[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第64回―「ホウ素を含むポルフィリン・コロール錯体の研究」Penny Brothers教授

[スポンサーリンク]

第64回の海外化学者インタビューは、ペネロペ・ブラザーズ教授です。ニュージーランドのオークランド大学化学科に所属(訳注:現所属はオーストラリア国立大学)し、ホウ素と配位子の両方で異常な構造と反応性を示す、二ホウ素含有ポルフィリンおよびコロール錯体の研究を行っています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

父は地質学の教授で、母は植物学者でした。仕事でよく父を訪ねたのですが、地質学科には美しい結晶鉱物のショーケースがあり、それに魅せられました。学校で初めて化学に出会ったとき、ガラスケースの中の美しい結晶を見るだけでなく、自分で作ることもできることに気づきました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

人間志向、実用志向、そして多くの問題解決を含む、似た組み合わせの何かに惹かれると思います。実験室で過ごすための時間を化学に費やした後、野外活動にとても興味を持つようになりました。昔から文章や読書が好きで、出版業界にも興味がありました。これらすべてを組み合わせるにはどうすればいいでしょうか?150年前に生まれ、異国の地を旅し、そこで見つけたものを観察し記録することで新しい科学の世界を切り開いた、勇敢な探検家の一人になるべきだったのかもしれません。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

現在世界が直面している主要な問題、すなわち、環境にさらなるダメージを与えることなく世界の人々の生活の質を提供できるエネルギー源の発見は、化学的な解決策になるでしょう。特にエネルギーと持続可能性の分野では、化学者が問題を定義し、答えを探しています。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

アルフレッド・ストックです。私はホウ素化学を教え、研究していますが、今日の高度な装置や分析ツールの恩恵を享受することなく、有毒かつ空気に敏感な化合物を調製し扱うことで、これほどに豊かな化学を彼が達成したことに驚きました。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

何をその実験とみなすかによります。昨日は、学部生がニッケル錯体を結晶化するのを手伝いました。最後にラボで実験をしたのは、1993年のサバティカル休暇で、カリフォルニア大学デービス校のPhil Power氏とでした。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本は聖書になるでしょう。良質かつ素敵な作り話、物語風の歴史、たくさんの細かい文字が印刷されているので、長い読書になるでしょうし、おそらく無人島に追放された際の精神的・心理的側面に対応出来る便利なアドバイスも得られるでしょう。

CDは、ヘンデルの「メサイア」です。本と同じような理由ですが、これは絶望の深みから喜びの高みへ広がる音楽なのです。加えて、アルトパートに沿って自分で歌うこともできますね。

[amazonjs asin=”B000LZ54ZU” locale=”JP” title=”ヘンデル:オラトリオ「メサイア」”]

原文:Reactions – Penny Brothers

※このインタビューは2008年5月16日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第42回「激動の時代を研究者として生きる」荘司長三教授
  2. 第134回―「脳神経系の理解を進める分析化学」Jonathan …
  3. 第50回―「糖やキラル分子の超分子化学センサーを創り出す」Ton…
  4. 第20回「転んだ方がベストと思える人生を」ー藤田 誠教授
  5. 第67回―「特異な構造・結合を示すランタニド/アクチニド錯体の合…
  6. 第66回―「超分子集合体と外界との相互作用を研究する」Franc…
  7. 第11回 触媒から生命へー金井求教授
  8. 第68回―「医療応用を志向したスマート高分子材料の開発」Came…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 健康的なPC作業環境のすすめ
  2. 海外学会出張でeSIMを使ってみました
  3. 有機合成化学者が不要になる日
  4. リサーチ・アドミニストレーター (URA) という職業を知っていますか?
  5. 100年前のノーベル化学賞ーフリッツ・ハーバーー
  6. 第4回鈴木章賞授賞式&第8回ICReDD国際シンポジウム開催のお知らせ
  7. Altmetric Score Top 100をふりかえる ~2018年版~
  8. Process Mass Intensity, PMI(プロセス質量強度)
  9. 「有機合成と生化学を組み合わせた統合的研究」スイス連邦工科大学チューリヒ校・Bode研より
  10. 世界最高の活性を示すアンモニア合成触媒の開発

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

中村 真紀 Maki NAKAMURA

中村真紀(Maki NAKAMURA 産業技術総合研究所)は、日本の化学者である。産業技術総合研究所…

フッ素が実現する高効率なレアメタルフリー水電解酸素生成触媒

第638回のスポットライトリサーチは、東京工業大学(現 東京科学大学) 理学院化学系 (前田研究室)…

【四国化成ホールディングス】新卒採用情報(2026卒)

◆求める人財像:『使命感にあふれ、自ら考え挑戦する人財』私たちが社員に求めるのは、「独創力」…

マイクロ波に少しでもご興味のある方へ まるっとマイクロ波セミナー 〜マイクロ波技術の基本からできることまで〜

プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーとして注目されている、電子レンジでおなじみの”マイクロ…

世界の技術進歩を支える四国化成の「独創力」

「独創力」を体現する四国化成の研究開発四国化成の開発部隊は、長年蓄積してきた有機…

四国化成ってどんな会社?

私たち四国化成ホールディングス株式会社は、企業理念「独創力」を掲げ、「有機合成技術」…

アザボリンはニ度異性化するっ!

1,2-アザボリンの光異性化により、ホウ素・窒素原子を含むベンズバレンの合成が達成された。本異性化は…

マティアス・クリストマン Mathias Christmann

マティアス・クリストマン(Mathias Christmann, 1972年10…

ケムステイブニングミキサー2025に参加しよう!

化学の研究者が1年に一度、一斉に集まる日本化学会春季年会。第105回となる今年は、3月26日(水…

有機合成化学協会誌2025年1月号:完全キャップ化メッセンジャーRNA・COVID-19経口治療薬・発光機能分子・感圧化学センサー・キュバンScaffold Editing

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年1月号がオンライン公開されています。…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー