2017年8月14日、米国化学会(ACS)は、化学分野のプレプリントサーバー“ChemRxiv”のベータ版を公開したことを発表しました。
構築には英国王立化学協会(Royal Society of Chemistry:RSC)やドイツ化学会(Gesellschaft Deutscher Chemiker:GDCh)などが戦略的な助言を行っており、またfigshareの新しいプレプリントサービスを利用しています。管理・運営はACSが行ない、2018年まで継続的にアップデートが行なわれる予定です。(引用:カレントアウェアネス・ポータル)
いよいよ化学系プレプリントサーバーChemRxiv(ケムアーカイブ)が投稿を受け付け始めました。まだβ版ということですが、アップデートを重ねて研究者コミュニティに定着すれば、化学系論文の投稿・出版プロセスが大きく様変わりを見せるかも知れません。
(※プレプリントサーバについては以前のケムステニュースで解説していますので、詳しくは当該もしくは関連記事を参照いただければと思います。)
プレプリント投稿は全てオープンアクセスなので、誰でも無料で読むことが出来ます。
筆者の専門である有機合成分野でも、トップラボであるRyan Shenvi研からの成果が本日プレプリント投稿されていました。フォーマットの体裁から、Nature系列誌に投稿しているものと推測されます。(2017/12/14追記:最終的にはACS Cent. Sci.にアクセプトされ、公開されていました。DOI: 10.1021/acscentsci.7b00488)
こんな感じでEmbed機能もついてます
Nature系列誌では往々にして複数回のリバイズに迫られたり、リジェクトの結果として姉妹誌にたらい回され複数回の査読を経たりします。結果として公開されるまでに年単位の時間が平気でかかります(一方のEditor Rejectはやたらジャッジが早いですが・・・)。ですので、こういった雑誌に出すケースでは、先取権の明示という観点からも、プレプリント投稿の重要度が高まりうるのでしょう。
プレプリントはその本質として未完成品です。編集部や査読者からのコメントを受けて、何度か改訂される可能性があります。これが概ね公開されるのであれば、査読側がしがちな非現実的なリバイズ・ごり押しの参考文献追加なんかも、追跡で分かるようになるかもしれません。妙な査読の抑止力として機能する可能性もありそうです。さらに見方を変えれば、超一流ラボの投稿・リバイズ過程を勉強できる素材として活用可能かも?と個人的には少し期待しています。
プレプリント投稿とジャーナル本投稿、それぞれの特性と関係性を理解した上で、活用すべきかどうか?研究者側にも戦略的判断が必要とされるでしょう。実は使用注意な局面もあるようなので、その辺については後ほど別記事でまとめてみたいと思います。