[スポンサーリンク]

元素

ベリリウム Beryllium -エメラルドの成分、宇宙望遠鏡にも利用

[スポンサーリンク]

 

 甘いものには罠がある?宝石として利用される鉱石から得ることができるベリリウムですが、それ以外の用途に関しては、一般に知られていません。

 

ベリリウムの基本物性データ

分類 レアメタル
原子番号・原子量 4 (9.012182)
電子配置 2s2
密度 1848kg/m3
融点 1282℃
沸点 2970℃
硬度 5.5
色・形状 銀白色・固体
存在度 地球 1.5ppm、宇宙0.73
クラーク数 0.0006%
発見者 ルイ=ニコラ・ヴォークラン(1798年)
主な同位体 7Be(EC, 53.12日)、9Be(100%)、10Be(β, 1.51✕106年)
用途例 ベリリウムー銅合金(Be–Cu)、X線源、高温域スピーカー、宇宙望遠鏡の反射鏡、中性子の減速材
前後の元素 リチウムベリリウムホウ素

エメラルドやアクアマリンの主成分

ベリリウムは1798年ヴォークランにより、緑柱石(Be3Al2Si6O18)の中から発見されました。緑柱石はエメラルドやアクアマリンで知られる宝石の原料です。

得られたベリリウムをなめてみたところ甘い味がしたため、「甘い」という意味のギリシャ語glukosにちなんでグルシニウム(glucinium)と名付けられました。

その後、甘い化合物は多数あることから、緑柱石のベリル(Beryl)にちなんでベリリウムとなりました。*

「甘い」金属元素であるベリリウムですが、現在では、がんの原因や肺の機能を妨げるきわめて毒性の高い金属とされています。

ちなみに、緑柱石は本来無色です。不純物の混入で緑色となったものがエメラルド、水色になったものがアクアマリンです。ベリリウムは銀白色の脆い金属で、空気中ではすぐに参加されて酸化ベリリウム(BeO)の安定した表面皮膜が形成されるため、腐食や水、弱酸などへの高い耐久性を示します。

2016-01-26_10-43-54

 

ルイ=ニコラ・ヴォークラン

2016-01-26_10-36-11

1763–1829年。フランスの化学者。パリ大学教授。ベリリウムのほかにもクロムも発見している。元素だけでなく、アスパラギン、リンゴ酸などの有機化合物の発見者としても有名。

 

*命名したのは1828年にベリリウムを単離したヴェーラー

 

中性子の減速材

原子力発電では、原子炉内の核分裂によって新しく発生した中性子を、エネルギーの弱い中性子まで減速させ、次の核分裂を起こしやすくする材料、つまり「減速材」が必要となります。

ベリリウムは原子半径が非常に小さく、散乱断面積が大きいので、軽水(H2O)、重水(D2O)、黒鉛(C)とともに原子炉の中性子減速材・反射材として用いられます。

2016-01-26_10-49-21

原子炉での核分裂と制御のしくみ(出展:コトバンク

 

宇宙望遠鏡での反射鏡

宇宙望遠鏡はその名の通り、地球からではなく宇宙から天体などを観測するための望遠鏡です。

衛生で打ち上げられるため、その鏡は激しい振動にも耐えるように硬く、軽い材料を使う必要があります。また、低温にすることで観測感度を向上させることができるため、極低温の変形に耐えうる材料である必要もあります。

ベリリウムは軽く、硬い金属であるため、代表的な宇宙望遠鏡に用いられています。

2016-01-26_10-57-50

2018年度以降に打ち上げが予定されている宇宙望遠鏡。ベリリウムを主成分とした直径約6.5mの主鏡を持つ

 

スピーカーの振動板

ベリリウムは高価なスピーカーの振動板(音波と電気信号を相互に変換するもの)にも使われていましたが、最近はめっきりみれなくなりました。一方で、最近ではイヤフォンに様変わりして高級イヤフォンの振動板として使われています(正確にいうとベリリウム銅合金の振動板)。中国のアップルと言われる小米科技(Xiaomi:シャオミ)が初めにベリリウム合金を採用したことで一時期話題になりました。価格は2000円前後とそれってほんとにベリリウム合金を使っているの?と疑問に思うところですが、なかなかよいそうです。

ベリリウム合金振動板を使った高級イヤフォンといえば、2015年8月にミックスウェーブから発売された、米Campfire Audioのカナル型イヤフォン「LYRA」(レイラ)。なんと9万円近くするまさに高級イヤフォン。どんな音がするのでしょうか?

2016-01-26_11-13-01

 

[amazonjs asin=”B018QSUO1W” locale=”JP” title=”XiaoMi イヤホン 2016年新型 高級カナルイヤホン Piston4イヤホン ハイレゾ対応 高音質 シャオミ インナーイヤホン ステレオヘッドフォン マイク付 Piston TieQuan Iron Ring In-Ear Earphone”] [amazonjs asin=”B013JN96VI” locale=”JP” title=”Campfire Audio LYRA (レイラ)”]

 

ベリリウムに関するケムステ関連記事

関連動画

  • ベリリウムについて

 

外部リンク

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4800249813″ locale=”JP” title=”美しすぎる宇宙の絶景 ハッブル宇宙望遠鏡25周年記念DVD BOOK (宝島MOOK)”]
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. ペッカ・ピューッコ Pekka Pyykkö
  2. もし新元素に命名することになったら
  3. 【予告】ケムステ新コンテンツ「元素の基本と仕組み」
  4. 炭素 Carbon -生物の基本骨格、多様な同素体
  5. 元素ネイルワークショップー元素ネイルってなに?
  6. 元素に恋して: マンガで出会う不思議なelementsの世界
  7. 祝100周年!ー同位体ー
  8. ナトリウム Sodium -食塩やベーキングパウダーに使用

注目情報

ピックアップ記事

  1. 光触媒ーパラジウム協働系によるアミンのC-Hアリル化反応
  2. 炊きたてご飯の香り成分測定成功、米化学誌に発表 福井大学と福井県農業試験場
  3. とある水銀化合物のはなし チメロサールとは
  4. ホフマン脱離 Hofmann Elimination
  5. 再転職の成功へ: 30代女性研究者が転職ミスマッチを克服した秘訣
  6. 【書評】スキルアップ有機化学 しっかり身につく基礎の基礎
  7. ヒストリオニコトキシン histrionicotoxin
  8. アルミニウム工業の黎明期の話 -Héroultと水力発電-
  9. ふにふにふわふわ☆マシュマロゲルがスゴい!?
  10. 英会話イメージリンク習得法―英会話教室に行く前に身につけておきたいネイティブ発想

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年2月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
29  

注目情報

最新記事

ヤーン·テラー効果 Jahn–Teller effects

縮退した電子状態にある非線形の分子は通常不安定で、分子の対称性を落とすことで縮退を解いた構造が安定で…

鉄、助けてっ(Fe)!アルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化

鉄とキラルなエナミンの協働触媒を用いたアルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化が開発された。可視光照…

4種のエステルが密集したテルペノイド:ユーフォルビアロイドAの世界初の全合成

第637回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院薬学系研究科・天然物合成化学教室(井上将行教授主…

そこのB2N3、不対電子いらない?

ヘテロ原子のみから成る環(完全ヘテロ原子環)のπ非局在型ラジカル種の合成が達成された。ジボラトリアゾ…

経済産業省ってどんなところ? ~製造産業局・素材産業課・革新素材室における研究開発専門職について~

我が国の化学産業を維持・発展させていくためには、様々なルール作りや投資配分を行政レベルから考え、実施…

第51回ケムステVシンポ「光化学最前線2025」を開催します!

こんにちは、Spectol21です! 年末ですが、来年2025年二発目のケムステVシンポ、その名…

ケムステV年末ライブ2024を開催します!

2024年も残り一週間を切りました! 年末といえば、そう、ケムステV年末ライブ2024!! …

世界初の金属反応剤の単離!高いE選択性を示すWeinrebアミド型Horner–Wadsworth–Emmons反応の開発

第636回のスポットライトリサーチは、東京理科大学 理学部第一部(椎名研究室)の村田貴嗣 助教と博士…

2024 CAS Future Leaders Program 参加者インタビュー ~世界中の同世代の化学者たちとかけがえのない繋がりを作りたいと思いませんか?~

CAS Future Leaders プログラムとは、アメリカ化学会 (the American C…

第50回Vシンポ「生物活性分子をデザインする潜在空間分子設計」を開催します!

第50回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!2020年コロナウイルスパンデミッ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP