[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第32回 液晶材料の新たな側面を開拓する― Duncan Bruce教授

[スポンサーリンク]

第32回の海外化学者インタビューは、ダンカン・ブルース教授です。ヨーク大学化学科に在籍し、液晶に重点を置きつつ材料化学のさまざまな側面を研究しています。それではインタビューをどうぞ。

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

カーライルのトリニティスクールで4年間教わった人―Mike Fosseyが私にインスピレーションを与えてくれたのです。彼は化学に根付く美しさ、幅広さ、論理を示し、なんとエキサイティングな科目だろう!と私に実感させてくれたのです。数年後、シェフィールド大時代に、もう一人の教え子と共著出版した論文を彼に送ったのですが、本当に喜ばしい経験でした。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

古代の歴史にはいつも魅力を感じています。そういった方向のアカデミックキャリアは、あり得る選択肢だったでしょうね。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

このリストは長くなります。というのも、化学は我々の生活に多面的に浸透しうる、ユニークな特性を持つからです。しかしながら、現在世界が直面する最大の課題は、おそらくエネルギーに関するものでしょう。我々には水素もしくは新しい再生可能資源が必要です。より効率的に使用し、貯蔵可能な方法を見いださねば成りません。化学者はこういった問題の中心におり、その創造性は、現実世界にインパクトを与えうるのです。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

ネルソン・マンデラです。投獄に耐え、出獄後は英知をもって人々を導き、世界の舞台においてあれほど重要な地位に居るわけです。すなわち、彼から学べることは、とても沢山あるのです。メディアを通じて見る限りですが、この上なく素晴らしい同席者になるでしょう。

Nelson Rolihlahla Mandela (1918 – 2013)

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

実験室には頻繁に入り浸っています。光学顕微鏡を使った液晶相の同定作業を、グループのメンバーと協力しています。しかし、「袖まくりをして」反応をかけたのはいつかと問われれば、それは「ごく最近」ですね。ラボを訪れたある講演者のセミナーを聴いて、スライドの1枚に突き動かされ、午後そのままラボに行って実験しました。簡単な反応でしたよ。塩基を水に溶かすため酸性にし、次いで共沈殿させるというものです。純粋な物質を得て、それが何なのかを解析し、結晶構造をとれば・・・やるべき作業は全て終わりです。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

イアン・マキューアンセバスチャン・フォークスルイ・ド・ベルニエールピーター・ケアリーなど、現代作家の作品を私はよく読みます。つい最近読んだ作品ではあるのですが、イレーヌ・ネミロフスキーの「フランス組曲」を持っていくでしょう。この本については沢山の評が書かれていますが、混じりっ気なしの人間性と人間存在の観察は、何度も何度も読み返されるに値します。

[amazonjs asin=”4560082456″ locale=”JP” title=”フランス組曲”]

音楽についてははるかに難しいです。私の趣味は、バロックからロマン派、ショスタコーヴィチから60~70年代のロック、そして現代音楽まで多様です。しかし、感動的かつ感情を揺さぶるベートーヴェンの「交響曲第9番」を持っていくでしょうね。(イングランドの湖水地方を思い出させてくれる)同作家のヴァイオリン協奏曲が、第二選択でしょう。とはいえ、パスカル・ロジェによって演奏されたドビュッシーの「アラベスク第1番」と「天国への階段」も欲しいので、どのCDも自分で作らなねばなりませんね。

[amazonjs asin=”B00UI9C75E” locale=”JP” title=”ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」”][amazonjs asin=”B000006ZY6″ locale=”JP” title=”天国への階段~レッド・ツェッペリン・トリビュート・アルバム”]

原文:Reactions – Duncan Bruce

※このインタビューは2007年9月28日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第103回―「機能性分子をつくる有機金属合成化学」Nichola…
  2. 第78回―「膜タンパク質の分光学的測定」Judy Kim教授
  3. 第69回「見えないものを見えるようにする」野々山貴行准教授
  4. 第87回―「NMRで有機化合物の振る舞いを研究する」Daniel…
  5. インタビューリンクー時任・中村教授、野依理事長
  6. 第44回―「N-ヘテロ環状カルベン錯体を用いる均一系触媒開発」S…
  7. 第34回「ポルフィリンに似て非なるものを研究する」忍久保洋 教…
  8. 第65回「化学と機械を柔らかく融合する」渡邉 智 助教

注目情報

ピックアップ記事

  1. 【9月開催】第十一回 マツモトファインケミカル技術セミナー   オルガチックスを用いたゾルゲル反応による金属酸化物膜の形成
  2. リチャード・スモーリー Richard E. Smalley
  3. 吉田潤一 Jun-ichi Yoshida
  4. パーキンソン病治療の薬によりギャンブル依存に
  5. 鴻が見る風景 ~山本尚教授の巻頭言より~
  6. 新しい選択的ヨウ素化試薬
  7. 橋頭位二重結合を有するケイ素化合物の合成と性質解明
  8. 快適な研究環境を!実験イス試してみた
  9. 開発者が語る試薬の使い方セミナー 2022 主催:同仁化学研究所
  10. カストロ・ステファンス カップリング Castro-Stephens Coupling

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年1月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー