石油元売り2位の出光興産と4位の昭和シェル石油は10日、2019年4月に経営統合すると正式に発表した。出光の創業家側が反対していたが、新会社の取締役を指名できるなどの条件で統合を了承した。 (引用:7月10日朝日新聞)
昭和シェル石油はロイヤル・ダッチ・シェルグループと昭和石油を源流とする会社で、一方の出光興産は出光佐三氏が創業した会社であり、そのストーリーは映画・小説「海賊とよばれた男」で有名になりました。昭和シェルと出光興産は石油元売り最大手のJXに対抗するため、経営統合を2014年から検討していて、出光は昭和シェルの株式をロイヤル・ダッチ・シェルから購入し2016年には筆頭株主となっていました。しかしながら、経営統合に関して出光創業家が反対しており膠着状態が続いていました。その理由は、出光興産は長年非上場で日本的経営を行っていて、2006年に株式を上場したものの依然として出光創業家が筆頭株主であり、合併による創業理念の喪失を危惧していたからです。このような状況のため、昭和シェルが出光の子会社となる妥協案が提案され、これに創業家が同意したようです。昭和シェルが出光の子会社になっても、出光の取締役会には昭和シェル側が指名したメンバーが同数入り経営陣は対等ととなるため、昭和シェル側も受け入れたようです。
社名は「出光昭和シェル」となる予定ですが、ガソリンスタンドのブランドはJXTG同様に一定期間併用します。会社が統合すると製品生産体制の合理化が行われるため、製油所の閉鎖が考えられますが、「出光が3つ、昭和シェルがグループで4つ有する製油所は、どれも競争力のある製油所であるほか、アジア全体での競争を展望すれば閉鎖する必要はない」と出光・昭和シェルの両社長が発言しており、製品の輸出を積極的に拡大する方法で事業所を維持していくようです。先のJXと東燃ゼネラルの統合により、日本の大手石油元売りは、JXTG、出光昭和シェル、コスモ石油と三社に絞られることになります。
業界再編からくみ取れるように日本における石油の需要は減少していて、各社生き残りをかけて他の分野でのビジネスを開拓しています。今回統合した二社も太陽光パネル(昭和シェル:ソーラーフロンティア社)や有機EL材料(出光)に進出し成長事業となっていますが、規模は主力の石油製品と比べて非常に少ないのが現状です。そのため今後は、既存の石油関連事業で収益を確保しつつ新たなビジネスの探索を他の会社以上に注力することになると思います。個人的には、石油化学での経験と知識を活かして次世代の新エネルギーに関連したビジネスを展開してほしいと思います。
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