ニンニク、タマネギといった食べ物の刺激が強いのは、硫黄化合物が含まれているからです。日本人が好きな温泉にも、硫黄化合物が含まれています。
硫黄の基本物性データ
分類 | 非金属、カルコゲン、ミネラル |
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原子番号・原子量 | 16 (32.065) |
電子配置 | 3s23p4 |
密度 | 2070kg/m3 (α)、1957kg/m3(β) |
融点 | 112.8℃ (α)、119.0℃(β) |
沸点 | 444.674℃ |
硬度 | 2 |
色・形状 | 淡黄色・固体 |
存在度 | 地球260ppm、宇宙 5.15 x 105 |
クラーク数 | 0.06% |
発見者 | 古代から知られる |
主な同位体 | 32S(94.93%), 33S(0.76%), 34S(4.29%) |
用途例 | 硫酸(H2SO4)、ゴムの加硫剤、食物(ニンニク、タマネギなど)、医薬品 |
前後の元素 | リンー硫黄ー塩素 |
単体として、産出される元素
硫黄は世界の火山地帯に単体としても化合物としても多く存在し、紀元前から知られているため、特定の発見者はいない元素です。温泉に行けば卵の腐ったようなにおいがしますね。あれが硫黄もしくは硫黄化合物のにおいです。
硫黄には斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄などの多くの同素体が存在し、同素体の数では元素の中で一番です。これらの同素体はすぐに他の同素体に変化します。例えば、斜方硫黄は加熱すると単斜硫黄に変化し、溶かした単斜硫黄を水中に注ぐとゴム状硫黄になります。
くさい?いいにおい?硫黄化合物
タマネギやニンニク、ニラやらっきょうは独特の香りがします。これらの中には硫黄化合物が含まれています。例えばニンニクはアリインというアミノ酸が含まれています。アリインは無色、無臭の化合物ですが、ニンニクを刻んだり、傷がついたりするとアリイナーゼという酵素が活性化され、アリインをアリシンという化合物に変えます。さらにアリシンは不安定なので、次々と化学反応が起こり、ニンニク特有のくさいにおいを発生する化合物に変わります。ですから、ニンニクのにおいを抑えるためにはアリイナーゼの働きを抑えればよいわけです。蒸したり電子レンジで加熱するなどして、この酵素を不活性化すれば、抑えることができます。
ではなぜ、ニンニクを刻んだり、潰したりしなければ反応しないのでしょうか。活性化ということばを使いましたが、実はアリインと酵素であるアリイナーゼはニンニクの中で別の部分に存在していて、それらが外部から攻撃を受けることにより合わせって反応するのです。生成したアリシンには抗菌作用などがあるため、ニンニクが外敵から守る武器の一つとして利用しているわけです。
人の体に存在する硫黄
成人は、メチオニンやシステインなどのアミノ酸として、およそ140gの硫黄を体内に持っています。メチオニンは必須アミノ酸*の一つで、生体内で生理活性物質の生成や代謝に関わっており、アレルギー症状などの原因となるヒスタミンの血中濃度を下げる働きや、肝臓の機能を助ける働きがあります。
一方、システインはメチオニンから体内で合成されています。必須アミノ酸ではありませんが、肝機能を高めて解毒作用を促す、しみやそばかすの下忍のメラニンの生成を抑制するなど重要な役割を担っています。
ゴムをやわらかくする加硫剤
天然のゴムは弾性が少なく、さらに熱によって溶けてべたべたします。そのゴムに数%の硫黄を加えることで、硫黄によってゴムの分子どうしを結合させます。これを加硫といいます。加硫により、天然ゴムは弾性をもった合成ゴムとなり、ゴム製品に変わります。最も重要なゴムの利用は自動車のタイヤです。タイヤには強度をあげるための炭素と、弾性をもたせるための硫黄が必須成分として含まれています。
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