ガソリン車の排ガス触媒に使う貴金属、パラジウムの国際価格が一段と上昇した。指標となるニューヨーク市場の先物価格は日本時間29日夕、1トロイオンス1020ドル前後で推移。この1カ月で3%上昇した。主産地からの供給不足が解消されず、投機筋の買いが膨らんだ。 (引用:日本経済新聞12月1日)
プラチナより高価になったパラジウム
パラジウムとプラチナの市場価格の変化を載せましたが、パラジウムは近年価格が上昇しているのに対してプラチナは下降していて価格の逆転が起きました。これらの価格の変化には自動車産業との関連があるようです。パラジウムは、ガソリン車の排ガス浄化装置に利用されていて、三元触媒における主成分として窒素酸化物や一酸化炭素、炭化水素を窒素や水、二酸化炭素に変換しています。一方、プラチナは、ディーゼル車の排ガス装置に使われています。パラジウムの全生産量の60%が、プラチナ42%が、自動車向けに使われているため自動車の動向で価格が変動する先物になるようです。そのため、近年のこの傾向は、
- 欧州でディーゼル車の排ガス不正疑惑により人気の低下:プラチナ需要減少
- ガソリン価格の安定によりアメリカでのガソリン車の販売好調:パラジウム需要増加
によるものが一つの原因だと感がられています。
将来の先行き
パラジウムはロシアから40%。南アフリカから35%産出されていて、ここ数十年は、安定して算出されています。一方のプラチナは、南アフリカから70%、ロシアから13%産出されています。こちらの年推移は、ロシアが減少している代わりにジンバブエの産出量が上昇しているようです(2016年には8%)。これらの現状により、政治的な原因以外では生産量が大きく将来大きく変わることはなさそうです。
一方の消費に関してですが、未来の自動車によって価格の変動が起きると考えられます。EVとFCVが次世代自動車の候補ですが、まずEVの場合はプラチナもパラジウムも使われていません。一方でモーターの材料としてジスプロシウムやネオジウムといった異なる貴金属の需要が増加すると考えられます。FCVの場合には、燃料電池にプラチナが使われているため、需要が盛り返す可能性があります。また、FCVでもモーターを使用するためジスプロシウムやネオジウムが必要となります。どちらに関しても貴金属使用を低減したり使わない技術の開発が盛んにおこなわれているため予測することは難しいですが、自動車の将来によって、貴金属の将来も変わる可能性があります。
現状の高値に話題を戻しますが、試薬の価格は市場のように細かく変動することはありませんが、パラジウムを使う研究者の皆様は、価格の改定に注視したほう良いかと思います。
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- パラジウム高騰:石福金属によるパラジウム高騰の解説
- 元にもどるのか!?金とプラチナの価格のねじれ:プラチナと金との価格についての解説。パラジウム同様、プラチナは金よりも高かったが、2014年から金のほうが高くなっている。