[スポンサーリンク]

日本人化学者インタビュー

第61回「セラミックス粉体の合成から評価解析に至るまでのハイスループット化を目指す」藤本 憲次郎 教授

[スポンサーリンク]

第61回目の研究者インタビューです! 今回は第39回ケムステVシンポ「AIが拓く材料科学の最前線」の講演者の一人、東京理科大学の藤本 憲次郎(ふじもと けんじろう) 教授にお願いしました。

藤本先生のお人柄を感じられるインタビューです。8月8日に開催されるVシンポも是非ご登録ご検討ください! 登録ページに直接飛びたい方は こちらの登録ページリンク にどうぞ!

それではインタビューをどうぞご覧ください!

Q. あなたが化学者になった理由は?

何かを目指した明確な理由はありません。大学院生のときに黙々と研究に取り組むなか、時間や利益に制約されない地道な研究にチャレンジしたかった気持ちが結果的に今に至っています。その考えを育ててもらったのが、卒業研究から博士後期課程まで受け入れていただいた科学技術庁無機材質研究所(現在の国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS))の渡辺遵総合研究官(後にNIMS理事・監事)、佐々木高義主任研究官(現在はNIMSフェロー・理事長特別参与)らグループメンバーの日々の研究に向かい合う姿と研究の合間での何気ない会話だったのかもしれません。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

今の自分を化学者と言っていいのかという不安もあります。非常に難しい質問です。学生やポスドクのときは漠然と企業での研究開発職を目指して就職活動をしていました。「もし化学者でなかったら」ではなく「もしも明日から化学者でなくなるなら」という問いかけであれば、今まで国際会議出張や長期留学では限られた国・地域にしか滞在経験がありませんが、あらゆる国の文化・風習を調査してみたいという思いがあります。また、(現実的には無理かもしれませんが)研究室を巣立った多くの卒業生をみて、企業での人事採用・育成に関わってみたいとも思っています。

Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?

正極材を中心とした電池材料、熱電変換材料、窒素酸化物選択還元触媒、ガスセンサ、蛍光体などの機能性酸化物の作製と評価を進めています。層状酸化物のゲスト層のイオン交換などによりホスト層を剥離させて得られる酸化物ナノシートの機能化についても調査しています。また、液相プロセスをベースとしたセラミックス粉体のためのコンビナトリアル技術の開発にも長年取り組んでおり、これは近年のインフォマティクス研究に貢献できるのではと期待しています。セラミックスから少し脱線していますが、近年では形状記憶合金の作製にも取り組んでいます。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

(化学の範疇から抜け出した回答にはなっていませんが)1984年にノーベル化学賞を受賞されたRobert Bruce Merrifield博士にコンビナトリアル化学のベースとなる方法を思い立った理由(本音)を聞きたいと思います。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

現在進行形ですが、前述のコンビナトリアル技術の流れのなかで得られる膨大なライブラリー(試料群)に対して効率的に放射光X線実験そして解析を行うためのハードおよびソフトウェアの開発を進めています。計測インフォマティクスに関わる範囲かもしれません。コンビナトリアル技術による材料探索の高速化を推進するうえで、律速となる箇所をなくすことが重要であり、学内外の先生と協力して、その穴埋め作業のひとつとして進めています。やるべき穴埋め作業はほかにも残されていますが、自身の研究において多成分・多水準の膨大な材料データセットを誰もが簡単に短期間で構築できる流れを提案したいと思っています。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

基本的に何も要らないというのが私の回答です。波音と虫の音だけでいいと言ったら格好つけすぎでしょうか。

Q.次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

Claude LECOMTE先生・Massimo NESPOLO先生(フランス・ロレーヌ大学)

現在の勤務先より留学の機会を得てお世話になった先生方です。結晶学分野を牽引されています。後者のMassimo NESPOLO先生は教育活動も活発で、日本語も流暢なことから毎年KEKで日本結晶学会が主催する対称性・群論トレーニングコースの講師としてもご活躍されています。結晶学分野の奥深さを教えてくれると思います。

関連リンク

spectol21

投稿者の記事一覧

ニューヨークでポスドクやってました。今は旧帝大JKJ。専門は超高速レーザー分光で、分子集合体の電子ダイナミクスや、有機固体と無機固体の境界、化学反応の実時間観測に特に興味を持っています。

関連記事

  1. 第37回「トリプレットでないと達成できない機能を目指して」楊井 …
  2. 第69回―「炭素蒸気に存在する化学種の研究」Harold Kro…
  3. 第57回―「アニオン認識の超分子化学」Phil Gale教授
  4. 第153回―「ネットワーク無機材料の結晶学」Micheal O&…
  5. 第97回―「イメージング・センシングに応用可能な炭素材料の開発」…
  6. 第75回―「分子素子を網状につなげる化学」Omar Yaghi教…
  7. 第17回 音楽好き化学学生が選んだ道… Joshua…
  8. 第12回 DNAから人工ナノ構造体を作るーNed Seeman教…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 【ジーシー】新たな治療価値を創造するテクノロジー -BioUnion-
  2. 周期表の形はこれでいいのか? –その 2: s ブロックの位置 編–
  3. 知られざる有機合成のレアテク集
  4. 美しい化学構造式を書きたい方に
  5. イナミドを縮合剤とする新規アミド形成法
  6. バイオマス燃料・化学品の合成と触媒の技術動向【終了】
  7. DeuNet (重水素化ネットワーク)
  8. コランヌレン : Corannulene
  9. ネイティブ・ケミカル・ライゲーション Native Chemical Ligation (NCL)
  10. 光触媒ラジカルカスケードが実現する網羅的天然物合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2023年8月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

ブテンを原料に天然物のコードを紡ぐ ―新触媒が拓く医薬リード分子の迅速プログラム合成―

第 687回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 有機合成化学教室 (金井…

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP