[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第67回―「特異な構造・結合を示すランタニド/アクチニド錯体の合成」Polly Arnold教授

[スポンサーリンク]

第67回の海外化学者インタビューは、ポリー・アーノルド教授です。イギリスのエディンバラ大学化学科に所属し、低分子の活性化と新しい触媒の発見を目的に、特異な構造および反応化学を示すランタニド/アクチニド化合物の合成に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

第1に、教える科目に夢中になっている優秀な教師がいたからです。GCSE(16+Chemistry)は退屈だと思ったのですが、ある教師は次のレベルに行けばもっと面白くなると約束してくれました。それは正しかったのです。

第2に、学部時代に、化学には少しばかりの配管作業も含まれていましたが、そのすべてが問題解決になっていることに気づいたからです。その瞬間から夢中になりました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

Jim HensonCreature Workshopで働きます。彼らは操り人形を作っています。学生のときにそこで夏の間だけ働いていましたが、大好きな仕事でした。それは科学者と芸術家が混ざり合って行われる素晴らしい創造的な営みであり、全ては興味深い問題解決です。別世界から来たかのようなアニマトロニクスの眼球と毛皮を作るために、真に新しい技術を使っています。現代のCGIテクノロジーと比べて古めかしいことは否めませんが、この手触り感あるモンスターたちは今でもとても特別な存在です。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

当面、公害が最大の問題だと思います。医薬品や建材などをより効率的に製造し、プラスチックや二酸化炭素などの大量の廃棄物をより効率的にリサイクルすることで、解決の力になれると確信しています。しかし、こういった重要な進歩を遂げるには、基礎化学にフォーカスする必要があります。ただし、イギリスの現在の資金調達スキームにおいて説得力を持つトピックに、すべてを集中させるということではありません。そうしなければ、非常に大きな問題解決をもたらすブレークスルーに不可欠たる創造性を抑制することになります。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

タンク・ガイ(無名の反逆者)です。名前は知られていませんし、まだ生きているかもわからないですが、私よりずっと年上ということはありません。1989年の中国での独裁反対デモの最中、天安門広場の戦車の前に立った学生です。彼の平和を求める勇気はもちろん、象徴的な写真が撮影された後の、溶けて居なくなったかの様子にも感動しました。欧米人が求めるような名声とは対照的です。世の中が変わってきているのかについて、彼がどう思っているかを知りたいです。まだ平和を目指す活動家をしているのでしょうか?それとも今は、立派な指導者になっているのでしょうか?

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

つい数週間前です。講義をしに訪れた後、ダラム大学の友人が興味深い試薬を一つくれました。我々のウラン化合物の一つと反応することで、とても変わった新たな分子を作りうるものでしたが、可能性はほとんどありませんでした。うまくいく確率が非常に低く、学生たちは皆とても忙しかったので、自ら実験をやりました。もちろんうまくいきませんでしたが、別のウラン化合物なら上手く行くのではとのアイデアが生まれました。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

友人がくれた英仏スラング辞典です。夜間授業じゃないやり方でフランス語を上達させるには、無人島は理想的な場所だと思います。

CDはRadioheadのアルバム「OK Computer」をもっていきます。美しく心に残り複雑な曲であり、ちょっとした孤独を楽しむのに必要です。また、十分な音量で聴いたこともありません。

[amazonjs asin=”B000002UJQ” locale=”JP” title=”Ok Computer”]

原文:Reactions – Polly Arnold

※このインタビューは2008年6月6日に公開されました。

関連動画

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第48回―「周期表の歴史と哲学」Eric Scerri博士
  2. 第155回―「化学結合と反応性を理論化学で理解する」Sason …
  3. 第139回―「超高速レーザを用いる光化学機構の解明」Greg S…
  4. 第56回「複合ナノ材料の新機能を時間分解分光で拓く」小林洋一 准…
  5. 第167回―「バイオ原料の活用を目指した重合法の開発」John …
  6. 第二回 水中で超分子化学を探る-Bruce Gibb教授-
  7. 第一回 人工分子マシンの合成に挑む-David Leigh教授-…
  8. 第67回「1分子レベルの酵素活性を網羅的に解析し,疾患と関わる異…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 【ジーシー】新たな治療価値を創造するテクノロジー -BioUnion-
  2. 研究者のためのCG作成術①(イントロダクション)
  3. Bayer Material Scienceの分離独立が語るもの
  4. 2つの触媒と光エネルギーで未踏の化学反応を実現: 芳香族化合物のメタ位選択的アシル化の開発に成功 !!!
  5. ツヴァイフェル オレフィン化 Zweifel Olefination
  6. 留学生がおすすめする「大学院生と考える日本のアカデミアの将来2020」
  7. SFTSのはなし ~マダニとその最新情報 後編~
  8. ヒノキチオール (hinokitiol)
  9. 危険物取扱者試験の乙種全類 磐田農高生6人が合格
  10. ランバーグ・バックランド転位 Ramberg-Backlund Rearrangement

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー