スマートフォンや電気自動車の普及によって、エネルギー密度が高く充電効率も良いリチウムイオンバッテリーの需要は年々増加しています。しかし、リチウムイオンバッテリーの安全性や充電容量はまだ改良の余地があるといわれ、多くの研究者が研究・開発を続けています。そんな中、電極の材料を工夫することで従来のリチウムイオンバッテリーの性能を大きく向上させる技術を民間企業が開発し、2019年の商業化を目指しています。 (引用:Gigazine1月8日)
バッテリーに関する研究開発は電気自動車やモバイル機器の性能改善に直結するため、非常に盛んに行われています。今回の記事では、そのリチウムイオン電池の性能を飛躍的に向上する技術を持ったアメリカのベンチャー企業2社について紹介されています。まずリチウムイオン電池の構造ですが、下の図のようにリチウム酸化物を正極、グラファイトを負極としリチウムイオンが正極と負極の間を移動することにより充電と放電が行われます。充電をする際には、リチウムイオンが負極に貯蔵されるため、より多くのリチウムイオンが負極に貯蔵された方が容量が大きい電池となります。
そこで、負極の材料を炭素からシリコンに変えるとリチウムイオンの貯蔵量が飛躍に向上する(グラファイト:LiC6の形で貯蔵/シリコン:Li15Si4の形で貯蔵)ことが知られていますが、シリコンは充放電のたびに体積が大きく膨らんだりしぼんだりするという欠点があり、2016年にテスラがシリコンを混ぜた電池を開発したもののシリコンの量は最小限となっているようです。
カリフォルニアのベンチャー企業、Sila Nanotechnologiesでは、独自のシリコン負極を開発していて、バッテリーの厚さを67%薄くしつつ容量を20%向上することに成功しました。詳細な負極の構造は明らかにされていませんが、構造そのものは現在のグラファイトに負極に似ていて、その細孔の奥にシリコンが含まれているためシリコンによる体積変化が起きにくいとそうです。
Silaの創業者であり、ジョージア工科大学Gleb Yushinの教授は、負極が薄くしたことにより過充電による短絡が起きにくくなったと主張しています。BMWをはじめとするいくつかの自動車会社がSilaに興味を持っているものの、Yushin教授は最初の商業化のターゲットは、バッテリーのコストが決めてにならないウェアラブルだとしています。
シリコン負極は別のカリフォルニアのベンチャー企業であるEnovixも開発を進めています。Enovixでは、多孔性のシリコン負極と半導体製造プロセスを使った新しいバッテリーの構造を開発し、2017年には太陽電池に使われるシリコンウェーハを使ってリチウムイオン電池を製造すると公言していました。しかしながら、ウェーハを使う難しさが判明し現在は、通常の金属ホイルを使用したプロセスを開発しているようです。それでも負極にシリコンを使うことに変更はなく30から70%の容量を向上できると創業者でありCTOのAshok Lahiri氏は主張しています。
この二つの会社の取り組みはリチウムイオン電池に関する研究で、これ以外に全固体電池などの新しい蓄電池の研究も盛んにおこなわれています。日常のすべてのモバイル機器に搭載されている電池ですが、今後の開発によっては毎日の充電という現代の日常の行為を大きく変えることになるかもしれません。