[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第66回―「超分子集合体と外界との相互作用を研究する」Francesco Stellacci教授

[スポンサーリンク]

第66回の海外化学者インタビューは、フランセスコ・ステラッチ教授です。マサチューセッツ工科大学(訳注:現在はスイス連邦工科大学ローザンヌ校に所属)の材料化学/工学部で超分子材料化学を研究しており、特に超分子集合体が特定のナノ構造を取るときに示す外界との相互作用に興味を持っています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

実のところ自分は材料科学者でして、化学者は私の「いとこ」 です。材料科学者になる選択をしたのは、物理学と化学のどちらがいいか決められなかったからで、材料科学はよい妥協点に思えたからです。キャリアが進むにつれて、ますます化学に傾くようになりましたが、それでもその選択には心から満足しています。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

そうですね、科学を選んだ理由は、それが周りの人々を助け、最終的にはあらゆる人の生活的改善につながる知識を発展させる方法だとかつて感じ、また今も感じ続けているからです。この夢は自らを日々駆り立てる、他の何にも代えがたいものです。ですから、もし科学者になれなかったら、同じ精神を持つ政治家になりたいと思ったでしょう。一方、私の昔からの夢は、アンリ・カルティエ=ブレッソンのような、芸術的なタッチで世界に語りかける写真家になることです。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

私たちは誰でも、自らの才能をこの世界の生活的改善に使うことができます。そのために使う資源はどんどん少なくなり、病気や痛みが人生にもたらす困難を和らげることができます。遠き未来の夢は、科学を使って、豊かな国と貧しい国の格差をなくすことです。技術が均等配分されている世界では、(たとえば水のような)天然資源への不均等アクセスに由来する格差は緩和される(…と思います)。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

うーん、これは難しいね。サッカー選手でもいいですか?・・・冗談ですよ。他人が彼らを必要としなかった時代に、世界を変えた方々と夕食を共にしたいと思います。彼らはものごとをより良くするために、愛をもってそうしたのです。ですから、アッシジの聖フランチェスコガンディーはマイリストに載っています。とはいえ、たった一度の夕食(あまりに短すぎて質問をしきれませんが・・・)なら、クレオパトラなんてどうでしょうか?・・・これも冗談ですよ。.

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

真っ当な実験でしょうか?・・・覚えていません。とてもとても悲しいことに!!!ポスドク最後の実験が何だったかさえ覚えていません。そう、恋人への別れのキスみたいなものですよね!実習の授業をしている都合、今も多くの実験をしていますが、DLSを用いて希薄溶液中の高分子コイルのサイズを測定したのが最後の実験です。真に研究指向である実験のスリルに勝るものはありません。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

まだ全部読んでおらず、ずっと読み終えたいと思っていた本にします。それはダンテ・アリギエーリの「神曲」です。

CDはピンク・フロイドのものにするでしょう。選ぶのは本当に大変ですが、どの曲も大好きです。

[amazonjs asin=”4309205496″ locale=”JP” title=”神曲【完全版】”]

原文:Reactions – Francesco Stellacci

※このインタビューは2008年5月30日に公開されました。

関連動画

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第159回―「世界最大の自己組織化分子を作り上げる」佐藤宗太 特…
  2. 第12回 金属錯体から始まる化学ー伊藤肇教授
  3. 第85回―「オープン・サイエンス潮流の推進」Cameron Ne…
  4. 第163回―「微小液滴の化学から細胞系の仕組みを理解する」Wil…
  5. 第102回―「有機薄膜エレクトロニクスと太陽電池の研究」Lynn…
  6. 第69回―「炭素蒸気に存在する化学種の研究」Harold Kro…
  7. 第74回―「生体模倣型化学の追究」Ronald Breslow教…
  8. 第25回「ペプチドを化学ツールとして細胞を操りたい」 二木史朗 …

注目情報

ピックアップ記事

  1. エマニュエル・シャルパンティエ Emmanuel Charpentie
  2. 神谷 信夫 Nobuo Kamiya
  3. フェルナンド・アルベリシオ Fernando Albericio
  4. 2010年日本化学会年会を楽しむ10の方法
  5. 有機ELディスプレイの最新技術【終了】
  6. トリメチレンメタン付加環化 Trimethylenemethane(TMM) Cycloaddition
  7. ピーター・リードレイ Peter Leadlay
  8. 窒素固定をめぐって-1
  9. ペンタレネン Pentalenene
  10. バンバーガー転位 Bamberger Rearrangement

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

【産総研・触媒化学研究部門】新卒・既卒採用情報

触媒部門では、「個の力」でもある触媒化学を基盤としつつも、異分野に積極的に関わる…

触媒化学を基盤に展開される広範な研究

前回の記事でご紹介したとおり、触媒化学研究部門(触媒部門)では、触媒化学を基盤に…

「産総研・触媒化学研究部門」ってどんな研究所?

触媒化学融合研究センターの後継として、2025年に産総研内に設立された触媒化学研究部門は、「触媒化学…

Cell Press “Chem” 編集者 × 研究者トークセッション ~日本発のハイクオリティな化学研究を世界に~

ケムステでも以前取り上げた、Cell PressのChem。今回はChemの編集…

光励起で芳香族性を獲得する分子の構造ダイナミクスを解明!

第 654 回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 協奏分子システム研究セ…

藤多哲朗 Tetsuro Fujita

藤多 哲朗(ふじた てつろう、1931年1月4日 - 2017年1月1日)は日本の薬学者・天然物化学…

MI conference 2025開催のお知らせ

開催概要昨年エントリー1,400名超!MIに特化したカンファレンスを今年も開催近年、研究開発…

【ユシロ】新卒採用情報(2026卒)

ユシロは、創業以来80年間、“油”で「ものづくり」と「人々の暮らし」を支え続けている化学メーカーです…

Host-Guest相互作用を利用した世界初の自己修復材料”WIZARDシリーズ”

昨今、脱炭素社会への実現に向け、石油原料を主に使用している樹脂に対し、メンテナンス性の軽減や材料の長…

有機合成化学協会誌2025年4月号:リングサイズ発散・プベルル酸・イナミド・第5族遷移金属アルキリデン錯体・強発光性白金錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年4月号がオンラインで公開されています!…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー