時代を先取りした新材料を発信し続けるNIMS。その最新成果を一挙ご紹介する、年に一度の大イベント「NIMS WEEK」を11/17(水)、18(木)の二日間で今年も開催いたします。材料研究の新たなトレンド「量子マテリアル」のキーパーソンが集結した学術シンポジウムと、実用化間近の新材料・技術のキモを研究者自ら解説する「最新成果展示会2021」を生配信でお届け。材料進化の最前線で今何が起きているのか? カレンダーへ予定の記入をお忘れなく ! (引用:NIMS WEEK 2021)
NIMSでは、学術的な最新成果、実用化が期待される最新技術に関する成果を発表する場として、NIMS WEEKを年に一度開催しています。2019年までは、茨城県つくば市の3拠点で、ラボや実験設備の公開、個別相談、ポスター発表などが行われていましたが、2020年はコロナウィルスの影響でオンラインでの開催となりました。そして2021年もオンラインでの実施が決まり、事前登録がスタートしました。
今年のNIMS WEEKでは、11月17日にNIMS Award授賞式・学術シンポジウムが開催され、18日にNIMS最新成果講演とポスターセッションが行われるそうです。今年のNIMS Awardではグラフェンなど究極の2次元物質を利用する次世代量子デバイス開発に突破口を開く研究として安藤 恒也東京工業大学 栄誉・名誉教授 / 東京大学 名誉教授の「低次元物質の量子物性に関する理論基盤の構築」並びにAllan H. MacDonaldテキサス大学オースティン校物理学教授及びPablo Jarillo-Herreroマサチューセッツ工科大学 セシル&アイダ・グリーン物理学教授の「ツイストロニクスによる量子物理に関する先駆的研究」が受賞しました。そのため、3氏による記念講演に続いて関連する研究の招待講演・NIMS講演が行われます。講演内容を見る限り、マテリアルサイエンスの中でも物理寄りの内容を中心に各発表者が発表されるようです。
18日のポスターセッションでは、バイオ・医療、機能性材料、センサ、電子デバイス材料・磁性材料、先端計測、計算科学、データ駆動型材料開発、構造材料、電池材料、熱電材料の分野で成果の発表があります。どの内容も産業への応用が見込める内容で興味深いですが、特に気になるトピックをいくつか紹介します。
- B4:市販樹脂のナノ多孔化技術と多孔体創製
ナノ多孔質プラスチック材料は、電池のセパレーター・分離膜・医療材料といった先端素材で活用されているそうです。この発表を行う研究チームでは、市販のエンジニアリングプラスチックを素材としてナノ多孔性微粒子を作製するプロセスを研究しており、過去にはオイル成分を含んだ汚染水を低コストで浄化できる高性能オイル吸着材についての論文を発表しています。当日は、耐熱性・力学強度に優れた市販のエンジニアリングプラスチックを素材として作製したナノ多孔性微粒子などを紹介するそうです。人工的なナノ多孔質のマテリアルの場合、製造コストが気になりますが、市販のプラスチックを原料にできるのならば、ナノ多孔質を活かした素材を実用化するハードルも低いかもしれません。
- G2:電気化学自動実験によるハイスループット材料探索
データ駆動型の材料開発が盛んに研究されており、実験、分析、収集などを自動化した例は、いろいろな分野で数多く論文が発表されております。こちらの研究チームの発表では、次世代蓄電池材料開発における成果を中心に、実験自動ロボットを用いた材料探索の実施例を紹介するそうです。蓄電池材料の開発は、産業、アカデミー関係なしに熾烈な競争が繰り広げられており、スピードが重要です。そのため、自動実験に関する技術はニーズが高いと思います。ちなみに2020年12月にはこちらの研究チームよりリチウム空気電池のサイクル寿命に関するプレスリリースが発表されており、ケムステニュースでも取り上げました。
- I2:リチウム空気電池の高出力化
リチウムイオン電池よりも圧倒的に小型軽量で高容量になりうるリチウム空気電池の開発についての発表です。2020年8月にはリチウム空気電池の実用化を阻む充電電圧上昇の原因を特定した論文を発表しており、性能向上に向けた研究が続けられています。次世代の蓄電池は、一回の充電で各デバイスが使える電気エネルギーを飛躍的に増やすことができ、今よりも生活をより便利にすることができるかもしれません。そのため、どの程度まで研究が進んでいるのか気になるところです。
ポスター50件は、10時から15時までPDFが公開され、そのうち14時から15時までは、Zoomブレイクアウトルームで発表者本人と直接対話ができるそうです。また12件については各15分の講演が10時からスケジュールされています。
NIMS WEEK 2021への参加には事前の無料登録が必要です。11月9日(火)までにお申し込みいただいた先着800名には、ポスター50件掲載の「アブストラクト集」と日刊工業新聞連載コラムVol.2「材料進化の最前線2021」の特製冊子が送付されるようですので、興味のある方は早めの参加登録をお勧めします。
別のイベントとしてNIMSの国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)では11月10日から28日までWPI-MANA Virtual City of Workshopsを開催します。期間中は、様々な分野のワークショップが開催されるようですので、MANAの活動に興味のある方は、こちらへの参加してみるのも良いかもしれません。
オープンキャンパス的なイベントは、初対面でも気軽に研究チームの方と話すことができ、研究を紹介する側としてもいろいろな人から自分の研究テーマについて率直なフィードバックがもらえる貴重な場でしたが、COVID-19の影響によりこのNIMS WEEKを含めて対面のイベントはなくなってしまいました。それでも、各団体、各学会は、オンラインツールを活かして交流の場を積極的に作っています。オンラインにはオンラインのメリットもありますので、オンラインだからといって遠慮するのではなく、移動が無い分だけ興味のあるイベントに積極的に参加してみてはいかがでしょうか。話はNIMS WEEKに戻しますが、大学の研究室とは違うNIMSの研究チームについて、このイベントを通してより多くの人に知ってほしいと思います。
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