[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第六回 多孔質材料とナノサイエンス Mike Zaworotko教授

[スポンサーリンク]

第6回目は南フロリダ大学化学科長、Mike Zaworotko教授へのインタビューです。
Zaworotko教授は結晶工学、機能性固体のデザインおよび応用に取り組んでいます。特に、多孔性材料と薬学的材料のデザインには力を入れています。

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

文法の学校では、化学はいつも私の大好きな科目でした(常に得意だった、というわけではありませんでしたが)。 おそらくは、日常生活での実用的な化学の応用が、形あるものになっているためでしょう。 化学によってもたらされる機会と挑戦、そして基礎研究が実際にどう関連付けられ、迅速な応用へと導かれていくか―私は、そういったことに今日まで魅力とやる気を感じ続けています。

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

私はいまでは、化学の教授以外になる以外を想像することができません。 親や同業者の圧力を受けて、教育・産業・医療へとやむなく取り組んでいた―そういう時が私にもありました。 考えてみるに、こういったキャリアは、私にとって良いものではなかったのでしょう。 しかし、人生の分岐点があったとするならば、それは10代の頃だったのでしょう。 文法学校での私のもっとも得意としていた科目は地理だったからです。 皮肉なことですが、化学に向かう分岐点を選び取ったとき、それまで想像してきたよりもずっと沢山の世界に出会う結果となりました。 私は世界各地を多数訪問してきましたが、ある意味でそれは、人間の化学研究について未熟たり続けることでもあったのです。

 

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

環境・エネルギー・人間の健康といった、我々が直面している地球規模の課題を解決する上で、化学は主要な役割を果たすことができます。 この意味でより良いやり方が一つあるとすれば、それは個人よりもチームとして働くことだ、というのが私の意見です。 個々の化学者、もしくは単一の化学グループにとって、壮大な課題とは、あまりにも大規模で複雑で解決できない、そしてそういう気をなくさせるものなのです。

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

非常に難しい質問です。歴史的にはおそらく、レオナルド・ダ・ヴィンチでしょうか。 芸術と科学、さらには、今日の文化に彼が与えてきた、また今も与え続ける影響は計り知れません。 存命で最も尊敬している人物は、ネルソン・マンデラですね。

Nelson Rolihlahla Mandela

Nelson Rolihlahla Mandela

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

昨日です。私は結晶成長の実験をいまだに好んでやっています。結晶構造を解く興奮は、失われることがありません。月に2~3は実験していますね。 結晶を作る前に結晶形を予測できる方法を、我々が今までに発見していたならば、その興奮は色褪せたものになっていたかもしれません。 しかし我々は未だにそれを達成できないでいます。X線結晶学には100年以上にわたる歴史があるにもかかわらず。 とはいえ私は、毎日を実験室で過ごすことはしません。それが学生のためでもあります。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

私が選ぶ本はThe Foundation Trilogyです。 音楽についてですが、私はトラック毎に(合法的に)ダウンロードしているので、何年もの間、店でCDは購入していません。 60-90年代の音楽をミックスした20トラック(ビートルズ、モータウン、U2、キャットスティーブンス、イーグルス、ストーンズ、そして多分、ダークサイドオブザムーンから1,2トラック)、それを聴けるお手製のCDを選びたい。

[amazonjs asin=”0345312058″ locale=”JP” title=”The Foundation Trilogy”]

 
原文:Reactions – Mike Zaworotko
※このインタビューは2007年5月30日に公開されたものです。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第150回―「触媒反応機構を解明する計算化学」Jeremy Ha…
  2. 第106回―「分子の反応動力学を研究する」Xueming Yan…
  3. 第34回 生物学と合成化学のハイブリッド高分子材料を開発する―J…
  4. 第29回 適応システムの創製を目指したペプチドナノ化学 ― R…
  5. 第102回―「有機薄膜エレクトロニクスと太陽電池の研究」Lynn…
  6. 第57回「製薬会社でVTuber担当?化学者の意外な転身」前川 …
  7. 第58回―「集積構造体を生み出すポリマー合成」Barney Gr…
  8. 第138回―「不斉反応の速度論研究からホモキラリティの起源に挑む…

注目情報

ピックアップ記事

  1. Pure science
  2. 「タキソールのTwo phase synthesis」ースクリプス研究所Baran研より
  3. 特定の場所の遺伝子を活性化できる新しい分子の開発
  4. 大量合成も可能なシビれる1,2-ジアミン合成法
  5. 【ケムステSlackに訊いてみた②】化学者に数学は必要なのか?
  6. 第173回―「新たな蛍光色素が実現する生細胞イメージングと治療法」Marina Kuimova准教授
  7. 有機化学美術館へようこそ ~分子の世界の造形とドラマ
  8. ジョージ・オラー George Andrew Olah
  9. 化学企業のグローバル・トップ50
  10. マテリアルズ・インフォマティクスの推進成功事例 -なぜあの企業は最短でMI推進を成功させたのか?-

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年10月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP