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日本人化学者インタビュー

第23回「化学結合の自在切断 ・自在構築を夢見て」侯 召民 教授

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前回から1年半ぶりの研究者へのインタビュー。ウェブサイトをリニューアルしたので今後は積極的に行っていきたいと思います。さて第23回は理化学研究所の侯 召民 教授にお願いさせて頂きました。侯先生は最近ScienceやNatureに安定結合切断反応を報告されており(関連記事)、この世代の化学者のなかでもトップクラスに勢いがある研究者です。「化学結合の自在切断・自在構築を夢見て」タイトルは真に私の目標でもあるので大変共感させていただきました。ところで、ここは日本人化学者のインタビューではないのと思った方。侯先生は出身は中国であり、Chem-Station中国版オリジナルインタビューの第一弾として日本で活躍している侯先生にお忙しい中お願いさせていただきました(中国版はこちら)。中国人スタッフが中国語でインタビューをしたのですが、なんと帰ってきた返事がすべて日本語。というわけで、”日本人化学者”として、中国語版からの逆輸入で紹介させていただきます。それではインタビューをどうそ!

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

私は1961年中国山東省生まれで、小学校から高校までのほとんどの時間は、例の「文化大革命」(1966-1976年)の中で過ごしました。当時は教科書から得られた知識は役に立たないものとされ、小中学生も工場や畑などの「現場」に送り出され、「実習」ばかりをさせられました。大学はほとんど閉鎖された状態であり、当然のことながら大学入試も10年間中止されていました。そのような状況の中で、将来「化学研究」に従事することなどは夢にも思いませんでした。幸いにして高校1年の時に、文化大革命が終わり、翌年大学入試も復活されました。あまり勉強はしなかったのですが、運よく私は入試復活2年目の1978年に現役で大学に入ることができました。特に化学を意識したわけではないのですが、石油関連の仕事は福祉が良いということで、地元にある石油大学を選びました。大学3年の時、国による外国留学のための選抜試験が始まり、頑張ればそれまでは考えられなかった外国留学も夢ではなくなりました。そして卒業と同時に、国費留学生選抜試験に合格しました。しかし当時は個人には留学先選択の自由がなく、日本の九州大学を選んだのは私ではなく、中国政府でした。

 

文化大革命の一風景

文化大革命の一風景

このように、化学の世界に積極的に進んで入ったわけではないが、一旦入ってみたらなかなか面白いです。私にとっての化学研究の魅力の一つは、原子・分子レベルで化学結合の切断・形成を考え、社会に役立つものを作り出せることです。また、時には予想以上の良い結果ももたらしてくれます。

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

振り返ってみれば、私がいままで歩んできた道は、自ら積極的に進んで選んだより、多くの場合は、そのときどきの時代の流れや、「偶然」の巡り会わせによるものだったような気がします。しかし今では、化学研究が私の生活の大半を占めていると言っても過言ではありません。もし化学以外の職業を選ぶと仮定したら、旅作家になりたいな~と思います。いろんなところを旅し、その歴史、風土を体験して、人々に紹介できたらと思います。

 

 

Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?

化学結合の自在切断・自在構築を夢見て、様々な金属錯体の構造と反応性の関係を調べ、新しい触媒の開発を目指しています。現在、窒素分子の活性化と有効利用、二酸化炭素の精密有機合成への活用、機能性ポリマー材料の創製、などの研究に取り組んでいます。環境・資源・エネルギー問題の解決に少しでも寄与できたらと思っています。

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

晩餐でなくてもよいのですが、可能であればアインシュタインに会ってみたいのですね。多くの発見がserendipityによるものだと言われていますが、アインシュタインの場合は明らかに違うと思います。「時間は一定ではなく、速度によって変わる」、「光の速度は不変である」、「全ての物体は光速を超えることはできない」、など、どうやって考え付いたのか、きっと聞いてもわからないと思いますが、できればやはり直接本人に聞いてみたいのですね。

 

 

 

 

 

Albert Einstein

Albert Einstein

 

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

一人で完成させた最後の実験はポスドク時代の1993年2月ごろでした。その後自分の研究グループをもってから、しばらくポスドクや学生と一緒に実験に取り組み、主に不安定な錯体の単結晶の作成やX線結晶構造解析のお手伝いをしました。今はもっぱら口だけです。できるだけ共同研究者から実験の細かいところまで聞くように心がけています。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

ついつい現実的なことを考えちゃうのですが、やはり生きていくことが最も大事ですね。音楽を聴きたいと言っても、無人島では電源確報は難しいでしょうね。まず生きていくための食料品などを確保し、それから風の音、波の音を聞きながら、SF小説、恋愛小説などをいろいろ構想して書いてみたいな~と思います。

 

Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

南開大学Qi-Lin Zhou教授(中国)、Scripps 研究所のJin-Quan Yu教授(アメリカ)を推薦します。

 

外部リンク

 

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侯 召民教授の略歴

2014-11-11_09-00-18理化学研究所主任研究員。1961年生まれ。1982年中国石油大学石油精製学部を卒業後、来日。1986年九州大学大学院工学研究科応用化学専攻修士課程修了、1989年博士課程修了。博士(工学)。1990年に理化学研究所基礎科学特別研究員となり、翌年1991年にはカナダウィンザー大学化学科へ博士研究員として渡る。1993年には理化学研究所研究員となり、1997年に同研究所副主任研究員に昇任する。2002年に主任研究員となり現在に至る。2010年先進機能物質創製研究グループ グループディレクター, 2013年より 環境資源科学研究センター 副センター長および環境資源科学研究センター 先進機能触媒研究グループ グループディレクターも兼任。受賞歴は1996年 錯体化学会研究奨励賞、1997年 日本希土類学会奨励賞、2000年 有機合成化学協会奨励賞、2007年 第3回日本学術振興会賞、2007年 三井化学触媒科学賞、2007年 第24回日本化学会学術賞、2008年 文部科学大臣表彰 科学技術賞、2009年 日本希土類学会賞(塩川賞)、2012年 高分子学会賞など多数。

 

*本インタビューは2014年11月4日に行われたものです

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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