ユーグレナ社が製造したバイオディーゼル燃料が、日清オイリオの事業所である日清オイリオ横浜磯子事業場内に常駐している防災用消防車に導入されることをお知らせします。バイオ燃料が消防車に導入されるのは今回が初めてとなります。また、日清オイリオの同技術開発センター(中央研究所・ユーザーサポートセンター)で発生する使用済み食用油を回収し、バイオ燃料の原料に再利用していきます。同拠点で回収した使用済み食用油をバイオ燃料の原料とし、防災用消防車用燃料として使用する、循環型の取り組みを共同で実施します。(ユーグレナプレスリリース3月9日)
ユーグレナ社と米国のChevron Lummus Global、Applied Research Associatesは、ユーグレナ社のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントにおいてASTM D7566 Annex6規格に適合した、微細藻類ユーグレナ等由来のバイオジェット燃料が完成したことをお知らせいたします。バイオディーゼル燃料は昨年4月より先行して供給を開始しておりましたが、バイオジェット燃料に関しても供給開始の目途が立ったことから、年内のフライト実現に向けて、今後、航空運送事業者や航空局等との最終調整を進めていきます。(ユーグレナプレスリリース3月15日)
ユーグレナではミドリムシを使った石油由来の軽油を100%代替可能な次世代バイオディーゼル燃料の製造と商品化に取り組んでいます。昨年にはバイオディーゼル燃料が完成し、いすゞ自動車にて自動車に使用して問題ないことが確認され、いすゞの藤沢工場のシャトルバスにてこの燃料を使用することを紹介しました。その後、ユーグレナのバイオディーゼル燃料は、様々なところで採用が広がっています。
- 川崎鶴見臨港バスの鶴見駅~横浜市内を走る路線バス:バイオ燃料の原料の一部には、市内の小学生が回収する家庭から出た使用済み食用油を再利用
- マツダやファミリーマート、広島県、広島市が社用車や公用車:バイオ燃料の原料の一部には、広島市内のファミリーマート店舗から提供された使用済み食用油を再利用
- 日清オイリオの消防車:日清オイリオの同技術開発センターで発生する使用済み食用油を回収
- エアロジーラボのハイブリッドドローンを使った実証実験
一部は実証実験の段階ですが、バイオ燃料の品質が悪ければ高価なエンジンが壊れるリスクもあります。また、路線バスや消防車は故障すると重大な問題となります。そんな中、バイオ燃料と軽油の濃度はバラバラですが、特定のバスだけでなく、様々なディーゼル商用車、ディーゼル乗用車や船、ドローンまでも広くこの燃料が使われていることが燃料としての品質の高さを示していると思われます。どの事例も一部の路線や車両に限っているのは、価格や供給量の問題だと予想されます。そのため需要がより増えて供給能力が高まり、普及がさらに広がることを期待します。
世間では、電気自動車や燃料電池自動車が次世代のモビリティとして注目を集めていますが、充電スタンドや水素スタンドといったインフラの大きな転換が必要です。一方バイオ燃料は、自動車自体は大きく変わらず、液体燃料を使うことも変わりません。どちらがより環境に良いかは、それぞれの今後の技術開発によって変わりますが、自動車は長く使うものであり、車を買い替えなくても良い方法は、車の廃棄の影響を考えれば、環境のために必要なのではないかと思います。
続いてバイオジェット燃料のトピックに移りますが、ユーグレナでは、Chevron Lummus Global社とApplied Research Associates社が共同開発したBiofuels isoconversion (BIC)という技術で燃料の製造を行っています。化学的な反応としては、まずミドリムシから得られたワックスエステルや廃油を構成するトリアシルグリセロールは水熱分解によって脂肪酸(脂肪族アルコール)部位での環化と分解が促進されます。この反応がBICプロセスの肝であり、超臨界状態の水を使い2分という短時間で長鎖脂肪酸(脂肪族アルコール)原料を芳香族やシクロパラフィン/オレフィンを含む炭化水素類と中鎖/短鎖脂肪酸類の混合物に変換することができるそうです。次にこの粗生成物に水素を添加しオレフィンの還元と脱酸素させ、最後に精留プロセスによって沸点別に炭化水素を分離します。これによりバイオジェット燃料だけでなく上記で使われているバイオディーゼル燃料が製造されています。Applied Research Associates社は、高温水によるバイオ粗油の精製技術および特許を保有している一方、Chevron Lummus Global社は米国の大手石油会社であるシェブロン社と建設大手のCB&I社の合弁会社で、石油精製等に関する種々プロセス技術を保有しており、両者の強みを合わせることでバイオ燃料の製造プラントの普及を進めていると考えられます。
航空燃料は、規格で性状だけでなく製造方法まで厳密に決められていて、その規格で認証された燃料のみ航空機に使用することができます。バイオ燃料の製造プロセスは複数あり、ASTM D7566に認証されたプロセスがAnnexの1から7まで定められています。このBICプロセスは2020年1月にAnnex6としての認証され、そして今回この規格に適合したバイオジェット燃料をユーグレナのプラントで製造することに成功しました。今後は、年内のフライト実現に向けて、今後、航空運送事業者や航空局等との最終調整を進めていくそうです。
2019年にANAが排ガスを原料とするバイオ燃料を使用したことを紹介しましたが、ANAが使用したLanzaTech社のバイオ燃料はAnnex5に定められた製造方法を採用しています。Annex5も6も50%まで通常のジェット燃料に混ぜることが可能であり、航空機においてもバイオ燃料が広く普及する可能性があります。
ユーグレナのバイオ燃料製造方法では、石油精製のように様々な沸点の炭化水素が得られます。そのため、ディーゼル燃料とジェット燃料の両方の製品化が必要であり、両方の需要が増えて、製造能力が拡大することが期待されます。ただし、製造量を拡大するほど多くのミドリムシの培養も必要になってきますので、安価に効率よく微細藻類を培養することがより重要になってくると考えられます。少し前は、空き地に太陽光パネルを設置して発電することが流行りましたが、空き地でミドリムシの培養というスタイルが普及するかもしれません。