[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第87回―「NMRで有機化合物の振る舞いを研究する」Daniel O’Leary教授

[スポンサーリンク]

第87回の海外化学者インタビューは、ダニエル・オレアリー教授です。ボードイン大学化学科に在籍し、NMR分光法と有機合成化学を用いて水素結合とペプチドの立体配座を研究しています(訳注:現在はポモナ大学に在籍)。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

生物学を専攻したいと思って大学に入学し、生物学の学位要件を満たすために化学入門を2年間受講しました。その後の夏に、素晴らしい学部研究を経験し、核磁気共鳴による生物学的システムの研究手法を学びました。このプロジェクトは生物学への興味を強固にし、生物プロセスの根源に到達するには、化学的要因を理解する必要があることを示してくれました。化学を専攻することは次のステップとして理にかなっていました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

アラスカの水産部で働いているいとこがいます。彼は多くの日を屋外と水上で過ごし、魚介類の個体数調査を行っています。自分の食習慣からすると、この仕事はお菓子屋で働く子どものようなものです。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

化石燃料を使わないプロセスで地球に電力を供給する方法を見つける必要があります。この問題は一夜にして解決できるものではないので、化学の教師は、教室に座っている子どもたちがこの問題を解決するのであって、自分たちが解決するのではないことを認識する必要があります。我々化学者は、教師がそうなってくれるよう、鼓舞していく必要があります。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

オレゴンの長距離ランナー、Steve Prefontaineです。なぜかって?ハードワーク、原因を追及してやまない姿勢、心身のタフさ、チームワーク、フレンドシップといった全てを備えているからです。彼の才能は国中を感動させ、1970年代のランニングブームに火を付けました。夜はヘイワード・フィールドで400回のセットから始まり、その後はおいしい食事と少々のビールで続けます。健康な自分を取り戻したいと思って良い理由を探してきましたが、これならきっとうまくいくでしょう。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

ちょうどこの一週間は、NMR分光計の側で学生と一緒に実験していました。イェール大学のScott Millerグループと共同で、興味深い触媒活性をもつペプチドの溶液構造を決定しようとしています。私が学部メインの大学で教鞭をとりつつ研究をしようと決めた理由の一つは、研究室で学生と密に仕事をするのが楽しいからです。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

前世の笑い話や思い出話で島流し生活をスタートさせたく思っています。CDは、ジョン・F・ケネディ演説集の録音にします。島からの脱出はすぐさま 「To Do リスト」のトップに上り詰めることになると思うので、音楽を聴きながらのんびり座っていたくはありません。ケネディのスピーチにはアドレナリンがみなぎっていて、新たな人生をベア・グリルス(訳注:英国のサバイバル冒険家)のように生きるには、エネルギーを爆発させることが必要です。島からの脱出に失敗したら、岩に座ってケネディの「キューバにおけるソ連の軍備増強に関する米国民へのラジオ・テレビ報道」を暗唱します。あのスピーチにはいい叱咤がたくさん含まれているので、もし島から出られなかったら、叱られムードにさせてくれるんじゃないか、という気がしました。

 

原文:Reactions – Daniel O’Leary

※このインタビューは2008年10月24日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第52回「薬として働く人工核酸を有機化学的に創製する」和田 猛教…
  2. 第84回―「トップ化学ジャーナルの編集者として」Anne Pic…
  3. 第67回―「特異な構造・結合を示すランタニド/アクチニド錯体の合…
  4. 第三回 ナノレベルのものづくり研究 – James …
  5. 第144回―「CO2を捕捉する多孔性金属-有機構造体の開発」My…
  6. 第85回―「オープン・サイエンス潮流の推進」Cameron Ne…
  7. 第14回「らせん」分子の建築家ー八島栄次教授
  8. 第156回―「異種金属―有機構造体の創製」Stéphane Ba…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 色素増感太陽電池の 実用化に向けたモジュール製造/セル作製技術【終了】
  2. ケイ素半導体加工に使えるイガイな接着剤
  3. 奇跡の素材「グラフェン」を使った世界初のシューズが発売
  4. 核酸医薬の物語3「核酸アプタマーとデコイ核酸」
  5. フォルハルト・エルドマン環化 Volhard-Erdmann Cyclization
  6. 2020年ノーベル化学賞は「CRISPR/Cas9ゲノム編集法の開発」に!SNS予想と当選者発表
  7. 今さら聞けないカラムクロマト
  8. 土釜 恭直 Kyoji Tsuchikama
  9. コンラッド・リンパック キノリン合成 Conrad-Limpach Quinoline Synthesis
  10. 化学の楽しさに触れるセミナーが7月に開催

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年4月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

ミトコンドリア内タンパク質を分解する標的タンパク質分解技術「mitoTPD」の開発

第 631 回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 生命科学研究科 修士課程2…

永木愛一郎 Aiichiro Nagaki

永木愛一郎(1973年1月23日-)は、日本の化学者である。現在北海道大学大学院理学研究院化学部…

11/16(土)Zoom開催 【10:30~博士課程×女性のキャリア】 【14:00~富士フイルム・レゾナック 女子学生のためのセミナー】

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。11/16…

KISTEC教育講座『中間水コンセプトによるバイオ・医療材料開発』 ~水・生体環境下で優れた機能を発揮させるための材料・表面・デバイス設計~

 開講期間 令和6年12月10日(火)、11日(水)詳細・お申し込みはこちら2 コースの…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP