株式会社マンダムは化粧品(医薬部外品を含む)の機能や使用感の向上を目指し、皮膚における感覚刺激に着目した研究を行っています。その一環として、快適な清涼感の実現に向けてさまざまな研究に取り組んでいます。今回、l-メンチルグリセリルエーテル(化粧品成分表示名 メントキシプロパンジオール)に不快刺激を抑制する効果と、清涼感が持続する性質があることを確認いたしました。この成果はコロナ禍の現状において、マスク着用生活の中で感じる不満の解消にお役立ちできる、快適な清涼感の提供に繋がると考えます。 (引用:マンダムプレスリリース5月28日)
株式会社マンダムは、ヤング男性向けコスメブランド「ギャツビー」より、暑い時期にマスクを着用する際にシュッと吹きかけるだけで、爽やかな香りと心地よいクール感を得られる「マスク爽快アロマミスト」を2021年5月31日(月)に新発売します。(引用:マンダムプレスリリース3月30日)
株式会社マンダムは、ニューノーマル時代の快適なウォーキングシーンに向けて「マンダム ウォークシップ マスク快適スプレー」を2021年4月26日(月)に新発売します。“ムレマスク”を“ひんやり快適マスク”にする新提案で、生活者の快適で、楽しいウォーキングシーンにお役立ちします。 (引用:マンダムプレスリリース3月4日)
日本では、依然としてマスクを着用する必要がある状況が続いており、今年の夏もマスクから解放されることはなさそうです。そんな中、化粧品メーカーのマンダムでは暑い日でも人が快適に過ごせるように、清涼感を実現するための研究を行っています。その中で、l-メンチルグリセリルエーテルに不快刺激を抑制する効果と、清涼感が持続する性質があることを確認し、このl-メンチルグリセリルエーテルが配合されたマスク向けスプレーの販売を開始しました。
そもそも、人間はなぜ気温が高いと不快に感じるかというと、皮膚の神経にはTRP チャネルと呼ばれる化学物質や温度を感知して電気信号に変換するセンサーがあり、それが刺激されることで、何かを感じることになります。TRPチャンネルには、種類があり人間の場合には27のチャンネルがあります。それぞれが活性化される条件は異なり、TRPV1は、熱刺激(暑さ)やカプサイシン(トウガラシに含まれる成分)によって活性化され、不快に感じることが分かっています。
一方でメントールは、TRPM8と呼ばれる別のチャンネルを活性化させる効果があり、これにより清涼感を感じていると考えられており、お菓子やボディケアの製品に多用されています。ただし多くの製剤に清涼成分としてだけでなく鎮痛を目的に用いられていますが、その鎮痛メカニズムについては明らかになっていませんでした。 そこでマンダムでは、TRPV1を活性化させる条件でメントールを作用されると、その度合いが大きく低下することを発見しメントールがTRPM8を活性化させて清涼感を出すだけでなく、TRPV1を抑制させて鎮痛させていることを実験的に証明しました。
ここからが、今回のプレスリリースの内容になりますが、メントールは、揮発しやすい成分であるため清涼感が持続しにくいという課題点があり、持続力のある清涼感の実現を目指して研究を進めていたそうです。結果、l-メントールと構造の近いl-メンチルグリセリルエーテルにはさらに高い TRPV1抑制効果があることを見出しました。
上記と同様の実験でメントールとの性能を比較すると、同じ濃度でよりTRPV1の活性度を下げる効果が確認されています。
また、皮膚浸透性試験においてl-メンチルグリセリルエーテルの方が多く、皮膚内に含まれていることが確認されています。
さらに、実際にマスク内に噴霧して着用した清涼感をチェックしてもl-メンチルグリセリルエーテルの方が30分後のスコアは高い結果となりました。目や肌刺激感の不快度においてもl-メンチルグリセリルエーテルの方が低いことも確認されています。
以上の結果においてl-メンチルグリセリルエーテルがメントールよりも高いパフォーマンスを持つことが確認されました、そこでマンダムとしてはこれを清涼感のキー成分として使用することで、不快刺激が少なく持続する清涼感を提供できると考えているそうです。またこの結果は2021年7月15日に開催される、第86回日本化粧品技術者会研究討論会で発表される予定です。
この研究結果に直接関連しているかどうかは不明ですが、マンダムでは、マスク向けスプレー、マスク爽快アロマミストとマンダム ウォークシップ マスク快適スプレーを発売しました。どちらの商品にもl-メンチルグリセリルエーテルに加えてメントールとシュウ酸メンチルエチルアミドもクーリング成分として加えられているようです。l-メンチルグリセリルエーテル以外にも2つの成分を使われている理由は公開されておりませんが、価格や上記以外のパフォーマンスの影響で3種類の成分を混合しているのかもしれません。
l-メンチルグリセリルエーテル自体はすでに広く使われている化合物ですが、実験的にメントールとのパフォーマンスの違いを示し、そして人の使用感においてもその差が表れたことに驚きを感じました。マスク向けスプレーに配合されているシュウ酸メンチルエチルアミドも似たような構造で、こちらもメントールよりも爽快感が続くようですので、TRPV1の抑制効果に違いがあるのか気になるところです。
マンダムでは、肌の老化や再生のメカニズムを科学的に解明することを進めていて、今年の3月には北里大学にスキンサイエンス共同研究講座(マンダム)を開設しました。具体的には、肌悩みに合わせた技術や有効成分を効率的にターゲット部位に届ける薬物送達技術、非侵襲肌評価技術の確立を目指すそうです。
もちろん、実際に使用した結果の比較が最も信頼されるべきデータですが、化粧品など人に使う化学品の場合、人によっていろいろな違いがあり、その感じ方も人それぞれで、すべての人が調査結果通りに感じるかはわかりません。そんな系において基礎的なデータ(この例で言えばTRPV1の活性度の比較実験)は、パフォーマンスの違いの裏付けになるため有用だと思います。もちろん、この例で言えば、長年の研究で評価方法が確立されていたからこそ違いを見ることができたわけであり、基礎的な現象を解明しておくことの重要性が分かる結果ではないでしょうか。産学連携がうまく機能して、それぞれが手を出しにくい分野・内容の研究が進み、お互いに実りあるオープンイノベーションが促進されることを期待します。
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