第65回目の研究者インタビューです! 今回は第44回ケムステVシンポ「未来を切り拓く半導体材料科学の最前線」の講演者の一人、熊本大学の渡邉 智(わたなべ さとし) 助教にお願いしました。
渡邉先生の魅力が溢れるインタビューです。Vシンポは2024年2月1日に開催されます。是非ご登録ご検討ください! 登録ページに直接飛びたい方は こちらの登録ページリンク にどうぞ!
それではインタビューをどうぞご覧ください!
Q. あなたが化学者になった理由は?
きっかけは高校生のときの両親の助言で理系に進学したことです。当初は、歴史が好きで文系進学を考えていましたが、「将来を考えると理系が嫌いじゃなければ理系進学も考えてみれば?」と。化学は成績が良かったから選びました。博士課程への進学は高校ときの塾講師が博士課程の大学院生で「人とはモノを見る視点が違って凄いな」と憧れたからです。最終的には、大学の卒業研究が面白かったから進学を決意しました。
Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?
中学や高校の先生です。高校生のときに競技かるたの部活動にのめり込んでいて、高校の先生をしながら部活をするという将来像を描いていました。大学で教職を取るのが難しかったのでその道は断念しました。しかし、大学で大学生と接していると、やはり大学以前の高等教育の重要性を痛感させられますので、いまだに心のどこかに中学や高校教師への道も夢想します。
Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?
化学と機械工学を融合したソフトマイクロシステムの構築に関する研究をしています。有機化学が好きで研究分野を選びましたが、有機材料は無機材料に勝てないという忸怩たる思いをさせられることがあります。一方で、生物を超えるような人口知能やロボットを我々人類はまだ作り出すことができていないのも事実です。エレクトロニクス、フォトニクス、メカニクスといった応用物理や機械工学分野に携わってきた経験を活かして、「柔らかい」人工知能やロボットを作り出し、「有機材料」の革新的な工学技術を生み出したいと考えています。
Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?
自然科学分野なら「朝永振一郎」先生です。20代後半に自然科学の根本が分からなく悩んでいたときに氏の著書「物理学とは何だろうか」に出会って衝撃を受けました。それはケプラー以降「自然科学は観測事実に基づく学問体系」へと転換したというくだりです。たとえ理論が分からなくても観測事実に立ち返れば良いというのは私の中で大きな発見でした。物理学の研究力と教育力の極みに立った日本人の空気をその場で感じたいと思ったからです。そのほか教育分野では、モンテッソーリ教育のマリア・モンテッソーリ先生と窓際のトットちゃんで有名な小林宗作先生とお会いして初等教育観を伺いたいです。
[amazonjs asin=”B081F4P6F1″ locale=”JP” title=”物理学とは何だろうか 上 (岩波新書)”]Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?
2019年3月の東ミシガン大学のJohn Texter先生のところに留学したときです。イオン液体高分子の合成と物性評価を行いました。自分で一から実験する機会が減っていたのでとても楽しかったです。論文や予算申請、流行り等を全て忘れて、自分の好奇心の赴くままに研究計画して、それを実験で実証するというプロセスをとことんやりたい。
Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。
仰木日向さん著のライトノベル「作曲少女~平凡な私が14日間で曲を作れるようになった話~」です。元々音楽が得意ではないので、いつかは音楽を紡ぎだせるようになれたら楽しそうだなと思っています。自分や自然を音で表現しながら無人島生活でサバイバルしようかと。
[amazonjs asin=”B06XD4SCW3″ locale=”JP” title=”作曲少女~平凡な私が14日間で曲を作れるようになった話~”]Q.次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。
有機結晶や高分子化学の専門家の高知工科大学の林正太郎先生を推薦します。縁あって共同研究をしていますが、研究以外の話も色々と造詣が深くて面白い先生です。
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*本インタビューは2024年1月に行われたものです