海洋研究開発機構(JAMSTEC)などは5日、レアメタル(希少金属)を多く含む海底岩石「コバルトリッチクラスト」が広範囲に分布しているのを、房総半島から約350キロの日本の排他的経済水域(EEZ)で発見したと発表した。「コバルトリッチクラスト」は、本州から約1800キロ離れた南鳥島沖のEEZでも見つかっている。 (引用:毎日新聞6月5日)
コバルトリッチクラストとは、コバルト、ニッケル、テルル、白金等のレアメタルを含む海底金属のことで、海山で海水中の金属を吸着しながら数千万年かけて成長するとされています。陸地に近いところでは、河川からの砂などの流入物が吸着の邪魔をすることから存在しないと考えられてきましたが、今回の発見により今回の調査で陸地の近くでも存在することがわかりました。
これまでコバルトリッチクラストの科学的調査に関しては、主に日本列島から遠く離れた(南東約1800km)海底において、JAMSTECの船舶・無人探査機を用いて行われてきましたが、これまでの調査では、海山本体の形成過程の研究が目的であったため、コバルトリッチクラストの系統的な観察、調査は行われませんでした。今回、無人探査機「かいこうMk-IV」を用いて、本州近海の排他的経済水域(銚子から約350km)の地点において、合計5回の調査潜航を水深1400-1700m、2500-2700m、3200m、4300m、5500mの地点で行いました。
調査の結果、潜航点すべてにおいてコバルトリッチクラストの厚さは5cmを超える比較的厚いものであり、3200mの水深では13cmに達するコバルトリッチクラストが採取されました。今後は、コバルトリッチクラストの産状や成因解明のために有用なフィールドとなるだけではなく、将来コバルトリッチクラストの調査・開発技術の実験海域としての利用も期待できます。
海洋研究開発機構(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology:JAMSTEC)は、海洋に関する基盤的研究開発、海洋に関する学術研究に関する協力等の業務を総合的に行うことにより海洋科学技術の水準の向上を図るとともに、学術研究の発展に資することを目的とした組織で、研究船と海中探査機を多数保有しています。今回使用したかいこうは、過去に深海に生息するカイコウオオソコエビの調査にも使用されました。このプロジェクトは、戦略的イノベーション創造プログラムの課題「次世代海洋資源調査技術(海のジパング計画)」の一環として行われたもので、将来、日本の海底資源を活用することを目的にしています。
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- 本州近海に位置する拓洋第3海山の水深1500m~5500mの斜面に厚いコバルトリッチクラストの広がりを確認: JAMSTECプレスリリース
- コバルト・リッチ・クラスト:Wikipedia