第68回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り拓く次世代型材料機能」の講演者の一人、長岡技術科学大学の多賀谷 基博(たがや もとひろ)准教授にお願いしました。
多賀谷先生は、ナノバイオセラミックの合成研究をされています。科学技術で社会問題に立ち向かいたいという姿勢が胸を打つインタビューをいただけました。
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それではインタビューをどうぞご覧ください!
Q. あなたが化学者になった理由は?
大学学部生の頃、ナノ材料化学の分野で活躍されている先生のご講演を拝聴したことが、私の研究の原点かもしれません。そのご講演では、明確な目的を持ちながらも偶然の発見を大切にし、新しい物質、現象、方法論を生み出す姿勢が紹介されており、魅了されました。この経験を通じて、自分自身や日本の将来について改めて考え、人々の役に立つ材料の可能性を深く考えるきっかけとなりました。その後、自らが日本の新しい研究分野を切り拓くことを目標に、バイオセラミックス、ナノバイオ界面、バイオエレクトロニクスといった分野に意識を向け、それらを習得し融合させる努力を続けてきました。この道のりが、私の現在の研究の基盤を形成したと感じています。
Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?
色々な選択肢を考えることはありましたが、研究者以外の道は想定していませんでした。ただし、多趣味であることもあり(テニス、ランニング、格闘技、釣り、DJ、筋トレ、宇宙、など)、定年退職後にはエンターテインメントとスポーツジムを融合した事業に挑戦してみたいという思いがあります。
Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?
私は、表面・界面現象を重視し、無機/有機ハイブリッド化学、無機材料化学、生体材料工学という3つの分野を融合させながら、ナノバイオセラミックの合成に取り組んでいます。特に、生体に優しい穏やかな条件下でこれらのナノバイオセラミックを合成し、その高次構造を精密に制御することを目指しています。また、表面や界面の計測を通じて、細胞や生体組織に「優しく、かつ積極的に」作用する新しい機能を探索しています。
私の目標は、ナノバイオ材料分野における革新を起こし、それを基点として日本が直面する少子高齢化という社会課題の解決に貢献することです。バイオ・医療技術を通じて、より良い未来の実現に向けた取り組みを進めたいと考えています。また、日本には企業、学界、産業界、官庁が協力し合うことで技術革新を促進できる大きなポテンシャルがあると確信しています。
将来的には、バイオエレクトロニクス分野への展開も視野に入れています。特に、バイオセラミックスと細胞の相互作用においては、両者の本質的なコミュニケーションが重要だと考えており、その信号伝達をうまく制御して動的な機能を引き出す研究に取り組みたいと考えています。例えば、リン酸カルシウムクラスターの量子論的な振る舞いに興味を持っており、この研究は脳科学への応用の可能性を含めて、さらなる発展が期待できる分野です。
毎日さまざまなアイデアが浮かび、時間が足りないと感じるほどですが、これからもバイオセラミックスやその応用に関する教育と研究に全力を注ぎ、バイオ・医療産業の発展に貢献していきたいと考えています。
Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?
真実を探求する中で、自分自身の歴史に対する見方や切り口が日々変化しているため、特定の人物を挙げるのは控えたいと思います。歴代の総理大臣と本音で語り合ってみたいという気持ちは少しあります。
Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?
2023年の秋ごろに学生と一緒にAFMに関しての実験を行った記憶がありますが、これまで多忙であったため、実験らしい実験がなかなかできておりません。
Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。
想像し難いですが…クラッシック音楽でしょうか。それに乗せて自分の人生を回想しながら活動するようなイメージでしょうか。
Q.次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。
インタビューをお願いしたい方は多岐にわたるため、特定は難しいのですが、あえて挙げるとすれば、アメリカの大学でご活躍されているアジア系の先生方です。競争の激しい任期付きポジションにおいて、アジア人が研究費を獲得し活躍していく過程について、ぜひお話を伺ってみたいとは思います。