[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第93回―「発光金属錯体と分子センサーの研究」Cristina Lagunas教授

[スポンサーリンク]

第93回の海外化学者インタビューは、クリスティーナ・ラグナス教授です。クイーンズ大学ベルファスト校 化学/化学工学科に在籍し、特に金を含む発光金属錯体、分子センサーに取り組んでいます。また、イオン性液体の電気化学と触媒に関する学際的研究にも携わっています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

新しいものを発見することに魅せられたからです。小さい頃、キュリー夫人の古い映画を見て、彼女の研究に対する情熱に惹かれました。中学校ではとても素晴らしい化学の先生に出会い、原子構造と分子軌道理論についてとても楽しく学びました。学部生の時には、無機化学と配位化学の研究室を楽しみましたし、さらに指導教員は研究をするよう鼓舞してくれました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

数学の学位を取っていたかもしれません。中学校で好きだった、もう一つの科目だったのです。数学の学位をとっていたら、未だにアカデミック職探しを続けていたと思います。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

エネルギーと環境は、現代の私たちにとって非常に挑戦的な2大課題です。化学と化学者は両方の中心にいます。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

質問1についての回答にもありましたが、マリ・キュリーに違いないでしょう。放射線の研究とラジウムやポロニウムのような元素の発見によって二つのノーベル賞を受賞しました(夫のピエールおよびH・ベクレルと共同で1903年物理学賞;1911年化学賞)。ソルボンヌ大学初の女性教授です。キュリー夫妻は、科学的知識を自由に共有しようと思っており、特許の取得はしませんでした。そして放射性物質が悪者の手に渡る危険性を警告しました。マリーは医学におけるX線の使用を執拗に勧めましたが、放射能の健康への危険性を見過ごしていました。今日における私たちの知見を知ったとき、何か違うことをするのかどうかを知りたいです。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

3~4年の間、始めから終わりまで通した実験をしていませんが、時々は研究室に入って、学生の仕事を 「手伝って」 います。前回は数週間前で、博士課程の新入生がnBuLiを使う反応を仕込むのを手伝いました。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

セルバンテスのスペイン古典、「El ingenioso hidalgo Don Quixote de la Mancha」(略して「ドン・キホーテ」)を持っていきます。悲劇、喜劇、冒険が等しく含まれています。まだちゃんと読んだことはありません(中学校でほんのちょっとだけ読みました)。無人島は「読むべき本」から一線を画すのに良い場所ですね。そして、故郷のラ・マンチャを舞台にしているので、故郷を思い出します。

CDは、エリック・クラプトンの「Unplugged」ですね。何度聞いても飽きることがないようです。

 

原文:Reactions – Cristina Lagunas

※このインタビューは2008年12月5日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第165回―「光電変換へ応用可能な金属錯体の開発」Ed Cons…
  2. 第15回 触媒の力で斬新な炭素骨格構築 中尾 佳亮講師
  3. 第131回―「Nature出版社のテクニカルエディターとして」L…
  4. 第122回―「分子軌道反応論の教科書を綴る」Ian Flemin…
  5. 第115回―「分子機械と天然物の化学合成」Ross Kelly教…
  6. 第71回「分子制御で楽しく固体化学を開拓する」林正太郎教授
  7. 第二回 伊丹健一郎教授ー合成化学はひとつである
  8. 第49回「キラルブレンステッド酸に魅せられて」秋山隆彦教授

注目情報

ピックアップ記事

  1. 美しい化学構造式を書きたい方に
  2. 硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築
  3. アーサー・L・ホーウィッチ Arthur L. Horwich
  4. ウォルフガング-クローティル Wolfgang Kroutil
  5. 東レから発表された電池と抗ウイルスに関する研究成果
  6. 血液検査による新しいがん診断方法の開発!
  7. エナンチオ選択的Heck反応で三級アルキルフルオリドを合成する
  8. リアルタイムで分子の自己組織化を観察・操作することに成功
  9. 有機配位子による[3]カテナンの運動性の多状態制御
  10. 導電性ゲル Conducting Gels: 流れない流体に電気を流すお話

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

【四国化成ホールディングス】新卒採用情報(2026卒)

◆求める人財像:『使命感にあふれ、自ら考え挑戦する人財』私たちが社員に求めるのは、「独創力」…

マイクロ波に少しでもご興味のある方へ まるっとマイクロ波セミナー 〜マイクロ波技術の基本からできることまで〜

プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーとして注目されている、電子レンジでおなじみの”マイクロ…

世界の技術進歩を支える四国化成の「独創力」

「独創力」を体現する四国化成の研究開発四国化成の開発部隊は、長年蓄積してきた有機…

四国化成ってどんな会社?

私たち四国化成ホールディングス株式会社は、企業理念「独創力」を掲げ、「有機合成技術」…

アザボリンはニ度異性化するっ!

1,2-アザボリンの光異性化により、ホウ素・窒素原子を含むベンズバレンの合成が達成された。本異性化は…

マティアス・クリストマン Mathias Christmann

マティアス・クリストマン(Mathias Christmann, 1972年10…

ケムステイブニングミキサー2025に参加しよう!

化学の研究者が1年に一度、一斉に集まる日本化学会春季年会。第105回となる今年は、3月26日(水…

有機合成化学協会誌2025年1月号:完全キャップ化メッセンジャーRNA・COVID-19経口治療薬・発光機能分子・感圧化学センサー・キュバンScaffold Editing

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年1月号がオンライン公開されています。…

配位子が酸化??触媒サイクルに参加!!

C(sp3)–Hヒドロキシ化に効果的に働く、ヘテロレプティックなルテニウム(II)触媒が報告された。…

精密質量計算の盲点:不正確なデータ提出を防ぐために

ご存じの通り、近年では化学の世界でもデータ駆動アプローチが重要視されています。高精度質量分析(HRM…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP