日本初の新元素「ニホニウム」(原子番号113番)を発見した理化学研究所のチームが、次の新元素に挑む実験を近く開始する。狙うのは未知の119番と120番。ロシア側との国際競争に再び勝利できるか注目されそうだ。(産経新聞:1月29日)
昨年は、原子番号113番の元素がニホニウムと命名され大きな話題になりましたが、すでに理化学研究所のチームは次の新たな元素の合成に動き始めているようです。次のターゲットは、119番と120番です。ニホニウムは、加速器で加速した30Znを83Biに照射して113Nhを合成しましたが、119番では、23Vを96Cm(キュリウム)に照射、120番では、24Crを96Cmに照射して合成に挑戦するようです。ただし96Cmは、日本では入手できないため、ライバルである米オークリッジ国立研究所から共同研究の形で提供を受けるそうです。Cmは、原子炉で生成したものを分離するか加速器で合成して作られますが、アメリカでは、1 mgで18,000円程度の価格だそうです。 NISTでは、標準物質としてCm(NO3)3が売られていますがそちらも5 mlで約170万円します。
もちろん、ライバルのアメリカ、オークリッジ国立研究所とロシア、ドブナ合同原子核研究所も合成を狙っていて、119番では、22Tiを97Bk(バークリウム)に照射、120番では、23Vを97Bkに照射して合成に挑戦するようです。実験は、ロシアで行われ、材料は同じくアメリカが提供します。もしもどちらかが合成したら実験寄与が大きい日本かロシアが命名権を得ることになりそうですが、アメリカは、どちらかが勝っても貢献が認められるため、おいしい立場な気がします。
理研は、40億円かけて加速器の能力を向上させる計画があり、今年の夏から二年間かけて工事を行う予定です。ロシアも新しい装置を建設中であるため、実験に掛けられる時間は互角のようでデットヒートが予想されます。この手の研究になるとあの
2位じゃダメなんでしょうか?
を思い出しますが、これに限って言えば2位に命名権はもらえません。もちろん国の予算の使い方にはいろいろ議論があっていいと思いますが、げひ周期表にまた日本に由来する名前がついてほしいと思います。なお理研では新しい元素の発見だけでなく、新しい同位体元素の発見も行っており例えば、31F (19Fが安定同位体)や76Co (59Coが安定同位体 )などを発見してきました。
理論的には、172番まで重元素を作ることができるそうですが、実際にどこまで重い元素を作ることができるかはまだ謎が多いそうです。
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- 仁科加速器研究センター: 理研の加速器を使った研究を行っているセンター埼玉県和光市にある。