[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第38回「分子組織化の多様な側面を理解する」Neil Champness教授

[スポンサーリンク]

長らく更新が止まっていましたが、海外化学者インタビュー再開しました。Nature Chemistryのブログ「The Sceptical Chymist」のインタビュー「Reaction」から同ブログの許可を得て、日本語翻訳しています。10年以上前になっているので内容自体は古くなっているかもしれませんがご容赦ください。

第38回の海外化学者インタビューは、ニール・チャンプネス教授です。ノッティンガム大学化学科に所属し、結晶工学を介した固体状態でのナノスケール表面超分子集積および組織化を含む、分子組織化のあらゆる側面に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

私は化学者としてはそれなりの能力を持っていましたが、キャリアとしての化学に興味を持つようになったのは、博士課程のときです。博士課程で初めて自分のために分子を作ったり新しいことを発見したときに、このことが思い浮かびました。もはや研究室に入ることはほとんどありませんが、研究グループが進歩に踏み出したときには、今でもそのことが話題になります。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

政治家になってしまいそうです。多くの人が驚くだろうとは思えます。しかし、自らの天賦の才を他人のために使うべきだという強い意識を私は持っていますし、たとえいつもはうまくいかなくても、ほとんどの人より大きな変化をもたらす可能性が政治家にはあると常に感じています!私は強い政治観を持っていて、化学よりも長い間、政治に興味を持っていたと思います。そしてもっと多くの科学者が政治に関わるべきだと思います。結局のところ、私たちには貢献できることがたくさんあるのですから。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

先ほどの答えからもお分かりでしょうが、化学者が能力をより広い利益のために使うことは極めて重要だと思います。化学者はすでに、新薬や多くの新技術をもって世界に多大な貢献をしています。現代の世界で出会うほとんどすべてのものは、何らかの形で化学者によって改良されてきました。化学者が今後数年間で大きな変化をもたらす分野の1つは、気候変動の影響をコントロールすることでしょう。考えてみれば、その問題を理解し、克服する方法を知っているのは化学者だけです。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

ロバート・F・ケネディです。彼は兄のJFKほど有名ではありませんが、社会の恵まれない人々に手を差し伸べるような、真にビジョンを持つ素晴らしい人物でした。彼は政治的に非常に影響力があり、ビル・クリントンやトニー・ブレアなどによって知られるいわゆる「第三の道」の背後にある真の思想でした。もし彼が1968年の民主党指名獲得の選挙運動中に射殺されていなければ、ニクソンを打ち負かし大統領となり、ベトナムから引き揚げたかもしれません。今日の世界はきっと全く違う場所になっていることでしょう。

Robert F. Kennedy (1925-1968)(写真:Wikipedia)

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

数年来の研究室教育以外、ほとんど思い出せません!かつては爆発と光を使った実演講義を行っていましたが、研究実験よりも最近のことでした。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

聖書とシェークスピアがあるかどうか次第でしょうか? もしなければ、聖書を持って行かねばならないでしょう。すでにあるなら、いろいろな本を読んできているもので、選ぶのは大変ですね。小説なら村上春樹の「ノルウェイの森」、ノンフィクションならロバート・F・ケネディのスピーチ集「世界の暮らしをやさしく」でしょうか。CDはボブ・ディランの「ブロンド・オン・ブロンド」でなければなりません。私が生まれるより前に作られた曲ですが、それ以上のものはありません。

[amazonjs asin=”B07KVTV42B” locale=”JP” title=”ノルウェイの森 (講談社文庫)”][amazonjs asin=”1435211855″ locale=”JP” title=”Make Gentle the Life of This World: The Vision of Robert F. Kennedy”][amazonjs asin=”B00C68FJY6″ locale=”JP” title=”Blonde on Blonde”]

原文:Reactions – Neil Champness

※このインタビューは2007年11月9日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第27回 「有機化学と光化学で人工光合成に挑戦」今堀 博 教授
  2. 第47回「目指すは究極の“物質使い”」前田和彦 准教授
  3. 第115回―「分子機械と天然物の化学合成」Ross Kelly教…
  4. 第25回 溶媒の要らない固体中の化学変換 – Len…
  5. 第58回「新しい分子が世界を変える力を信じて」山田容子 教授
  6. 第15回 触媒の力で斬新な炭素骨格構築 中尾 佳亮講師
  7. 第137回―「リンや硫黄を含む化合物の不斉合成法を開発する」St…
  8. 第28回 錯体合成から人工イオンチャンネルへ – P…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ゴードン会議に参加して:ボストン周辺滞在記 Part II
  2. 化学的に覚醒剤を隠す薬物を摘発
  3. 第六回ケムステVシンポ「高機能性金属錯体が拓く触媒科学」
  4. 中国へ講演旅行へいってきました①
  5. 有機合成化学協会誌2021年9月号:ストリゴラクトン・アミド修飾アリル化剤・液相電解自動合成・ビフェニレン・含窒素複素環
  6. 自由研究にいかが?1:ルミノール反応実験キット
  7. お前はもう死んでいる:不安定な試薬たち|第4回「有機合成実験テクニック」(リケラボコラボレーション)
  8. アノードカップリングにより完遂したテバインの不斉全合成
  9. 「原子」が見えた! なんと一眼レフで撮影に成功
  10. コンラッド・リンパック キノリン合成 Conrad-Limpach Quinoline Synthesis

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年12月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP