さて、今回の研究者へのインタビューは名古屋大学工学研究科の馬場嘉信教授。第7回の杉本教授、第21回の深瀬教授からのご推薦です。馬場教授の研究は最先端のナノデバイス開発。なかでも医療への応用を目指す「ナノバイオデバイス」に注目し、ナノピラーやナノファイバー、量子ドットなど様々なナノバイオデバイスを生み出しています。簡単に健康状態のチェックや診断ができるシステムの開発を究極の目標として、その第一線を走っている馬場先生。恒例になりますが、どうして化学者を目指したのか。そこから聞いていきたいと思います。それではどうぞ!
Q. あなたが化学者になった理由は?
記憶はありませんが、父曰く、私は3~4歳の頃から、将来は科学者か指揮者になると言っていたそうです。小学1年生になり、夏休みの理科の自由研究で賞をもらったことなどから、さらに科学に興味を持つようになりました。県の自由研究の発表会に出て、小学1年生でポスター発表したのをおぼろげながら覚えています。ただ、これも母に聞くと、この自由研究は当時小学校の先生だった父の手が随分(ほとんど)入っていたそうです。
大学受験時に、理学部の物理か化学で悩んだ結果、高校までの物理と化学では、化学のほうが面白そうだったので、化学の道に進みました。その後、九州大学で大橋茂先生の研究室に入り、現在の研究テーマの芽に出会いました。
Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?
前述の通り、小さいときから、科学者(化学者)でなければ、指揮者になりたかったようです。これも、私が3~4歳のときに、Bruno Walter指揮のベートーベンの運命のレコードを父が購入して、私に良く聞かせていたそうで、レコードを聴きながら指揮の真似事をしていたそうです。音楽は全く手を付けたことはありませんが、今でも、一度でいいので、オーケストラを指揮したいという気持ちがあります。
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Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?
現在、ナノバイオデバイスの研究を進めています。半導体超微細加工技術および自己組織化ナノ構造構築技術を駆使して、これまで不可能であったゲノムの超高速解析、バイオマーカーの超高感度検出、単一分子・単一細胞計測などの基礎研究の展開と、がん診断、がん治療、iPS細胞の再生医療などのバイオメディカル分野で実用化可能な技術開発を行っています。今後は、私のグループでしかなし得ない新たなナノバイオデバイスの創製とナノバイオデバイスに基づいた新たな産業分野の開拓を進めていきたいと思います。
Q. あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?
11世紀の紫式部、12世紀の平清盛、13世紀のMarco Polo、14世紀の世阿弥、15世紀のLeonardo da Vinci、16世紀の織田信長、17世紀のIsaac Newton、18世紀のWolfgang Amadeus Morzartと名古屋最古の料亭で、花見の宴を催したいと思います。これだけのメンバーが集まれば、幅広い分野のとてつもなく面白い話しができると思います。
Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?
最後に実験したのは、徳島大学で教授になって数年たった1999年頃だと思います。そのときは、疾患関連遺伝子をPCRで増幅して、マイクロチップで解析しました。
Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。
音楽であればBruno Walter指揮のシンフォニー、本であれば、何度読んでも1帖の最初で挫折する源氏物語を持って行きます。
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Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。
東大院工 片岡一則先生、東大院工 北森武彦先生、東工大 三原久和先生を推薦します。
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関連リンク
- Nagoya University, Baba Lab.
- 研究・開発サポートサイト : 第3回 – 次世代ナノバイオデバイスの創成 : 株式会社キーエンス
- Vol. 7, No. 6, 2014年12月25日発行/ナノイノベーションの最先端(第27回)名古屋大学(馬場先生) | NanotechJapan Bulletin
馬場嘉信教授の経歴
1981年九州大学理学部化学科卒業。1986年同大学院理学研究科化学専攻博士課程修了、1986年大分大学助手・講師、1990年神戸薬科大学講師・助教授、1997年徳島大学教授を経て、2004年より名古屋大学・工学研究科教授。同大学先端ナノバイオデバイス研究センター長、同大学シンクロトロン光研究センター長、同大学未来社会創造機構教授、同大学医学系研究科協力講座教授、産業技術総合研究所健康工学研究部門研究顧問を歴任。専門は分析化学、ナノバイオサイエンス。[受賞]Merck Award(2004), 日本化学会学術賞(2008)、日本分析化学会学会賞(2015)他