[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第26回 有機化学(どうぐばこ)から飛び出す超分子(アプリケーション) – Sankaran Thayumanavan教授

[スポンサーリンク]

第26回はマサチューセッツ大学アマースト校化学科のSankaran Thayumanavan教授です。Thayumanavan教授は、マテリアルサイエンスやバイオロジーへの応用に根ざした超分子化合物のデザインと合成をテーマとされています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

まだインドにいて高校生だった頃、私は物理学者になりたかったんですよ。物理学は論理的だ、と思っていたからです。しかし定期試験の物理の点数はそこまで良くなく、一方化学はとても良い得点が取れていました。そういうわけで、カレッジ時代に私を最も惹きつけた学科は化学科となりました。全くとまどいはありませんでした、まだ物理化学へ進む可能性も有りましたから。ところが後に化学を学んでいく中で、当然、有機化学を受講しなければなりません。そこに素晴らしい有機の先生が何人かいまして、結果的にその科目と恋に落ちてしまいました。同時に気がついた事がありました。それは、この有機化学という分野は人々の生活にとても大きなインパクトを与える分野であるということです。そして、人生を通じて有機化学を探求していこうと決めました。

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

ビジネスコンサルタントです。職探しで面接をたくさん受けていた頃、友人の一人にカルテック(カリフォルニア工科大学)へ連れて行かれまして、コンサルティング会社のプレゼンテーションを見る機会がありました。この友人はコンサルへアプライするように私を説得してきたのですが、当の私は株だとか債権だとかいうものがどのように機能するのかすらよく知らなかったのですよ(今も!)。それでも面接を幾つか受けていく中で、それらの課題がとても面白いものだと思うようになりました。結局は長く続けることを考えたら私には向かないだろうと思い、辞めてしまいましたが。

Unknown

 

 

 

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

真に世の中が解決を求めている問題は何か、それを選ぶのは世間に任せます。現行のシステムは、我々を論文の投稿に取り憑かれさせてしまっていますね。これは残念なことです。

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

Abdul Kalam

Abdul Kalam

Abdul Kalam、インドの元大統領です。彼の在任中にインドを訪れた時、彼こそが近代のインドでは最も影響力のある大統領だと感じました。人間が作りがちな様々なバリアを、彼は上手く飛び越えていく人だったと思います。ヒンズー教(が多くを占める)国において科学者にしてイスラム教徒の男が一人、彼は皆の心を射止めました。ほとんどの国は、彼にインドの大統領であり続けて欲しかったのではないでしょうか。彼は教壇に立ちたいと述べ、その職から後悔することなく去ってしまいました。

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

5年前!デンドリマーを合成するための単純なアルキル化をやりました。単離は自分ではやらず、このテーマを扱っていたポスドクに任せてしまいました。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

(本は)ArdhaShastra、インドの有名な一冊です(※日本語題:実理論)。一度も読んだことはないのですが、いつも読みたいとは思っていました!CDにはmp3を詰め込めるだけ詰め込みたいですね。私の母国語、タミル語のクラシックソングをたくさん。

原文:Reactions – S. Thayumanavan
※このインタビューは2007年8月17日に公開されたものです。

Avatar photo

せきとも

投稿者の記事一覧

他人のお金で海外旅行もとい留学を重ね、現在カナダの某五大湖畔で院生。かつては専ら有機化学がテーマであったが、現在は有機無機ハイブリッドのシリカ材料を扱いつつ、高分子化学に

関連記事

  1. 第172回―「小分子変換を指向した固体触媒化学およびナノ材料化学…
  2. 第123回―「遺伝暗号を拡張して新しいタンパク質を作る」Nick…
  3. 第171回―「超分子・機能性ナノ粒子で実現するセラノスティクス」…
  4. インタビューリンクー住化廣瀬社長、旭化成藤原社長
  5. 第12回 金属錯体から始まる化学ー伊藤肇教授
  6. 第63回―「生物のコミュニケーションを司る天然物化学」矢島 新 …
  7. 第47回「目指すは究極の“物質使い”」前田和彦 准教授
  8. 第25回 溶媒の要らない固体中の化学変換 – Len…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 有機合成化学協会誌2022年1月号:無保護ケチミン・高周期典型金属・フラビン触媒・機能性ペプチド・人工核酸・脂質様材料
  2. 世界の一流は「雑談」で何を話しているのか
  3. 重水素 (Deuterium)
  4. パーフルオロ系界面活性剤のはなし 追加トピック
  5. オキサリプラチン /oxaliplatin
  6. 計算化学:基底関数って何?
  7. 福井鉄道と大研化学工業、11月に電池使い車両運行実験
  8. アブノーマルNHC
  9. 高選択的な不斉触媒系を機械学習と「投票」で予測する
  10. 林松 Song Lin

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年8月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

モータータンパク質に匹敵する性能の人工分子モーターをつくる

第640回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所・総合研究大学院大学(飯野グループ)原島崇徳さん…

マーフィー試薬 Marfey reagent

概要Marfey試薬(1-フルオロ-2,4-ジニトロフェニル-5-L-アラニンアミド、略称:FD…

UC Berkeley と Baker Hughes が提携して脱炭素材料研究所を設立

ポイント 今回新たに設立される研究所 Baker Hughes Institute for…

メトキシ基で転位をコントロール!Niduterpenoid Bの全合成

ナザロフ環化に続く二度の環拡大というカスケード反応により、多環式複雑天然物niduterpenoid…

金属酸化物ナノ粒子触媒の「水の酸化反応に対する駆動力」の実験的観測

第639回のスポットライトリサーチは、東京科学大学理学院化学系(前田研究室)の岡崎 めぐみ 助教にお…

【無料ウェビナー】粒子分散の最前線~評価法から処理技術まで徹底解説~(三洋貿易株式会社)

1.ウェビナー概要2025年2月26日から28日までの3日間にわたり開催される三…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー