[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第27回 生命活動の鍵、細胞間の相互作用を解明する – Mary Cloninger教授

[スポンサーリンク]

第27回目はマリー・クロニンガー教授です。クロニンガー教授はモンタナ州立大学の化学−生化学科に在籍されており、主に多価タンパク質−炭水化物間相互作用に取り組まれ、糖鎖生物学や炭水化物合成の分野の研究をされています。ではインタビューをどうぞ。

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

高校の化学の授業で、実験パートナーと私は毎回の試薬を少しずつ取って一つのビーカーに混ぜ、それをカップボードに隠していました(どうしてあんなことをしまったのかわかりません、絶対に真似をしないでください!)ある日ビーカーの中身が発熱し、実験室中が緑だか茶色掛かった煙につつまれるという騒ぎが起きたのですが、先生は私たちに居残りを命じることはなく、代わりに何故あのような反応が起きたのかという簡単なまとめを提出するよう言われました。この提出課題が私の興味を惹き、化学者になろうと思ったのです。

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

化学者以外になろうとしたことはないですし、正直な話、化学者になれなかったとしたら何になっていたか想像もつきませんね。おそらく、何か学生と触れ合えるような職業に挑戦していたと思います。

 

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

私の博士課程の恩師、Howard Whitlock先生(※)は「一人一人が、何でもよいからそれを成功させるために心血を注ぐことの出来るテーマを見つけること、それが大切だ」と仰られていました。私は化学者としてこれに付け加えたいことがあります。それは、研究対象を社会が必要としている領域にフォーカスする責任があるということ。さらに教育者として言えば、世間に蔓延した自然科学への不理解を払拭するためにも、人々がより興味を持つような教育環境を提供していく責任があるでしょう。

(※Larry Overmanの博士課程の指導教官でもある)

Howard Whitlock

Howard Whitlock

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

アルベルト・シュバイツァーとご一緒してみたいですね。彼からは、どのようにしてより良い人間になれるかを学べると思います。もし架空の人物でも良いのならドン・キホーテです。ドン・キホーテとの晩餐は、周りの人々の良い所を見つける方法、そして常に自分が信じる所へ立ち向かう方法を教えてくれると思います(たとえ周りの人から私がただの風車に戦いを挑んでいると思われても)。

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

何ヶ月か前に、私の学生の反応のためにtert-ブチルリチウムを加えました。大スケールの反応で、その学生はナーバスになっていました(だから私がやろうと)。私は常々、自分でもやりたくないことを学生に無理にやらせるべきではないと感じていますので。ところがその際、私はシリンジを割ってしまいました。(tert-ブチルリチウムを扱って良かった事がありません!)それ以来、誰一人として私に助けを求めて来なくなりました。数週間前には、物理学科の共同研究者のためにSECで化合物を単離しました。学生たちは自分たちの化合物を私には滅多に触らせてくれないでしょうが、それでも共同研究者のためにならまだ時折許してくれるようです。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

初めは何か「無人島に漂着してサバイバルする方法」に沿うようなものを持って行こうと思いましたが、石を打ち合わせて火を点けたり、手作りの武器で食料確保のための狩りをしたりというセンスが自分には全くないと思います。サバイバルガイドなど持って行っても自分には不十分でしょうから、聖書を持っていくことにします。生き残るために、私に最も適した方法。それは祈りでしょう。(音楽CDは)周りに誰も居ないので、音痴でも好きなように大声で歌えますよね。Nanci Griffithの「One Fair Summer Evening」を持っていきます。それで大声で歌えば、周囲の動物たちには私が救助されたかどうかを把握する方法がすぐにわかってしまいますね。

[amazonjs asin=”B000002PID” locale=”JP” title=”One Fair Summer Evening”]

 

関連リンク

 

原文:Reactions – Mary Cloninger
※このインタビューは2007年8月24日に公開されたものです。 Nature Chemistryのブログである the scepticalchymistに許諾をいただいて翻訳し公開しています。

Avatar photo

せきとも

投稿者の記事一覧

他人のお金で海外旅行もとい留学を重ね、現在カナダの某五大湖畔で院生。かつては専ら有機化学がテーマであったが、現在は有機無機ハイブリッドのシリカ材料を扱いつつ、高分子化学に

関連記事

  1. 第48回―「周期表の歴史と哲学」Eric Scerri博士
  2. 第21回「有機化学で生命現象を理解し、生体反応を制御する」深瀬 …
  3. 第四回 分子エレクトロニクスへの展開 – AP de…
  4. 第119回―「腸内細菌叢の研究と化学プロテオミクス」Aaron …
  5. 第121回―「亜鉛勾配を検出する蛍光分子の開発」Lei Zhu教…
  6. 第82回―「金属を活用する超分子化学」Michaele Hard…
  7. 第147回―「カリックスアレーンを用いる集合体の創製」Tony …
  8. 第100回―「超分子包接による化学センシング」Yun-Bao J…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ブレデレック イミダゾール合成 Bredereck Imidazole Synthesis
  2. トーンカーブをいじって画像加工を見破ろう
  3. トヨタ、世界初「省ネオジム耐熱磁石」開発
  4. 韮崎大村美術館が27日オープン 女性作家中心に90点展示
  5. 秋の褒章2013-化学
  6. 溶液中での安定性と反応性を両立した金ナノ粒子触媒の開発
  7. 知られざる有機合成のレアテク集
  8. ベン・シェンBen Shen
  9. 和製マスコミの科学報道へ不平不満が絶えないのはなぜか
  10. 食中毒と衛生管理の重要性ーChemical Times特集より

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年6月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

【四国化成ホールディングス】新卒採用情報(2026卒)

◆求める人財像:『使命感にあふれ、自ら考え挑戦する人財』私たちが社員に求めるのは、「独創力」…

マイクロ波に少しでもご興味のある方へ まるっとマイクロ波セミナー 〜マイクロ波技術の基本からできることまで〜

プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーとして注目されている、電子レンジでおなじみの”マイクロ…

世界の技術進歩を支える四国化成の「独創力」

「独創力」を体現する四国化成の研究開発四国化成の開発部隊は、長年蓄積してきた有機…

四国化成ってどんな会社?

私たち四国化成ホールディングス株式会社は、企業理念「独創力」を掲げ、「有機合成技術」…

アザボリンはニ度異性化するっ!

1,2-アザボリンの光異性化により、ホウ素・窒素原子を含むベンズバレンの合成が達成された。本異性化は…

マティアス・クリストマン Mathias Christmann

マティアス・クリストマン(Mathias Christmann, 1972年10…

ケムステイブニングミキサー2025に参加しよう!

化学の研究者が1年に一度、一斉に集まる日本化学会春季年会。第105回となる今年は、3月26日(水…

有機合成化学協会誌2025年1月号:完全キャップ化メッセンジャーRNA・COVID-19経口治療薬・発光機能分子・感圧化学センサー・キュバンScaffold Editing

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年1月号がオンライン公開されています。…

配位子が酸化??触媒サイクルに参加!!

C(sp3)–Hヒドロキシ化に効果的に働く、ヘテロレプティックなルテニウム(II)触媒が報告された。…

精密質量計算の盲点:不正確なデータ提出を防ぐために

ご存じの通り、近年では化学の世界でもデータ駆動アプローチが重要視されています。高精度質量分析(HRM…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP