理化学研究所は、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)に含まれる長寿命の放射性物質を、生活に役立つ貴金属に変える実証実験に2018年度から着手する。理論上は可能とされるがこれまで実用化には至らず、「現代の錬金術」とも言われるが、実現できれば、処分に困る「核のごみ」の減量や有効活用にもつながるという。 (引用:毎日新聞2月11日)
核のゴミには、半減期が650万年と非常に長い放射性物質であるパラジウム107が含まれています。これに加速器によって加速した「重陽子」を照射して安定同位体であるパラジウム106に変換するという計画の実験です。パラジウムは貴金属として有名で、アクセサリーから自動車の触媒など様々な用途があり、とても厄介な核のゴミから有益な材料を得られるというプロジェクトで、内閣府が主導する革新的研究開発推進プログラム「ImPACT(インパクト)」の一つとなっています。加速器は、ニホニウムを合成した理研仁科加速器研究センターで行われる予定です。
貴金属へのリサイクルという観点ではとても素晴らしいプロジェクトですが、核のゴミの減量という観点では、さほどインパクトはないと考えています。なぜなら、核のゴミの核のゴミの97パーセントはウラン238でパラジウム107は0.03パーセントしか含まれていないからです。
ではウラン238をどうにかしようとしている計画が、核燃料再処理工場でのMOX燃料製造と高速増殖炉もんじゅやプルサーマル計画によって燃料にして発電に生かすという計画です。しかし、もんじゅは不発に終わり、昨今の原発への批判によりプルサーマル計画はあまり進んでいません。
日本原子力研究開発機構では、この使用済み燃料について研究を行っていて、ネプツニウムやアメリシウム、キュリウムなどの放射性同位体をパラジウムと同様に加速器により異なる元素に変換し半減期を下げることを計画しています。現在の使用済み核燃料は、天然のウランと同レベルの放射性危険性に下がるまでに10万年かかりますが、高レベル廃棄物に抽出すると数千年になり変換技術が使われると数百年にまでに短くなります。
昨今の原発問題により、原発を増やすことはかなり難しくなっています。しかし、すでに日本は17,000トンの使用済み核燃料を所有しておいて処理問題は避けて通れません。当然のことながら化学反応では元素は変換できませんので、このような研究が活発に行われています。
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