[スポンサーリンク]

ケムステニュース

積水化学と住友化学、サーキュラーエコノミーで協力。ゴミ原料にポリオレフィンを製造

[スポンサーリンク]

積水化学工業株式会社と住友化学株式会社は2月27日、ゴミを原料として樹脂材料の「ポリオレフィン」を製造する技術の社会実装に向けて協力関係を構築すると発表した。ゴミをまるごとエタノールに変換する生産技術の開発に成功した積水化学と、ポリオレフィンの製造に関する技術・ノウハウを有する住友化学が協力することで、ゴミをポリオレフィンにケミカルリサイクルするサーキュラーエコノミー(循環型経済)の取り組みを推進する。 (引用:HEDGE GUIDE 3月2日)

ゴミにはいろいろな物質が混じってい上、その物質の割合が変化するため効率よく変換することが難しいと言われていますが、積水化学では、家庭や企業から排出される廃棄物からエタノールを作り出す技術を開発してきました。2017年には、LanzaTech社と共同で微生物を使って高い純度のエタノールをパイロットプラントで合成することに成功しています。

LanzaTech社については以前のケムスケニュースで、製鉄所や製油所などの一酸化炭素が含まれる排ガスから微生物の発酵技術を使ってエタノールを製造する技術について紹介しました。微生物が一酸化炭素をエタノールにするという技術は共通のようですが、ガスの精製に積水化学の工夫があるようです。オリックス資源循環株式会社の寄居工場では、ガス化溶融炉という設備でゴミを処理しています。この処理方法では、ガスが大量に発生するため、そのガスを同じ工場内に設置されているエタノール生産パイロットプラントに送ることでエタノールを生産しています。燃焼によって発生したガスにはエタノール生産に使われる一酸化炭素と水素以外にも微生物の活動を弱める400種類の化合物が含まれていて、積水化学ではそれらを除去する技術を開発しました。また、ガスの供給がなくなると微生物が死滅するため、微生物を仮死状態にする管理技術も確立したそうです。現在全国の焼却設備の10%がこのガス化溶融炉であるため、この既存の設備に付随させることでエタノールを生産できるようになるようです。

ガス溶融炉におけるごみ処理(出典:国立環境研究所

一方住友化学では、バイオエタノールからエチレンを合成し、それを使ってポリエチレンやポリプロピレンなどを製造する技術開発を行います。エチレンは、ナフサに水蒸気を高温で反応させて合成されますが、エタノールからの合成する場合には、酸触媒を使って脱水反応で合成されます。プラントスケールの合成では不均一触媒を使って合成されると予想されます。その場合には、バイオエタノールに含まれる不純物による触媒の被毒を最小限にすることが一つの克服すべき課題かもしれません。

企業が関わる共同研究の場合、大学と企業の場合や、大学を中心としていくつかの企業が関わる場合、材料メーカーと最終製品製造メーカーの場合が多く、積水化学と住友化学という大手の化学企業同士が協力関係を築くことは珍しいと思いますが、2016年にそれぞれのフィルム製造会社を統合して住化積水フィルム株式会社を設立したため、元々協力関係はあったのかもしれません。

住処積水フィルムが製造する農業向けフィルム(出典:日本農業システム

ゴミからエタノールを製造することに関して、ごみ由来のすべての炭素が一酸化炭素に変換されるはずがなく、ガス化によって多くが二酸化炭素となり大気中に放出されると予想されます。そのため、エタノールの収率を上げる技術が次のステップとして必要になるのではないかと思います。バイオエタノールからポリオレフィンを製造する研究について、バイオエタノールの純度が保証されていれば、技術的な課題はないと感じるかもしれませんが、最適な反応条件を設定することが一つの課題だと思います。製造スケールでの化学品を製造する場合、原料の品質が不純物を含めて常に一定であることが安定な製造のためには重要です。しかしながら、バイオエタノールには特有の微量が含まれているかつ品質が燃焼するゴミによって変化する可能性があるため、バイオエタノール向けのエチレン合成プロセスを研究する必要があると思います。さらにこの場合は、プラスチックが最終製品となるわけであり、バイオエタノールから作った最終製品が石油由来の原料と同等の品質を持たなくてはいけません。製造コストも石油からの製造と比べて高すぎないことがビジネス上必要です。このようにいくつかの課題が考えられ、今後の両社の技術開発に期待します。

日本の場合、プラスチックなどのごみは焼却処分が多く、そこで発生した熱を使って温水プールを作っているぐらいしかエネルギーが活用されていません。本技術を使えばプラスチックゴミからプラスチックを作り出すことができるわけであり、不便を伴うほどのプラスチック不使用の動きに歯止めがかかるのではないかと思います。

関連書籍

[amazonjs asin=”4846104125″ locale=”JP” title=”検証・ガス化溶融炉―ダイオキシン対策の切札か”] [amazonjs asin=”4781314473″ locale=”JP” title=”リサイクルバイオテクノロジーの最前線《普及版》 (バイオテクノロジーシリーズ)”]

関連リンク

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 東芝:新型リチウムイオン電池を開発 60倍の速さで充電
  2. 関大グループ、カプロラクタムの新製法開発
  3. エーザイ、抗てんかん剤「イノベロン」、ドイツなどで発売を開始
  4. イグノーベル賞2022が発表:化学賞は無かったけどユニークな研究…
  5. 米ファイザーの第2・四半期は特別利益で純利益が増加、売上高は+1…
  6. 第一製薬、仏サノフィに脳梗塞予防薬の営業権を返還
  7. トヨタ、世界初「省ネオジム耐熱磁石」開発
  8. 製薬各社の被災状況

注目情報

ピックアップ記事

  1. ポンコツ博士の海外奮闘録⑫ 〜博士,今と昔を考える〜
  2. 低投資で効率的な英語学習~有用な教材は身近にある!
  3. π拡張ジベンゾ[a,f]ペンタレン類の合成と物性
  4. 温和な室温条件で高反応性活性種・オルトキノジメタンを生成
  5. 【書籍】文系でも3時間でわかる 超有機化学入門: 研究者120年の熱狂
  6. 膨潤が引き起こす架橋高分子のメカノクロミズム
  7. Nsアミン誘導体
  8. 布施 新一郎 Shinichiro Fuse
  9. カクテルにインスパイアされた男性向け避妊法が開発される
  10. MI-6 / エスマット共催ウェビナー:デジタルで製造業の生産性を劇的改善する方法

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー