリギエーリの『神曲』を持っていくと思います。

20代前半の頃に初めてこの本を読んだのですが、メッセージの中に多くのメッセージが込められていたので、「インフェルノ」の隠された意味や象徴性を理解するのに長い時間がかかりました。ダンテとバージルが煉獄に入るまで置いてけぼりでした。 無人島で時間が許せば、煉獄を通り抜けて楽園に行き、最終的にダンテのベアトリーチェに会えるでしょう。

音楽の好みが幅広いので、CDはちょっと難しいですが、Mobyの『Play』は気分を高揚させてくれるかもしれません。

[amazonjs asin=”4309205496″ locale=”JP” title=”神曲【完全版】”][amazonjs asin=”B00000JCXD” locale=”JP” title=”Play”]

原文:Reactions – Julie MacPherson

※このインタビューは2009年1月2日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第74回―「生体模倣型化学の追究」Ronald Breslow教…
  2. 第15回 有機合成化学者からNature誌編集者へ − Andr…
  3. 第81回―「均一系高分子重合触媒と生分解性ポリマーの開発」奥田 …
  4. 第26回 有機化学(どうぐばこ)から飛び出す超分子(アプリケーシ…
  5. 第67回―「特異な構造・結合を示すランタニド/アクチニド錯体の合…
  6. 第40回「分子エレクトロニクスの新たなプラットフォームを目指して…
  7. 第16回 教科書が変わる心躍る研究を目指すー野崎京子教授
  8. 第13回 次世代につながる新たな「知」を創造するー相田卓三教授

注目情報

ピックアップ記事

  1. シトクロムP450 BM3
  2. デミス・ハサビス Demis Hassabis
  3. ロバート・ノールズ Robert R. Knowles
  4. 化学小説まとめ
  5. カチオン中間体の反応に新展開をもたらす新規フロー反応装置の開発
  6. DNAナノ構造体が誘起・制御する液-液相分離
  7. ポンコツ博士の海外奮闘録 ケムステ異色連載記
  8. 東レ先端材料シンポジウム2011に行ってきました
  9. 日本化学会 第100春季年会 市民公開講座 夢をかなえる科学
  10. イオンペアによるラジカルアニオン種の認識と立体制御法

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー