[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第41回―「クロム錯体のユニークな触媒活性と反応性を解明する」Klaus Theopold教授

[スポンサーリンク]

第41回の海外化学者インタビューは、クラウス・テオポルド教授です。デラウェア大学の化学-生化学部長であり、興味深い構造と反応性を持つ遷移金属化合物の合成と構造決定について研究しています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

実は最初になりたいと思ったのは天文学者でした。しかし、年をとるにつれて、天文学者の雇用機会は非常に限られていると思うようになりました。幸いなことに、高校時代の親友の父親が化学の教授(ハンブルク大学のWolfgang Walter教授)で、ガラス器具や化学薬品、最初の実験デモなどを提供してくれました。すぐさま「ものづくり」 にはまってしまいました。当時は子供が薬局に行って本物の化学薬品を買うことができたのです。お気に入りの化学の記憶は、台所でかなり大規模な臭素の調製と蒸留をしたことです。今の今まで、私は化学合成が大好きです。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

ガラス吹きになるか、ある程度でもガラスを扱う仕事をしたいです。ガラスは化学的にも物理的にも素晴らしい素材です。溶融ガラスから複雑な固体構造への変化は私を常に魅了しており、ガラスの物体としての感触と外観が私は大好きなのです。その脆さも魅力を増すばかりです。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

皆さんがどんな化学者であるかによります。教授たる私が世界へ貢献していることは、人材の訓練であると思います。より一般的な意味では、人間が直面する最も重要な問題は化学に関わるものです。再生可能エネルギー、環境保護、医薬品は、明らかに化学者を忙しくさせている課題です。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

それは真に歴史的な人物―イエス・キリストです。父(心療内科医)はキリストを理解しようと生涯の多くを費やし、その後キリスト教徒になりました。父はキリストの人生についていくつか興味深い推測をしていたのですが、それについても聞いてみたいと思っています。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

三か月ほど前です。反応により放出されるガスの量を、テプラーポンプで測定する大学院生を手伝いました。この装置はあまり使わないですし、研究室で操作方法を覚えているのは私だけのようです。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

うーん、CDプレーヤーのようなアメニティのある無人島なのですか?私はCharlie Parkerの音楽が大好きなので、彼のベスト曲集を選ぶでしょう。かなり長時間そこにいなくてはならないなら、ついでに演奏の練習をするためのアルトサックスも持って行ければいいでしょう。本については、ダーウィンの 「種の起源」 を持っていきます。私は進化論を固く信じていますが、彼の本を時間をとって読んだことはありません。それに、島でのサバイバルのコツも載っているようですし。

[amazonjs asin=”B00475OJH4″ locale=”JP” title=”ヴェリー・ベスト・オブ・チャーリー・パーカー”][amazonjs asin=”B00H6XBDEQ” locale=”JP” title=”種の起源(上) (光文社古典新訳文庫)”]

原文:Reactions – Klaus Theopold

※このインタビューは2007年11月30日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第27回 「有機化学と光化学で人工光合成に挑戦」今堀 博 教授
  2. 第145回―「ランタニド・アクチニド化合物の合成と分光学研究」C…
  3. 第58回「新しい分子が世界を変える力を信じて」山田容子 教授
  4. 第137回―「リンや硫黄を含む化合物の不斉合成法を開発する」St…
  5. 第119回―「腸内細菌叢の研究と化学プロテオミクス」Aaron …
  6. 第115回―「分子機械と天然物の化学合成」Ross Kelly教…
  7. 第48回「分子の光応答に基づく新現象・新機能の創出」森本 正和 …
  8. 第59回「希土類科学の楽しさを広めたい」長谷川靖哉 教授

注目情報

ピックアップ記事

  1. 「ペプチドリーム」東証マザーズ上場
  2. 高速原子間力顕微鏡による溶解過程の中間状態の発見
  3. 化学系人材の、より良い将来選択のために
  4. ガーナーアルデヒド Garner’s Aldehyde
  5. ノーベル賞への近道?ー研究室におけるナレッジマネジメントー
  6. 岡大教授が米国化学会賞受賞
  7. 【書籍】文系でも3時間でわかる 超有機化学入門: 研究者120年の熱狂
  8. 禅問答のススメ ~非論理に向き合う~
  9. ダウとデュポンの統合に関する小話
  10. 中学生の研究が米国の一流論文誌に掲載された

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年12月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー