化学工業日報社は、「化学(科学)への興味喚起を通し、将来の化学産業を担う人材育成のきっかけづくりをする」をコンセプトに、PCだけでなくスマートフォンやタブレットでも気軽に読むことができるメディアに仕上げました。 (引用:PR TIMES7月16日)
難しいと思われがちな化学ですが、暮らしの中にあるものは実はみんな「化学」の力でできていて、とても不思議で楽しいものです。そんなめちゃくちゃ楽しく、そしてふしぎな化学の世界をおうちの中で体験できるものづくりを紹介するのが今回のニュースで取り上げる「うちラボ」です。科学をテーマにした教育サイトはたくさんありますが、このうちラボは化学に特化した教育サイトで、実験方法を紹介する「やってみよう!」、特集記事の「よんでみよう!」、化学切手同好会による化学に関連した切手紹介「切手で学ぼう!元素周期表」の3コンテンツで構成されていて、実験以外のコンテンツも充実しています。
やってみよう!では、現在のところ表面張力でマーブリング、クエン酸と重曹でしゅわしゅわドリンク、酸・アルカリの判定、牛乳プラスチック、ジェラート風スライム、安らぎの石けんキャンドルの6つの実験が紹介されています。家庭でできることをコンセプトにしており、一般的に入手できるもののみで原料が構成されていますが、典型的な実験にオリジナルな要素が加えられていて、家庭での実験にすでにトライした親子でも楽しめる内容になっています。
よんでみよう!には、国際化学オリンピックの紹介、プラスチックの問題、書籍「世界史は化学でできている」の紹介で現在は構成されています。プラスチックの問題では、北陸先端科学技術大学院大学の金子達雄教授が分かりやすく問題の現状と解決するための研究のアプローチ、私たちにできることを伝えています。また世界史は化学でできているの紹介では、著者である、元法政大学生命科学部環境応用化学科教授の左巻健男さんへのインタビュー記事が掲載されています。どちらも教科書よりも少しだけ問題提起の面が強い内容だと思いました。
[amazonjs asin=”B08R3DNMSF” locale=”JP” title=”絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている”]切手で学ぼう!元素周期表では、各国の切手に描かれた絵柄を集めて作られてた元素周期表と、それぞれの元素についての性質や応用を紹介をしています。切手は、化学切手同好会のメンバーが厳選しており、第二次世界大戦前のものから最新のものまでが選ばれています。トップバッターの水素で登場するのは燃料電池自動車であるToyota MIRAIが描かれた切手で、2015年にキルギスで発行されたもののようですが、なぜキルギスの切手にこの日本製の燃料電池自動車が描かれているのかが個人的には気になります。このように本ページでは元素と切手の絵柄の関係が分かりやすく解説されているので、その絵柄で切手が製作された理由を調べてみると面白いかもしれません。
このサイトを運営しているのは、化学工業日報社で化学工業日報という化学の専門紙を発行しています。業界唯一、土日祝日以外毎日発行しており化学工業をコアに企業動向、研究開発、環境問題など幅広い内容の記事を掲載しているようです。
うちラボは、昨年まではフリーペーパーとして都営地下鉄線の駅で提供しており、今年はそれをWebサイト化したようです。60ほどの企業がこのうちラボに協力していて、関東化学、第一工業製薬、ナガセケムテックス、日本化薬、AGC、東亞合成では、自社の子ども向けのサイトを紹介しています。
化学の実験を厳選している点と、実験だけでなくバラエティに富んだコンテンツを提供している点は、他のサイトにはない特徴でオリジナリティが高いページだと思いました。最近は、数多くの実験動画がYoutubeに投稿され、有名なYoutuberもとんでも実験を行って注目浴びたり、時には非難されています。動画を視聴するのも良いですが、自分で準備して手順を踏んでみてこその実験であり、手を動かして結果を得る楽しさを知ってもらいたいと思います。また、GoogleやAmazon、楽天、ソフトバンクといったテック企業が大きな注目を浴びていますが、ITの基盤で使用される半導体は化学品から製造されるものですし、人間が生活していくうえでは化学品が必要不可欠で、化学が縁の下の力持ちであることを化学切手が物語っています。これからもたくさんの人が化学に興味を持ち、化学的な面からプラスチックや脱炭素といった今直面している問題についても考えてほしいです。今回紹介したうちラボは、実験の教科書として有用であるだけでなく、いろいろなことを考えるきっかけとなるサイトだと思います。