株式会社パテント・リザルトは、独自に分類した「化学」業界の企業を対象に、各社が保有する特許資産を質と量の両面から総合評価した「化学業界 特許資産規模ランキング」を発表した。 (引用:ニコニコニュース10月30日)
株式会社パテント・リザルトでは、企業が保有する特許に対して注目度に基づく「パテントスコア」を算出し、それに特許失効までの残存期間を掛け合わせ、企業ごとに特許の総合得点を集計しています。パテントスコアは、出願後の経過情報に含まれる出願人による権利化への意欲や、特許庁審査官による審査結果、競合他社によるけん制行為を数値化したもので、出願人、審査官、競合他社の3者が、個々の特許にどれくらい注目しているかを客観的に評価することができるものです。
2018年4月1日から2019年3月末までの1年間に登録された特許を集計した結果、下記のようになり、トップ3は富士フイルム、三菱ケミカル、住友化学となりました。富士フイルムは特許件数も資産規模も2位の三菱ケミカルを大きく引き離しています。4位のDICは、特許件数で比較するとトップ10の中では最も少ないものの資産規模は高く、注目度の高い特許を多く保有していることが言えます。
各社どのような分野の特許が注目されているかをみると、1位の富士フイルムは、デジタルカメラのレンズや医療分野で使われる放射線撮影装置に関する技術で注目度が高く、化学以外の分野での出願で注目度が高いようです。
8K画質に必要な光学レンズの開発
2位の三菱ケミカルは感光性樹脂組成物や着色樹脂組成物で注目度が高いようです。感光性樹脂組成物はフォトレジストで使われる材料で、半導体製造における重要な材料です。一方の着色樹脂組成物は、ディスプレイのカラーフィルタに使われる材料で三菱ケミカルとしては、電子材料の分野で研究成果がでていると考えられます。3位の住友化学は、耐熱性や耐薬品性に優れている芳香族ポリスルホンの製造と有機EL素子用の発光素子に関する特許で注目度が高いようです。芳香族ポリスルホンは機能性プラスチックに使われる材料です。有機EL素子用の発光素子とはその名の通り有機ELディスプレイに使われる材料です。
三菱ケミカルのカラーフィルタACRYPETの紹介
4位のDICは光学異方体を備えた液晶表示素子や光インプリント用硬化性組成物に関する特許で注目度が高いようです。光インプリント用硬化性組成物は、次世代リソグラフィ技術に使われる材料であり、半導体製造の未来を見据えた特許だといえそうです。5位の積水化学工業は有機EL表示素子用封止剤や外用薬や化粧品等の分野で用いられるコアシェル構造体が注目度が高い特許のようです。コアシェル構造体は、アカデミックで金属内包などを目的によく研究されていますが、積水化学工業では、応用を見据えた特許出願を行ったと考えられます。
NIMSによるナノインプラント技術の紹介
株式会社パテント・リザルトでは、トップ10以下だけでなくトップ100のランキングや個別特許の評価データを販売しています。もちろん公開された特許はデータベースで誰でも確認することができますが、競合他社の情報を1からまとめ上げるのは、大変な労力が必要です。特にパテントスコアに使っている経過情報は細かく、その特許の審査において何が起きたのかを把握することは大変根気のいる作業になります。そのためこのような分析された情報は、他社の研究開発の動向や、自社の商品を売り込む潜在的な顧客の調査に使えるのではないかと思います。アカデミックサイドとしても自分の開発しているテクノロジーを売り込み、共同研究先を探すためにも有用だと考えられます。
企業では、自社の技術を守るために、新たな発見があった場合にはすぐに特許化することが常識となりつつあり、それに関連して新商品を発売する際に行う、他社の特許に抵触していないか調べる作業も膨大になっています。一方で特許の検索に特化したサービスも進化を続けていて、AIを活用した新しい機能も開発され始めています。技術者としては、特許はただ読むだけでなくツールを駆使して制するものになりつつあるようです。
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