第47回目の研究者インタビューです! 今回は第15回ケムステVシンポの講演者の一人、東京工業大学前田 和彦 先生にお願いしました。専門は無機合成化学で、機能性無機化合物、特に光を用いた物質変換材料について幅広く研究されています。興味がある方は詳しい紹介がデータベース記事(後程リンクを張ります)にも紹介せれていますのでご参照ください。
無限大の組み合わせから望む機能を引き出す/発見するのも化学者の役割。前田先生の研究への信念を共有いただけるインタビューで、2月5日に開催されるVシンポでお話をうかがえるのが一層楽しみになりました!
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それではインタビューをどうぞご覧ください!
Q. あなたが化学者になった理由は?
大学3年生の時に聴いた堂免一成先生(当時、東京工業大学資源化学研究所教授)の水分解光触媒に関する講演がとても面白く、今から考えるとそこで運命が決まったように思います。堂免先生には大学院の指導教員として大変お世話になりました。その上で後付けするならば、人工的に新しいモノ(物質、現象、方法論など)を創り出せるという点に心惹かれたからだと思います。
Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?
歴史家になりたいですね。先人達の歩みを明らかにすることで、自身のまわり、広くは世界を知ることに繋がる。とても楽しそうです。
Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?
水の分解や二酸化炭素の還元を実現する光触媒や光電極の研究を行っています。人工的生み出される無機固体物質、ナノ材料、分子等を設計し、それらをLEGOブロックのように組み上げる。最終的には望みの反応を達成する、というものです。
物質が意志を持って何かを主張することはありませんが、例えば性能面で不満足な光触媒物質を目の前にすると、「もっと俺をうまく使ってみせろ!お前の力はその程度か?」と言われている気になります。取り組んでいる研究テーマを通じて、究極の“物質使い”になりたいと日々思っています。延いては、同じ分野の研究者だけでなく、関連する異分野の方々にも使ってもらえるような新しい物質、方法論、概念などを生み出していきたいと考えています。
Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?
自身が歴史好きのため、ご一緒したい人物はたくさんいますが、あえて一人を挙げるなら武田信玄公でしょうか。後世にも伝わる卓越した治世、外交(軍事)政策、それらを可能とした人心掌握術を、ほうとう鍋をつつきながら聞いてみたいです。(簡単には教えてもらえないかも?)
Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?
実験ノートの記録によれば、2020年4月6日。投稿論文の仕上げの実験として、MXene類似化合物Y2CF2を使った光触媒反応を行いました。当時新型コロナウィルス感染症の影響を受け学生の研究活動が制限される中、自ら行う久々の実験となりました。実験室に学生がたくさんいる状況で教員が実験すると、学生から嫌そうな雰囲気を感じるものですが、この時は「禍転じて・・・」という格好でした。ちなみに肝心の論文は、J. Phys. Chem. C誌に無事掲載されました(https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jpcc.0c03072)。
Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。
ZARDの「負けないで」以外考えられません。
[amazonjs asin=”B082PQ73YH” locale=”JP” title=”負けないで (12cmマキシ化)”]Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。
Thomas E. Mallouk先生(ペンシルベニア大学)
私が学振PDで研究留学した際にお世話になった先生で、無機ナノ材料化学の世界的第一人者です。ちょっとした会話や研究ディスカッションにもウィットとユーモアが満ちていて、先生の発表論文にもそれがたまに現れ出ます。とても面白いインタビューになると思いますよ。
関連リンク
前田教授の略歴
2007年東京大学大学院工学系研究科博士後期課程を半年短縮して修了し、博士(工学)の学位を取得。東京大学、米国ペンシルベニア州立大学博士研究員を経て、2009年東京大学大学院工学系研究科助教に着任。2012年8月より東京工業大学准教授。この間、科学技術振興機構さきがけ研究員を兼任(2010〜2014年)。2020年よりJST-CREST(革新的反応領域)研究代表者。専門は、無機固体化学、ナノ材料、光触媒、光電気化学。エネルギー変換型光触媒・光電極の研究に一貫して取り組み、最近では水分解光触媒・光電極の研究開発に加えて、二酸化炭素固定化のための金属錯体/半導体融合光触媒に関する研究も推進している。2013年日本化学会進歩賞、2016年、文部科学大臣表彰若手科学者賞、日本学術振興会賞を受賞。2018〜2020年、Clarivate Analytics Highly Cited Researchers(化学分野)に選出。
*本インタビューは2021年1月に行われたものです