第11回目はケンタッキー大学化学科のJohn Anthony教授です。Anthony教授はディスプレイや太陽電池への応用を目指した高機能有機半導体のデザインから合成、そして実際に組み立てた機器を用いての応用研究にまで取り組んでいます。
Q. あなたが化学者になった理由は?
私はいつだって物を組み立てる作業に楽しみを感じています。そして、どのようにしたらその物が持つ特性を改良できるのか、あるいは複数の機能を上手く組み合わせられるのかをずっと考え続けているのです。扱うサイズがとても小さいという事を除けば、合成化学とはつまるところ「物を組み立てること」に他なりません。有機エレクトロニクスという分野はピコスケール(1pm=1.0 × 10-12m)の分子の組み立てと、マクロスケールのデバイス(電子機器)の組み立て、このどちらの楽しさも満喫できる実に素晴らしい分野です。初めにターゲットとなる分子を決定し、それを合成した後にデバイスを用いた実験をする、数週間に及ぶ一連の仕事へとアイデアを現実化していくプロセスには毎回興奮を覚えます。
Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?
それでもやはり、何物かをデザインしたり組み立てたりする職業を選んだでしょうね。私は根っからの職人なのです。すぐに思い浮かぶものなら建築家、大工、家具のデザイナーやそれを組み立てる職人。自信の手で何か美しく新しく便利な物を作れる職業であればどんなものでも良いです。
Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?
ざっと見渡したところでは、化学者とは己の知的好奇心の寄るところを貪欲に探求することで貢献するものに思えます。分子の挙動を理解するという基礎的なものから、製薬や機能性材料への応用を目指した化合物の合成まで、化学とはいつも幅広い研究の中心にあります。しかし私自信は、次の世代を育てることに重きを置くべきであると考えています。多くの優秀な学生たちと共に働けることは私にとっては大きな喜びです。そして本人らの熱意と好奇心こそが彼らを優秀な化学者として成長させていくのだと確信しています。
Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?
ぜひともアリエノール・ダキテーヌ(※訳者注:1122~1204。フランス王妃となり離婚後、イングランド王妃となる。ヨーロッパの祖母と呼ばれる人物。)とお話してみたいですね。私は常々イングランドの黎明期の歴史に魅力を感じているので。近代ヨーロッパの発展において、彼女は当時の人物としては欠かせない働きをした人物です。
Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?
先週、ヨードチオフェン化合物にペルフルオロアルキル鎖を付けるためのウルマン・カップリングをやりました。なかなか研究室で時間を使うことができないのですが、単純に学生たちとの信頼感を保つために、数週間に一度は反応を仕込むようにしています。
Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。
音楽となると、これは難題ですね。私の音楽の趣味はその時々にしていることによってずいぶん変わるので。例えば書物をしている時であれば、カラヤンが振っているベートベンの第四と第七をよく聞きます。研究室では、最近iPodに入れたToolのUndertowをよく聞いています。採点をする時なら、ブルースですね。Tom WaitsのReal Goneなど。それでもあえてアルバムを一枚選ぶなら、ピンクフロイドのWish You Were Hereです。本だったら、トールキンの本を。5年生のころから彼の本が大好きで、エンターテイメントとしてのみならず、文学の創造性を示す素晴らしい資料として学術的にも価値あるものと思います。
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原文:Reactions – John Anthony
※このインタビューは2007年5月4日に公開されたものです。