[スポンサーリンク]

ケムステニュース

モザイクワクチン HIVから人類を守る救世主となるか

[スポンサーリンク]

ジョンソン・アンド・ジョンソンは、HIV及びエイズに関する会議 “IAS2007” にて、最新のHIVワクチンである Ad26 mosaic vaccine の、人体臨床実験の結果を報告しました。その結果、393人の健康な被験者の体内において、抗体反応が100%生じたとのことです。

Paris, France, 24 July 2017 – Johnson & Johnson today announced encouraging first-in-human clinical data for an investigational HIV-1 vaccine regimen in development at its Janssen Pharmaceutical Companies. In an oral presentation of the early stage Phase 1/2a APPROACH study at the 9th IAS Conference on HIV Science (IAS 2017), the “mosaic”-based vaccine regimen from Janssen Vaccines & Prevention B.V. (Janssen) appeared to be well-tolerated and elicited HIV-1 antibody responses in 100% of healthy volunteers (n=393). (引用: Johnson & Johnson Services, Inc., 2017年7月25日)

これまでのHIVワクチンで、人体臨床実験まで行われたものはモザイクワクチンも含めて計5種であり、もう1つ、HVTN 702 というものも現在実験が行われています。今回報告された結果は、このモザイクワクチンを用いた APPROACH Study という試験によるものです。APPROACH Study はアメリカ、ルワンダ、ウガンダ、南アフリカの計393人の健常者を対象とし、無作為抽出やプラセボ対照などを考慮した上で、数回に分けたワクチンの投与を行うものでした。その結果、被験者全ての体内において、抗体反応が確認されたとのことです。

ただここで勘違いしてはいけないのは、抗体反応率は決して感染予防率にそのまま結びつくわけではないということです。飽くまで、安全性や免疫反応のみを検討したものであるため、実際にヒトの体内において感染を阻止するかどうかは未だ不明です。

HIVウイルスは突然変異をする確率が非常に高く、そのためにワクチンを作ることは長年困難とされてきました。アカゲザルなどを用いた今までの臨床実験において、その高い感染予防率が報告されているモザイクワクチン。人類はHIVとの戦いに終止符を打つことが出来るのでしょうか。

関連リンク

Avatar photo

Eine

投稿者の記事一覧

音楽ゲームが好き。ナノメートルの世界で分子や電子の気持ちを考える日々

関連記事

  1. 年収で内定受諾を決定する際のポイントとは
  2. 化学・バイオつくば財団賞:2研究が受賞 /茨城
  3. 第6回HOPEミーティングに参加してきました:ノーベル賞受賞者と…
  4. 化学系学生のための企業合同説明会
  5. 学術オンラインコンテンツ紹介(Sigma-Aldrichバージョ…
  6. <アスクル>無許可で危険物保管 消防法で義務づけ
  7. 洗浄ブラシを30種類試してみた
  8. 科学を伝える-サイエンスコミュニケーターのお仕事-梅村綾子さん

注目情報

ピックアップ記事

  1. この窒素、まるでホウ素~ルイス酸性窒素化合物~
  2. 東海カーボンと三菱化学、カーボンブラックの共同会社を断念
  3. 累計100記事書きました
  4. ポンコツ博士の海外奮闘録① 〜博士,米国に上陸す〜
  5. ディーン・タンティロ Dean J. Tantillo
  6. 2007年度ノーベル化学賞を予想!(5)
  7. ガボール・ソモライ Gabor A. Somorjai
  8. AIを搭載した化学物質毒性評価サービス「Chemical Analyzer」の販売を開始
  9. 国際化学オリンピックのお手伝いをしよう!
  10. 点群の帰属 100 本ノック!!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年7月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー