[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第16回 結晶から結晶への化学変換 – Miguel Garcia-Garibay

[スポンサーリンク]

少し間があきましたが、第16回目はカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)化学/生化学科教授のミゲル・ガルシア−ガリベイ教授です。ガルシア−ガリベイ教授は無溶媒系での立体選択的反応、および分子結晶マシンのご研究をされています。

Q. あなたが化学者になった理由は?

私はメキシコに居た当時、薬学/生物学専攻の学生でした。ある土曜日の朝、私は天然物化学を専攻していた友人に仕事を手伝ってくれないかと頼まれました。マニュアルを読み、友人の手を借りながら、私は水蒸気蒸留の器具を組立て実際にモノをフラクションに分け、友人が何か他の事をやっている間にそれをTLCで観察していました。これらすべての操作が私にはとても魅力的で楽しい物に感じられ、当日は午後から別の予定があったこともすっかり忘れて気がつけば夜になっていました。結局10時間ほど経っていたわけですが、大変充実した時間でしたね。その晩、気づいたのです。化学は全くworkっぽくないな、と。(…workは大嫌い)

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

考古学者でしょうね。穴を掘り、整理し、パズルを解いていく。私は歴史が好きなのです。

 

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

世の中には化学者が解くべき問題や挑戦すべき課題が実に多くあります。それに対し、化学界にはより多くの才能や援助が必要です。化学者たちがその知識を広く一般に広めることをもっと重要視しなければ、逆に社会から大きな投資や援助を貰い受けることなど期待できるはずもありません。人は自分が理解できないものに投資などしないのですから。日々の化学を楽しむことに付け加えて、これだけ世間が化学のあらゆる面から離れてしまっていることに我々は責任を感じるべきですし、そこで何かをするべきだと思います。

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

レオナルド・ダ・ヴィンチ。彼はおそらく、有史以来最も才能あふれた人間でしょう。

Leonardo da Vinci

Leonardo da Vinci

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

6年ほど前のこと、私たちのグループが分子結晶マシンの研究を始めた頃のことです。当時、このプロジェクトはとてもリスキーに思えたので、初めの実験は全て私が自分でやることにしていました。結局、何名かの学生がそれを引き継ぎ成功させたわけですが、実は未だに極低温下での発光スペクトル測定は私がやっています。私たちのグループでは15年モノの古い機器を扱っていて(それでもまだ良く動きますが)私はその機器し数少ないエキスパートの一人なのです。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

何度も読み返しに耐えうる本と言えば、詩集しかないでしょう。パブロ・ネルーダフェデリコ・ガルシーア・ロルカが好きです。CDなら中国語会話コースのものでも持って行きたいですね。皮肉なことに、私はスペイン語、英語、そして中国語という世界で最も多くの人口をカバーし得る言語を話せるのに、私の周りでは誰も中国語を話しません。中国語を勉強することは楽しいですし、良い暇つぶしになるでしょう。

[amazonjs asin=”4622011255″ locale=”JP” title=”ロルカ詩集”][amazonjs asin=”4783725136″ locale=”JP” title=”ネルーダ詩集 (海外詩文庫)”] 原文:Reactions – Miguel Garcia-Garibay

※このインタビューは2007年6月8日に公開されたものです。

Avatar photo

せきとも

投稿者の記事一覧

他人のお金で海外旅行もとい留学を重ね、現在カナダの某五大湖畔で院生。かつては専ら有機化学がテーマであったが、現在は有機無機ハイブリッドのシリカ材料を扱いつつ、高分子化学に

関連記事

  1. 第167回―「バイオ原料の活用を目指した重合法の開発」John …
  2. 第117回―「感染症治療を志向したケミカルバイオロジー研究」Er…
  3. 第九回 タンパク質に新たな付加価値を-Tom Muir教授
  4. 第115回―「分子機械と天然物の化学合成」Ross Kelly教…
  5. 第123回―「遺伝暗号を拡張して新しいタンパク質を作る」Nick…
  6. 第20回「転んだ方がベストと思える人生を」ー藤田 誠教授
  7. 第53回「すべての化学・工学データを知識に変える」金子弘昌准教授…
  8. 第142回―「『理想の有機合成』を目指した反応開発と合成研究」山…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 機能を持たせた紙製チップで化学テロに備える ―簡単な操作でサリンやVXを検知できる紙製デバイスの開発―
  2. 富山化学 新規メカニズムの抗インフルエンザ薬を承認申請
  3. 長井長義 Nagayoshi Nagai
  4. 量子の力で生体分析!?シングレット・フィッションを用いたNMR感度の増大
  5. 300分の1を狙い撃つ~カチオン性ロジウム触媒による高選択的[2+2+2]付加環化反応の開発
  6. 第67回―「特異な構造・結合を示すランタニド/アクチニド錯体の合成」Polly Arnold教授
  7. ラスカー賞に遠藤章・東京農工大特別栄誉教授
  8. 荷電π電子系の近接積層に起因した電子・光物性の制御
  9. 生物指向型合成 Biology-Oriented Synthesis
  10. ノーベル賞への近道?ー研究室におけるナレッジマネジメントー

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年4月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー