[スポンサーリンク]

ケムステニュース

自動車のスリ傷を高熱で自己修復する塗料

[スポンサーリンク]

ライプニッツマテリアル研究所では、「Nanomere」と呼ばれる高熱を与えることでスリ傷を自己修復する塗料の研究を行っていて、ハノーバーメッセ、国際産業技術見本市にてデモが行われました。   (引用:3月27日GIZMODO)

ライプニッツマテリアル研究所(INM: Leibniz Institute for New Materials)は、ライプニッツ団体に属する研究機関で、ドイツのザールブリュッケンを拠点にマテリアルサイエンスの研究を行っています。INMでは、マテリアルサイエンスのうち、ナノコンポジット、光学材料、バイオマテリアルに特化して研究を行っており、今回取り上げるNanomereは、ナノコンポジットの研究テーマの一つです。

Nanomereには、ポリマーを糸として、シクロデキストリンが数珠上につながったポリロタキサンによって構成されていて、シクロデキストリンはストッパーの間を移動できるようになっています。このポリロタキサンを表面にコーティングすると、表面が傷ついても、シクロデキストリンが自由に移動できるため、加熱することで分子が再配列され、傷を覆うことができるようです。

メカニズム(引用:Handout self healing coating

実際に、このポリロタキサンを合成し、塗布したミニカーをブラシや鍵で傷つけると、加熱直後から傷が見えにくくなり、最終的には見えなくなるのがわかります。

研究チームでは、この物質に無機ナノ粒子やヘテロポリシロキサンを加えることで機械的耐久性と、天候への耐久性を向上させ、修復時間も短くすることに成功しました。現在は、スケールアップの検討を行っていて企業との共同開発も募集しているそうです。またこの研究には、110万ユーロの研究資金をドイツ連邦教育・研究省から獲得しており、注目度が高い研究だと言えます。特許もポリロタキサンの製造方法で出願済みであり、ある条件で製造されたポリロタキサンが傷を修復できることを示しています。

車の外装をはじめとする塗装面への浅い傷は、研磨剤を使うことで目立たなくすることは一般的に行われています。また、日産自動車が東京大学と共同で開発したスクラッチ・シールド塗装では、細かい傷を目立たなくすることができるようです。このような既存の技術と比較してこの熱で自動的に修復する技術は、より簡便ではっきりと傷を修復できる新しい技術だと思います。このような超分子の研究は、日本を含めて世界中で盛んに行われていて、様々な応用が検討されています。そのためこの例のような身の回りの日常に最新の化学の技術が使われることに大きな期待を寄せています。

関連書籍

[amazonjs asin=”4863548141″ locale=”JP” title=”目にやさしい大活字 SUPERサイエンス 分子マシン驚異の世界(エクセレントブックス版)”] [amazonjs asin=”4781307256″ locale=”JP” title=”シクロデキストリンの応用技術 (新材料・新素材シリーズ)”]

関連リンク

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 肺がん治療薬イレッサ「使用制限の必要なし」 厚労省検討会
  2. 製薬大手のロシュ、「タミフル」効果で05年売上高20%増
  3. 代表的有機半導体の単結晶化に成功 東北大グループ
  4. 2021年化学企業トップの年頭所感を読み解く
  5. 第六回サイエンス・インカレの募集要項が発表
  6. 風力で作る燃料電池
  7. 分子の動きを電子顕微鏡で観察
  8. 世界初の「窒化タンタル光触媒」、可視光で水分解

注目情報

ピックアップ記事

  1. 超原子結晶!TCNE!インターカレーション!!!
  2. 繊維強化プラスチックの耐衝撃性を凌ぐゴム材料を開発
  3. オンライン授業を受ける/するってどんな感じ? 【アメリカで Ph. D. を取る: コロナ対応の巻】
  4. 中国へ行ってきました 西安・上海・北京編③
  5. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」⑦
  6. 第18回次世代を担う有機化学シンポジウム
  7. 歯車クラッチを光と熱で制御する分子マシン
  8. 化学研究ライフハック:Twitter活用のためのテクニック
  9. アンドリュー・ハミルトン Andrew D. Hamilton
  10. (S,S)-(-)-2,2′-イソプロピリデンビス(4-tert-ブチル-2-オキサゾリン):(S,S)-(-)-2,2′-Isopropylidenebis(4-tert-butyl-2-oxazoline)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー