第61回目の研究者インタビューです! 今回は第39回ケムステVシンポ「AIが拓く材料科学の最前線」の講演者の一人、東京理科大学の藤本 憲次郎(ふじもと けんじろう) 教授にお願いしました。
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それではインタビューをどうぞご覧ください!
Q. あなたが化学者になった理由は?
何かを目指した明確な理由はありません。大学院生のときに黙々と研究に取り組むなか、時間や利益に制約されない地道な研究にチャレンジしたかった気持ちが結果的に今に至っています。その考えを育ててもらったのが、卒業研究から博士後期課程まで受け入れていただいた科学技術庁無機材質研究所(現在の国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS))の渡辺遵総合研究官(後にNIMS理事・監事)、佐々木高義主任研究官(現在はNIMSフェロー・理事長特別参与)らグループメンバーの日々の研究に向かい合う姿と研究の合間での何気ない会話だったのかもしれません。
Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?
今の自分を化学者と言っていいのかという不安もあります。非常に難しい質問です。学生やポスドクのときは漠然と企業での研究開発職を目指して就職活動をしていました。「もし化学者でなかったら」ではなく「もしも明日から化学者でなくなるなら」という問いかけであれば、今まで国際会議出張や長期留学では限られた国・地域にしか滞在経験がありませんが、あらゆる国の文化・風習を調査してみたいという思いがあります。また、(現実的には無理かもしれませんが)研究室を巣立った多くの卒業生をみて、企業での人事採用・育成に関わってみたいとも思っています。
Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?
正極材を中心とした電池材料、熱電変換材料、窒素酸化物選択還元触媒、ガスセンサ、蛍光体などの機能性酸化物の作製と評価を進めています。層状酸化物のゲスト層のイオン交換などによりホスト層を剥離させて得られる酸化物ナノシートの機能化についても調査しています。また、液相プロセスをベースとしたセラミックス粉体のためのコンビナトリアル技術の開発にも長年取り組んでおり、これは近年のインフォマティクス研究に貢献できるのではと期待しています。セラミックスから少し脱線していますが、近年では形状記憶合金の作製にも取り組んでいます。
Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?
(化学の範疇から抜け出した回答にはなっていませんが)1984年にノーベル化学賞を受賞されたRobert Bruce Merrifield博士にコンビナトリアル化学のベースとなる方法を思い立った理由(本音)を聞きたいと思います。
Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?
現在進行形ですが、前述のコンビナトリアル技術の流れのなかで得られる膨大なライブラリー(試料群)に対して効率的に放射光X線実験そして解析を行うためのハードおよびソフトウェアの開発を進めています。計測インフォマティクスに関わる範囲かもしれません。コンビナトリアル技術による材料探索の高速化を推進するうえで、律速となる箇所をなくすことが重要であり、学内外の先生と協力して、その穴埋め作業のひとつとして進めています。やるべき穴埋め作業はほかにも残されていますが、自身の研究において多成分・多水準の膨大な材料データセットを誰もが簡単に短期間で構築できる流れを提案したいと思っています。
Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。
基本的に何も要らないというのが私の回答です。波音と虫の音だけでいいと言ったら格好つけすぎでしょうか。
Q.次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。
Claude LECOMTE先生・Massimo NESPOLO先生(フランス・ロレーヌ大学)
現在の勤務先より留学の機会を得てお世話になった先生方です。結晶学分野を牽引されています。後者のMassimo NESPOLO先生は教育活動も活発で、日本語も流暢なことから毎年KEKで日本結晶学会が主催する対称性・群論トレーニングコースの講師としてもご活躍されています。結晶学分野の奥深さを教えてくれると思います。
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*本インタビューは2023年7月に行われたものです