第81回の海外化学者インタビューは、奥田 純 教授です。アーヘン工科大学無機化学研究所の有機金属化学部門長であり、ルイス酸金属の有機金属化学と均一系触媒、特に重合触媒とバイオマス変換に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。
Q. あなたが化学者になった理由は?
歴史、言語、哲学には常に興味を持っていましたし、自然科学、特に生物学にも興味があったので、難しい決断でした。しかし、両親とも化学者で、子どもの頃はよく一緒に仕事をしていたので、化学に興味を持ちました。結局、両親は「もっと役立ち」、もっと儲かる(と思えた)職を選ぶよう圧力をかけてきたので、最後には化学をやることになりました。
Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?
常にローマの歴史に興味を持っており、考古学/歴史研究には喜んで没頭します。なぜそのような洗練された文明が最終的に崩壊したのか、解明することに興味があります。
Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?
過去のヒューマニストの伝統では、教養人の教育において、芸術と科学における教育と探求が同じくらい重要視されていました。科学が自然の外に人間を置く不自然なものとして見られるようになるほど、有名な 「二つの文化」 が生まれたのはそれからです。特に、現在のエネルギーと気候の危機的文脈において、科学者は、単に「自然界の法則」を扱うだけでなく、自然と協力する方向に科学(化学)が戻っていくよう、自然の中の居場所に人類を呼び戻すことに貢献する必要があるでしょう。
Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?
ユリウス・カエサルです。非常に知的だと評判高い人物が一体どんな感じだったかを知りたく思います(でも三月の日はやめてください)。
Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?
1992年のことです。チタン触媒の前駆体を合成しようとして失敗しました。
Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。
本はシェークスピアの全集にします。彼は人間の本性について何でも知っているようで、機知と知恵を備えています。(ドイツ語の本でよければ)ゲーテの「ファウスト」やトーマス・マンの「魔の山」も選択肢の一つです。
もし許されるなら、モーツァルトのピアノ協奏曲(またはソナタ) 全曲のCDの入った箱を持っていきます。ピアニストも考えなければりませんね(おそらくは、アルフレート・ブレンデルか内田光子になるでしょう)。
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